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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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88 返り討ち

 俺はイマージュに小声で言った。

「師匠、剣士のほうは頼みました。俺は魔法使いをやります」


 それに対してイマージュは俺の胸をこんこんと二回叩いた。


 OKの合図だ。もう、イマージュとの関係も長いから、こういうサインで情報伝達ができる。


 すでにタクラジュは敵の剣士を突き殺していた。

 さらにタックルをかまして、倒れた敵の鎧の隙間に剣を入れて、刺す。


 タクラジュの剣は『翼モグラ』流だ。

 俺がイマージュから習った『雷の運び屋』流とは細かい戦い方がかなり違う。最初のうちは二人の表情がうり二つだから、区別ができなかったが、今だとその動きの差がよくわかる。


「足が隙だらけだぞ!」


 タクラジュが敵の足をとって、転倒させた。『翼モグラ』流は足下をとにかく狙う。もともと、敵がこの流派の人間を足を攻撃してくるモグラにたとえたのが名前の起こりらしい。剣技というよりは、敵を殺すこと自体を目的にした流派だ。


 たいして、『雷の運び屋』流はもうちょっとオーソドックスだ。ただし、一撃必殺を狙うことが多い。何度も剣を浴びせるのは、あまり美しいこととは考えない。


 一瞬の隙を突いたイマージュの一撃で敵の首が飛んだ。

 まさに流派の名前のとおり、雷。

 相手が死んだと気づかないうちに殺す。


 地上では双子が優勢だ。その間に俺は魔法使いに狙いを定める。


 上空の魔法使いたちは姫と魔法を打ち消し合っている。


 両者、ともにディスマジックが飛ぶ。

 魔法使い同士が対峙すると稀にこういうことがある、これはアーシアにも教えてもらったし、軍隊志願の魔法使いの授業でも最後のほうにやった。


 相手の魔法を妨害し続けて、状況が変転するのを止める。不確定の要素の多い時には、こういう守勢に入るのがベターだ。


 しかし、敵の魔法使いは見たところ、四人いる。とすれば、四人相手に姫一人が対応できているわけで、やはり姫の実力がかなりのものであることをはからずも証明していた。


「くそっ! 剣士たち、魔法使いの女を狙わないか! 何のためにそれだけ集まっているのだ!」


 特定の敵魔法使いだけがしゃべっているから、だいたいそいつが頭目だとわかる。ならば、一気に決めるか。


 俺はレヴィテーションを無詠唱で行う。

 あとは一気に真上に向かって上昇する。


「なっ!? あの女も魔法使いか!?」

 これ、俺が女だと認識してるな……。

 微妙な気分だけど、どうでもいいや。それも含めて、いくつもの事実誤認がお前らの敗因だ。


 敵のディスマジックがかけられる前に――頭目に斬りつける。


 これこそ、無詠唱の強みだ。相手が心構えを固める前に動ける。

 続けざまにもう一度、剣を放った。

 まともに斬られた男は地上に落下していった。最低でも意識を失って、自分に対するレヴィテーションの効果が途切れたわけだ。


 よし、まだ俺は浮かんだままだ。ほかの奴はディスマジックを唱えるのが間に合ってない。


 こうなれば、戦力を削れるだけ削る。

 詠唱を行おうとした奴から突っ込んで、剣を心臓に刺す。

 またそいつも悲鳴を上げながら、地上に落ちていった。


 魔法使いは接近戦に追い込まれたらおしまいなのだ。詠唱より先に殺される。

 だからこそ、こいつらは空中に浮かんだんだろうけど、こっちの戦力を見誤ったな。


「こやつ、、魔法剣士か!? となると、守護されていたあの女はそんな大物!?」

 今頃、気づいても遅いな。


 そう叫んでいた魔法使いは突然の炎で火だるまになった。


「わたくしも援護します!」

 姫がパイロキネシスを放っていた。炎を遠隔操作して発生させる魔法だ。敵を確実に排除する時に効果を発揮する。


 そいつにとどめの一撃を剣でお見舞いして、最後の一人も魔法を唱えられる前に斬った。

 そこに再び姫のパイロキネシス。敵の同じ魔法より、明らかに姫のほうが威力が大きい。


 空の敵を減らせば、あとはどうということはなかった。


「姫、フレイムで焼き払ってください!」

「わかりました!」


 魔法に耐性がない剣士は上級の魔法使いを前にすれば、まず勝ち目はない。姫の炎を受けてひるんだところを双子姉妹がきっちりと打ち漏らさずに数を減らしていく。


 地上のメインは双子に任せる。俺は上空から逃げようとする敵を見つけて、パイロキネシスを放つ。


「ひあっ! 熱い! 熱い! 体が燃え……」


 戦線離脱しようとした男が燃え尽きていった。

 俺たちのことを報告されると厄介だからな。


 結局、そう時間が経たないうちに最後の一人が姫に胸より下を凍り付けにされて、戦闘は終わった。


「問います。あなたたちはセルティア帝国の方ですか?」

 敵を討ち果たした後は情報収集にあたる。戦場の基本を姫は熟知している。


「は、はい……王国攪乱の部隊です……。なんでも話しますから命だけは……」

「ほかにこういった部隊はいるのですか?」

「おそらく、この土地にほかにもいくつか……。ただ、情報漏洩を防ぐために、部隊長以外は全体の情報を知らされていませ――」


 タクラジュが剣で兵士の首をはねていた。


「つまり、とっととキルアネに向かうべきにしくはないということですな、姫」

「ですね。今さら、引き返してもしょうがありませんし」


 死体の山の中でも姫は毅然としていた。


 四人だけだけど、なかなか強力なパーティーだなとあらためて思った。俺もゆっくりと地上に戻ってくる。


「我が弟子、いい判断だったぞ。あそこで、魔法使いを蹴散らしたのが大きかった」

 イマージュが褒めてくれた。


「師匠の教え方が上手かったんですよ」

 それにイマージュはすぐにこちらの作戦を理解して反応してくれたし。


「お前たち、静かにしろ」


 タクラジュが俺たちを制した。

 姫が死んでいった者たちのために鎮魂の言葉を紡いでいた。

 もし、平和な時代なら、こんな戦場に身を置かなくても済んだだろうに。人間は生きる時代を選ぶことはできないっていうのは本当だ。


「さて、すぐに旅を続けましょう」

 姫の言葉に一同はうなずいた。

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