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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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70 生徒にもばれる

「イノシシの肉って臭みがあると思ったけど、そうでもないな」

「血抜きが上手いのよ。殺したあと、すぐに処理ができるかどうかで味がまったく変わるの」


 俺とサヨルは引率している生徒たちの横でイノシシの肉を食べていた。味付け用の塩や香辛料がかかっているから、かなりスパイシーだ。椅子はないので、切り株をお互いに椅子の代わりにしている。


「移動日は実習に含めないって書いてた気がするけど、これも実習みたいなものだな」

 移動中の食事は森に入って狩りをすることとなっていた。森や山に潜伏する時の予行演習なんだろう。


 教官はイノシシやシカを狩る必要はないのだけど、実験も兼ねてイノシシもシカも一頭ずつ大きいのを仕留めた。

 火炎をぶつけると、そのまま調理になってしまうから、氷の刃を何本もぶつけた。

 血抜き作業自体は地元の村人が手伝ってくれる。あくまでも手伝ってくれるだけだ。野生動物を狩ることも含めて実習なのだ。


 俺は全部村人に任せてもいいんだけど、せっかくなのでナイフを使ったさばき方を教わった。いつ、どこで使うことになるかわからないし、単純にサバイバル体験みたいで楽しい。


「もう一回ぐらい、行きで狩りをするチャンスがあるよな。次はヤマイヌも狙ってみたいな」

「あ~あ。なんか複雑な気分」

 こっちは楽しそうなのに、なぜかサヨルの顔は晴れない。

「もしかして、サヨル的にはこういうのって野蛮だったりするのか?」


「そういうことじゃないの。だって、私とのデートの時より、今の時介のほうがずっと楽しそうなんだもん。私って狩り以下なのかって思うわ」

 サヨルは不服そうだけど、食欲はあるらしく、俺と同じ量を食べている。

「デートって、王都に買い物に行ったぐらいだろ」

「そういうのをデートって言うの! あぁ……男ってこういうところが雑なのよね……」


 デートでの女性の楽しませ方とかも、アーシアから学んでおくべきだっただろうか……。


「至らない点があったら謝るからな……」

「あっ、そういうところがあったわけじゃないから、気にしないで! 一緒に買い物して私はすごく楽しかったから……」

 あわててサヨルがそう言った。愛想尽かされたりはしてないらしい。よかった、よかった。


「でも、時介も変わったよね。最初に生徒として会った時は、まだ生徒って雰囲気が強かったけど」

「生徒だったんだから当たり前だろ」

「いちいち、横槍入れないで」

 サヨルが頬をふくらませた。こういう仕草をすることがサヨルは増えてきたと思う。多分、親愛を示すものだと受け止めていいだろう。

「その頃も、時介はすごかったよ。すごかったけど、まだ自分を成長させることで精一杯って感じがあったの。けど、カコ姫様の件で戦いがあった後の時介は……なんていうのかな……外を見る余裕みたいなのが生まれてる。言い方を変えれば大人になったっていうか、かっこよくなったっていうか……だから、好きになったっていうか……」


 サヨルの顔が赤い。これ、結局、俺のこと、全肯定してくれてるんじゃないか……。

「ありがとうな、サヨル……。そう言ってくれると俺ももっと頑張れるし……」

「そんなにはっきり、ありがとうって言わないでよ。私も照れちゃう……」


 これ、外から見たらノロケだよな。あんまり生徒に見られないようにしないと――と思って、横を見たら思いきりツインテールの生徒と目が合った。


 理奈が俺たちのやりとりを見ていた。いつからかによるけど、偶然通りかかったって感じじゃないな……。

「あっ、高砂さん……何か質問でもあるかしら……?」

 サヨルもわかったらしく、強引に誤魔化す作戦に出ることにしたようだ。


「そうですね、質問というと……」

 あっ、なんとか回避できるかな……。

「二人って付き合ってるんですか?」

 回避不可能だった。


「そ、そういうことになるかな……。はは……」

 サヨルは赤い顔というより青い顔になっていた。絶対に生徒間で広まるもんな、こんなネタ。


「そうですか……。島津先生を狙ってる女子多かったんですけど、残念です」

 理奈の口から聞き流せない話が出た。

「えっ、俺ってそんなにモテてたのか?」

 ついつい聞き返してしまった。

 この学年になるまで、スクールカーストではかなり底だという自覚があった。被害妄想じゃなくて、事実のはずだ。成績も悪かったし、部活も所属してなかったし。


「ここ数か月で、先生って急速にかっこよくなったからね~。むしろ、理奈だってあわよくばって狙ってたぐらい。教官になったからこれは無理だって諦めたけど、むしろなってからのほうが好きになった子は多いみたい」

 理奈は俺とサヨルのほうが近づいてきた。

 えっ、俺って理奈にもそんな目で見られてたのか!

 モテ期など一生来ないものと諦めかけていたのに。けど、サヨルと付き合ってるから、その時点でモテ期だと気付けって話だよな。


「ほら、剣技のトーナメントで優勝したよね。あれでファンの人が増えたんだよね~。だって、いざって時に守ってくれそうだし」

「なるほどな。そういうことか。そういう成績で選ばれたほうが納得はいく」

 スポーツが強いとモテるみたいなのって本当なのかって思ってたけど、効果はあるらしい。


「もちろん、それだけじゃないけどね。今の島津君、いい意味で落ち着いているから。一人だけ大人の男って感じだもん」

 理奈はわざと島津君と言った。

 内容的にサヨルの言葉と近い。どうやら俺は変われていたらしい。


「こういう言い方はおかしいかもしれないけど、ありがとうな」

「こういう言い方はおかしいかもしれないけど、どういたしまして」

 理奈と目が合って、二人で笑った。


「もし、サヨル先生と別れたら教えてね、島津先生」

 冗談で理奈が言った。

「失礼なこと、言わないの」

 これにはサヨルも苦笑いする。


「けど、男子もサヨル先生、狙ってる人多かったから、これは荒れそうだね~」

 にやにやしながら理奈が言った。


「えっ! なんで、私が生徒にモテるの!?」

 サヨルは信じられないといった顔をしてたけど、そりゃ、ほぼ年齢差のない女の先生はモテるだろう。

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