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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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79 因縁の決着

 何か、何かできることはないか?


 これまで師匠から習ったのは剣技ばかりだ。格闘術は全然わからない。敵を殴る技もあるが、それは剣技からの展開で行うことだ。格闘術とは意味合いが異なる。


「ほら、うじうじしてねえで、決断しろよ! マジで刺すぞ!」

 ナイフが先生の胸元に押し当てられる。


 人質を取られた場合、そんなものの対処法までは学んでなかった。実戦への備えが足らなかったか。

 いや、人質を適切に救出する方法なんてものはないんだ。

 戦争での正しい解法はおそらく人質を見捨てること。人質をとられるごとに戦闘が止まるのでは勝てるわけがないからだ。


 これは戦争なのだから、先生を見捨てて、亀山を斬り殺しにいくべきなのだ。それなら人質を抱えている亀山に負けることは絶対にない。


 そんなことできるわけがないけど。

 

 師匠とアーシアに甘いと叱られるかな。


 俺は剣を捨て――――


「いてええええ!」


 亀山の絶叫が俺の行動をさえぎった。


 先生が、ナイフも恐れずにその亀山の腕に噛み付いていた。


「ふざけんなよ!、この馬鹿野郎!」


 亀山が噛まれた腕でナイフを刺そうとする。

 そのナイフを先生がつかんだ。


 血がすぐにあふれたけれど、先生はナイフを確かにつかんでいる。


「ごめんね、亀山君! でも、今の私はあなたに負けるわけにはいかないの! 私を守ってくれようとしてる島津君のためにも!」


 先生が叫ぶ。


「島津君! 戦って! 島津君ならやれるでしょ!」


 先生の言うとおりだ。

 剣を捨てなくてよかった。俺にはまだやれることがある。

 必ず先生を助け出す。



「亀山、勝負だ!」

 剣を持って、走り出す。


「ちっ! なんなんだよ!」

 亀山はナイフも先生も離すと、すぐに剣を二本抜いて俺と向き合った。

 やっぱり、二刀流か!


「亀山、お前をここで絶対ぶっ潰すからな!」

「はあっ? 剣だったら、俺もとことん練習してんだよ! そりゃ、血のにじむような努力だったぜ! じゃなきゃ、帝国だって俺のことを買わなかっただろうよ!」


 たしかに亀山の剣は荒っぽくはあるが、その分の力はあった。動きも悪くない。

 すぐに踏みこんで決着をつけられるような相手じゃない。剣士と言って何の問題もない動きだ。


「お前、こんなに剣が使えるなら、剣技を生徒のまま、極めてればよかったのに!」

 つくづく、しょうもない選択肢をとりやがって!

「いいや、復讐に生きようとしなけりゃ、俺は弱いままだったね! そこには覚悟ってものがねえからな!」

 二本の剣を振るう割には無駄がない。おかげで攻め入る隙が一本の剣の時より減る。


 こんなことなら、あの時、炎で焼き殺しておくべきだったかもしれないな。もう、後の祭りだ。とにかく、ここで亀山を倒す!

 どちらも積極的に打ち合うから、乾いた剣戟が途切れることなく響く。


「なんだよ! 島津、お前、剣までまともに使えるのかよ! 魔法がなきゃ、すぐにお前なんて斬り殺せると思ったのによ! ほんとにお前、ウゼえよ!」

「俺だって、お前とまた命懸けの戦いするなんて思ってない!」


 あまりよくないな。体の大きさなら、向こうのほうが上だ。力任せに戦えば、こちらがばてる。


 手を押さえて、うずくまっている先生が見える。手からは血が流れている。致命傷じゃないと信じたいけど、まずは俺が亀山を止めないと――


「島津君! 大丈夫だから! 絶対島津君が勝つから!」

 痛みに耐えて、先生は笑っていた。

「だって、こういうのは正義の味方が勝つって決まってるんだよ! 先生は教育者として、そういう結果を信じてるからね! だから、心配しなくていいからね!」


 ありがとう、上月先生。

 もしかしたら、俺はここで先生を助けるために、剣を習ったのかもしれないな。そんな運命まで信じたくなる。


 よく見極めろ。

 剣とペーパーテストは違うけど、共通点もある。

 必ず、正解への糸口がある。


 二本の剣を多くの剣士が使わない理由は何だ? すべての面で二本のほうが有利なら、誰だって二刀流になる。弱点は必ずある。


 剣が二本とも使える場所は守りも強い。正面からの攻撃には強い。一本がはずれても、もう片方で防ぐなんてことが可能だ。


 でも、それができない場所がある。

 側面。

 体の左右からの攻撃には両方の剣を使って、戦えない。


 糸口はあったな。

 左から、敵の右手のほうに回りこむ。


「させねえよ!」

 亀山も弱点はわかっているらしい。すぐに体を向き直って、正面で戦おうとする。


「魔法でも剣でもヘタレのお前なんかに負けてたまるかよ!」

「そんなことないよ!」


 また、先生の声。

「今の島津君、ものすごくかっこいい! だって、惚れちゃったんだもん! 女子は誰が見たって島津君を選ぶよ!」


 ああ、くそ……。彼女じゃない女子からの応援で、こんなに勇気づけられちゃっていいのかな。


 やる気が出た。

 踏み込んでやるよ。

 さんざんアーシアから走り込みやらされたからな。


 これは真剣勝負。だから、絶対の正解はない。

 最後は、勝ちを信じて一歩先に行くしかない。


 アーシアが俺にウソを教えることなんてないから。


 これまでよりも一歩先へ踏み抜く。


「なっ! こいつ、いつの間に――」

 お前が特訓したように俺も特訓したんだよ!


 俺の刺突が、亀山の腕をとらえた!

 肉をえぐった感触があった。


「ぐああああああああっ! いてえええ!」

 亀山が両方の剣を落として、のたうちまわる。


 勝負はあった。

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