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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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77 荷馬車襲撃

「もし、死んだら許さないからね……」


 やっと、許しが出た――と思ったら、サヨルに強引にくちびるを奪われた。

 おい、ここ、理奈もいるんだけど……。


「も、戻ってきたら……もっといいことしてあげるから……。だ、だから戻ってきなさい! わ、わかった……?」


 最後のほうはやっぱり恥ずかしいのか、消え入りそうな声になっていた。


「言ったこと、後悔するなよ」

 俺はサヨルと理奈に手を振ると、森の奥へと入っていった。


 移動中、アーシアが姿を現した。おそらく、他人には見えない仕様だろうけど。

「時介さん、男を見せましたね」

 でも、その顔は割と厳しい。

「ただ、ここまでの無茶はあまり感心しませんね。敵についてわからないことが多すぎます」


「先生、多分、神剣エクスカリバーを使ってた英雄も過去に何度か危機があったと思うんですよ」

「たしかに叙事詩にもそんな記述があったと思いますが、それが何か……?」


「英雄っていうのは危機をちゃんと乗り切ったから英雄なんです。最初や二度目の危機で死んだら、それはただ死んだだけなんです。だから……俺もどっかで危機に立ち向かわないといけない」

 アーシアは何を言うか迷っていた。迷いながら走る俺の横を飛ぶ。


「はぁ……。時介さんがかっこよくなってることだけは確実ですね……。どうか、死なないようにしてくださいね……」

 どうやら説得は諦めたらしい。

「もちろん、そのつもりですよ。何十人も敵がいたら目立ちすぎるし、おそらく敵の数はそこまで多くない。さっきの敵が能力的に平均値とすれば、十二分に勝てます。それに――」


 俺は剣を握る手に力をこめる。


「これだけの得物を持ってる奴なんて、そうそういないですしね」

 アーシアがくれたこの剣があれば、絶対勝てる。

「ご武運を祈ります。精霊は人間と戦うわけにはいきませんから」

 手を組んで祈りのポーズをとって、アーシアは姿を消した。


 人間の誘拐が目的としたら、敵の動きもある程度、想像がつく。

 森の中、小さな細い道が伸びている。

 そこでなにやら声がした。


「くそっ! 抵抗するな! とっとと乗れ!」

 衰弱している生徒を敵兵が荷車に乗せようとしていた。

 俺は魔法耐性がつく飴をもう一つ、口に入れた。敵兵も似たようなもので自衛してるんだろう。


「なあ、俺、かなりダルくなってきた……」

「もっと我慢しろよ……。お前まで乗せてたら、運べないぞ」

 敵の数は三人。幸い、薄着でまともな鎧も着ていない。


 ああいう荷車部隊が多くて三グループぐらいってところか。

 一回三人運んで全部二往復できれば十八人。それなりの成果だ。

 逆算すると、荷車部隊がだいたい敵は三かける三で九人。あと、亀山とか、俺が殺した遊軍みたいなのを入れても、十五人程度かな。


 倒せる数だな。少なくとも、ここで三人減らせる。

 俺は敵に近づくに連れて、大股になる。


 あくびをしている一人の首を後ろから刎ねた。

 血を噴き出して、男の体が倒れる。


「なっ、て、敵か……」

 いきなりのことで動きが遅れた敵をまた斬り殺す。


 師匠、なかなか上手くやってるだろ。

『雷の運び屋』流は敵を殺すことを目的にしている、純粋な戦争用の武術だ。

 とにかく敵を殺して、殺して、殺す。それにより、敵は怯える。怯えた敵はさらに簡単に殺すことができるからだ。


 仲間二人を殺された残りの一人はもう腰が引けていた。

 イマージュが言ってたな。こういうのは厳密には敵ではない。自分の流派では「非敵」と呼ぶと。戦意もない有様でまともな戦闘を行うことは不可能に近い。だから、すぐに殺せる。


 けど、俺はあえて敵の剣を持つ手を斬る。

 剣が落ちた。これで無力化できた。


「なあ、お前らの仲間はどれぐらいいる?」

「大魔法使いササヤ様を入れて、十六……いや、亀山って奴がいるから十七か……」

 俺の数の読みはそんなにはずれてなかったな。


「そのササヤっていうのが帝国の魔法使いだな?」

「あ、ああ……。ただ、かつてはこの地に産まれて、その後、帝国に来たとかって話だが……」

 やはり、運搬部隊は雑兵と大差ないレベルだな。衰弱したのを運ぶだけだからだろう。


「じゃあ、最後に聞く。残りの運搬部隊はどこだ?」

「もう一つはもっと奥の道を抜ける手筈だ……。もう一つは、最初から女を襲うことしか考えてないような奴だから、女を探し回ってるんじゃ……。あと、もう一つあったような……」

 これで助かると思ったのか、兵士はぺらぺらしゃべった。


 ある意味、軍紀を守らない奴らのほうが面倒だな。


「ありがとうな」

 俺は兵士の心臓に剣を刺した。


 俺は近くの男子生徒に声をかけた。柏原かいばらという真面目系のグループに所属していた生徒だ。

「なあ、大丈夫か?」

「う、うん……。生きてはいるけど、体がすごく重い……」

「どうやら死ぬことはないらしい。できるだけ霧を吸わないようにしのいでくれ。そのうち、救援部隊が来る」


 俺はまた先を目指す。

 森の中は一切人の手が入ってないわけではない。踏み固められた跡もあるし、林業用の細い林道もあって、そういう道がやがて広い道につながっている。

 そういった道を荷馬車は通るはずだ。


 一見、農民風の男たち四人が荷馬車を引いているのを見つけた。

「本当に大丈夫なのか……?」

「報酬はがっぽりもらえるって話だ。多少の危険はしょうがねえさ」


 ああ、地元民が金で懐柔されたのか。どっかで兵士に引き渡すんだろうな。

 今更遠慮してもしょうがないか。


 俺は後ろから走りこむと、男二人の首を斬った。

「ひゃっ! な、何者!」

 残りの二人もすぐに殺した。倒れた男からサヨルがくれたような飴を大きくしたようなのが転げた。やはり、耐性をつけさせて使役していたんだな。


「これが兵士の数に含められてるかわからないけど、誘拐だけならかなり阻止できてきたな」

 荷車の中には、さるぐつわをされた生徒が入っていた。それを剣で外す。

「しばらく、ばれないように隠れててくれ」


 残りの荷馬車を探して、移動した。


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