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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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69 課外訓練に向けて

「お前たち、付き合ってるのか?」

 さらっと、ヤムサックに言われた。


 ちょうどサヨルは席でお茶を飲んでいたらしく、かなりむせていた。


「な、な……俺、何もほのめかしてないと思いますが……」

「そんなもの、かもし出している空気でわかる」


 そんなにあっさりばれてしまうものなのか……。カップルらしいことなんて、まだ何もしてないのに……。


「だが、教官同士で付き合うこと自体は何も問題はない。どんどん親睦を深めてくれ。ぶっちゃけ、生徒に手を出されるよりはいい」

「生々しいことを言いますね……。でも、教師と生徒って立場が対等じゃないですからね……。わからなくはないです……」


 もちろんそんなことは言わないけど、仮に俺がデートしてくれたら成績を上げてやるって言ったら女子生徒はそれに同意する可能性はある。

 そんな交換条件を出さなかったとしても、教官と付き合えばテストの答えを教えてもらえるかもしれないなどと相手が思うことはありうる。ほかの生徒にばれても、特別に目をかけてるんじゃないかと疑われるだろう。教師が生徒に点数をつけられる側にいる以上、力関係は不平等なのだ。


「そういうことだ、いちゃいちゃしてもらってまったく構わん。ただし、破局して気まずい空気を作ることは禁止だ。私にとっても迷惑だ」

 とことん実利的なことをヤムサックは言うな。それぐらい、サバサバした関係のほうがありがたいけど。


「ヤムサック教官……その、私たちのこと、黙っていてくださいね……」

 サヨルが念を押した。すぐに一人にばれた時点で早晩教官のみんなにもばれそうな気がするが、発覚は遅くなるほうがいい。

「大丈夫だ。お前たちの恋仲にさして興味はない」

 研究にしか興味がない大学院生みたいなことを言われた。

「それはそれで、なんだかイラっとする部分もあるんですけど……まあ、プラスにとっておきます……」


 たしかに、そこまでサバサバした対応をとられると、恋で盛り上がっていた俺たちがすごくしょうもないことをしていたみたいに思える。ほどほどに興味を持ってくれというのは、わがままだと思うけど……。


「さて、話は変わるが」

 この人、ほんとに興味ないな……。ヤムサックも年頃の男のはずなのに……。

「課外訓練の日程が決まった。我々も引率の教官としてついていくので、荷造りなどはしておくようにな」

 課外授業? そんなのあったっけと思っていると、サヨルが紙を貼ってあるボードをぽんぽんと叩いた。俺がわかってないと判断したんだろう。


 そこには「課外訓練 場所:ヒョーノ山脈 日程:初冬月十六日から四泊五日。ただし移動日を除く」と書いてある。


「山にこもって、いくつかの部隊に分かれて、そこで模擬戦争をやるの。一年目の授業で学んだことの集大成と言ってもいいわ。途中からは過去の卒業生で、今は軍に所属している者も参加する予定」

 ちなみにこの学校でのカリキュラムは二年間あるが、毎年生徒を召喚しているわけではないので、二年生というのが今、いるわけではない。


「もう、そういう時期なんですね」

 なんだかんだで一年の間、いろんなものを学んだと思う。こっちとしては五年習ったぐらいの密度だったけど。


「あくまでも、私たちが教えたことは戦争目的のものだってことを、ここで感じ取ってもらうの。逆に言えば、そこであまりにも向いてないと思ったのなら、早々に軍人になるのを諦めるのも選択肢の一つよ。勉強が得意なことと、本番が得意なことは別だから」

「けっこう、大規模なことをやるんですね」

「教官になっててよかったね。生徒のままなら、薄汚い小屋に泊まって、夜も当番制で見張りをしたりする必要があっただろうから」


 それは勘弁してほしいな……。


 課外訓練の件が発表された時の、生徒の反応は上々だった。

「修学旅行みたいなものかな? 王都から出てないから楽しみ!」「温泉とかあるのかな?」「枕投げ、中学以来だな」

 もう、完全に遊びに行く感覚だな……。一応、訓練って言ってるんだけど。


 ヤムサックが「遊びではないぞ。早い段階で敗退したチームには罰も課されるからな」などとちゃんと説明していたけど、どこまで通じてるか怪しいところだ……。


 その課外訓練までの間、授業も実戦向けの内容を多くした。俺が勝手にそうしたんじゃなくて、教科書もそういったことが中心に書いてあるのだ。一年目の勉強を生かして、どうにかしろってことだろう。


 異世界から来た俺たちはマナを多く体に持っているから、これまでに習ってきたことだけでも、マスターしていればかなりの戦力になるはずなのだ。それの発表の場だ。


 課外訓練は教官にとっても大きな行事なので、サヨルとのプライベートの時間をゆっくりとる雰囲気にもならなかった。とくにサヨルは事前準備が割とあったらしい。こっちは高校生の年で向こうもそんなに大差はないから、ちょっと子供っぽい恋愛でいいのかもしれないけど。


 その間、俺は軍隊所属の剣士と何度も勝負を行っていた。剣技のほうももっともっと高めておきたい。基礎はかなり身についているので、やっぱり実践の数を増やしたい。

 最初、こっちが軍人の剣技に慣れてなかったので勝率は三割ぐらいだった。流派が軍人のものと、イマージュのものと違うのだ。それでも、勝率も一週間の間に五割ぐらいに上がってきた。

 軍の指揮官からも「かなり素質がある」と言われたので、悪くはないのだろう。でも、王国の軍人と二回に一回程度しか勝てないのでは、本番で使うには危うい。まだまだ課題は多い。


 アーシアの元では、相変わらず戦闘を前提として魔法の使用について学んだ。背後から剣を突きつけられても、動じることなく対処できるようになってきた。これが無意識のうちにできるようになれば完璧だとアーシアは言っていた。


 そして、課外訓練の日がやってきた。

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