表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/119

94 深すぎる夢からの脱出

 冷静に考えろ。

 アーシアが生徒である俺を見捨てることなんてあるだろうか?


 答えはすぐに出た。

 そんなことは絶対にありえない。


 ならば、これは現実じゃない。やはり、俺たちは同じようなことを繰り返している。


 もし、ここが現実じゃないとして、ならば、どうやってそこが抜け出す?

 すでにイマージュたちにも違和感は説明している。だけど、違和感っていうのは個人の感覚によるものだ。俺がおかしいと思ったからといって、ほかのみんなが納得するかどうかはまったく別の問題だ。


 ほかの人間に頼ってもダメだとしたら、俺がまずはここから出ないといけない。

 出るっていうことは、いなくなるということだよな。

 たとえば俺がいない場所では、俺が夢を見ることも原理上、起こりえなくなる。


 答えは出た。ずいぶん、野蛮な方法だけれど、その分、効き目はあると思った。


 俺は剣を抜く。

 アーシアが俺のためにくれた、俺には立派すぎる剣だ。軍団長クラスが持つものとタクラジュは言っていた。

 これが夢としてアーシアが出てこない原理まではまだわからないが、この世界不自然であることだけは確実だ。


 その剣を俺は胸に思い切って――――突き刺す。


 恐怖心がないわけはない。

 けれど、そうしないと先に進めないのではないかと思った。


 これも一種の試練だろ。


 ちくっと最初の痛みが走った時には意識が飛んだ。



 目を開いた先に、驚愕の表情を浮かべた男がいた。


「なっ! もう、夢から覚めたというのか!」


 ああ、やっぱり夢だったんだな。

 それで答えが出た。俺は床に寝そべっていて、その横には姫様とイマージュ、タクラジュも倒れている。


「おかしい……。たしかに魔法は完全にかかったはず。そんなにすぐに起きられるなんてことが……」

「あんたの魔法は一つだけ、問題があった。この世界の住人でないものに影響を与えることができなかったんだよ」


 そんなことをしゃべっていた時には、イマージュが立ち上がって、その男を押さえ込んでいた。


 イマージュの動きはさすが姫の侍女だけあって、素早い。あっという間に床に男を倒す。


「集団で同じ幻覚を見せる魔法だな。おい、お前は何者だ!」

 首に手をかけられて、男はげほげほとむせていた。


「それと魔法もな。ずいぶん奇妙な魔法を使うようだが、とっとと種を教えろ!」

「は、話す! 別にこちらはそなたたちを殺すつもりまではない! 本当だ、信じてくれ!」


 すでに立ち上がっていた姫が「解放してあげてください。確かめないといけないことが多いので」と告げた。


「命拾いしたな。もし、次に奇妙な魔法をかけよううとしたら、その前に首をはねてやる」



 男はその場の全員に共通の夢を見せる魔法を使ったと話した。複数人を巻き込むことで、醒めづらい夢を作れるらしい。

 といっても、一度効いてしまえば、二週間ほど眠ったりもするらしいので、もはや夢というべきかも怪しい。目覚めなくする魔法というほうが正しい。


「複数人をまとめて同じ夢を見させることで、夢の中のリアリティは極めて、高くなる。お前たちの頭はそれが夢だと気づけなくなり、ずっとそこをさまようことになる」

 たしかに脱出に動いたのは、俺だけだった。それだってアーシアのことがなかったら気づけなかっただろう。


「むしろ、どうやって夢と認識できた? 外部からの干渉なしに起きることなど……」

 俺もその説明を聞いて、アーシアが出てこなかった理由を悟った。


「欠けているものがあって、絶対におかしいと思えたんだ。だから、夢の中で自殺してみた。俺が不在の夢は存在しないだろ」


 アーシアは精霊だ。だから、集団催眠のような状態の対象にできなかった。

 なので、夢の内部には登場しなかったらしい。


「無茶苦茶だ……。この魔法、デュアル・ワールドの中で自殺するということは、現実に自殺するぐらいの恐怖心があるはずなのに……」

「俺だって確信が持てないとできなかったさ。それより、お前は何者だ? 帝国の魔法使いか?」


 だとしたら、どのみち生かしておけないだろうが。もう一度同じ魔法をかけられて気づくかどうかわからないし。


「私は……隠者の森教会の者だ……」

 俺だけじゃなく、全員があっけにとられた声を出した。


「どうして、隠者の森教会の方がこのようなことを……?」

 姫も呆然としている。

 こっちはむしろ救援に向かおうとしていた側なんだから当たり前だ。


「隠者の森教会を抜けるには山道を越えていくことになる。そこで待ち構えていれば、帝国の魔法使いの一群をとどめることができる。だから、集落にこもって待ち受けていた」

「待ってください! わたくしたちは帝国の者ではありません!」


 姫が叫ぶ。そこで俺たちは大きな誤解に気づいた。

 隠者の森教会側からしたら、自分たちの拠点を目指してやってくる者は味方よりも先に敵に思えるんだ。


「では、あんたらは何者だ? 教会に所属する人間の顔はおおかた覚えている。ただの商人の娘とその護衛がやってくるとは思えん」


「わたくしたちは、帝国に敵対するハルマ王国の者です。隠者の森教会の現況を知るために、向かっていたところです。第一巫女が捕らわれて、概念魔法コンテイジョンを使わされそうになっているというのが本当であれば、看過できませんからね」


 今度は男があっけにとられた顔をする番だった。

 そして、その場に平伏した。


「ご無礼を働いてしまい、申し訳ない。そして、虫のいいお話ですが……第一巫女様をお助けくださいませ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ