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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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66 アーシアに恋愛相談

 どうしよう……。

 告白されたことなんて人生初だ……。


「もし、付き合ってくれるなら、この手握ってください。ダメだったらダメで、このままの関係でいてもらえたらうれしいかな……」


 照れたように言っているが、サヨルさんも緊張しているのはすぐに伝わってきた。


「どっちにしても、早く決めてもらえるとうれしいかな……。雰囲気のいい場所にまで移動したけど、もっち近場のほうが心理的にはよかったかも……」


 男だったら、ここはずばっと言わないといけないところだ。でも、どう、ずばっと言えばいいんだ?


 俺の頭に浮かぶのはアーシアの顔だ。

 過去にアーシアに告白して、まあ、振られた。それは事実だ。そのあと別の誰かに恋をしたとはっきり認識したこともない、これも事実。


「あの……サヨルさんの言葉に対して、俺もできるだけ、誠実に答えさせてください」

「う、うん……」

「俺、実は一度、ほかの人に告白したことがあるんです。その女性は特別な存在の人で、俺とは付き合えないと振られちゃったんですけど……。俺は半分諦めながら、でも完全には諦めきれてないところもあって……そういう人間なんですけど、大丈夫ですかね……?」


 俺、おかしなこと言ってるよな……。開示する意味のないこと、言ってる気がする……。


「あ、当たり前でしょ……。私たちって年頃の男女なんだから、島津君にも好きだった人がいるのが自然だよ……。過去に好きな人がいたから嫌いになりましたなんてことはないよ……。島津君が今もその人が諦められないから無理っていうのならどうしようもないけど……」


 だよなあ……。人生初のイベントでテンパっている。これを決めるのはサヨルさんじゃなくて、俺のほうなんだ。


「すいません、サヨルさん、一日だけ時間もらえませんかね? 俺の頭を整理してから答えを出したいんです」

 これはいいよな? ラブレターだって時間的猶予はたいていもらえてるもんな?

「うん、それだったら……」

 ぎこちなく、サヨルさんは手を引っこめた。

「明日の夜九時に演習場に行きます……」

「わかった……。九時だね……」


 サヨルさんも俺と同じぐらい困惑しはじめてる気がする。俺のせいで余計な迷惑かけてるな……。


「じゃあ、私、先に帰るね……」

「いえ、女性一人っていうのは危ないから一緒に帰りましょう!」

「それもそっか……。密偵の話をしたのは私のほうだしね……」

 こんな気まずいまま、町を歩くのははじめてだ。


「ちなみに特別な存在の人だから断られたって言ってたけど…………姫様のこと?」

「いえ、違います! そんなだいそれたことはしませんから!」


 表現の仕方がまずかったな。身分違いの恋と思われたらしい。

 カコ姫にときめいたことはないとは言えないけど、告白なんてうかつにしたら、こっちが処罰される恐れだってある。姫にその気がなくても、不敬だと聞いていた誰かが言い出すかもしれない。いくら俺でもその程度の常識はある。


「じゃあ、師匠役のイマージュさん?」

「それも違います! 全然関係ないです!」

「あ~、今のはだいたい予想ついたよ。飲み会の席を見たけど、二人の間にそういう空気、怖いぐらいなかったから」

 念のため、ふっかけるだけふっかけてみたらしい。


「あくまで私の勝手な言い分だけど、私たち、けっこういいカップルになれると思うんだよね……。ほら、お互いに異世界出身で身寄りもないから、家の格式とか体面にそんなに気をつかわなくていいし……立場が近いから職務上の秘密も話してかまわないし……。これが町娘さんと結婚したりしたら、島津君、奥さんに話せない秘密ばかりになるよ」

「そうですね……。恋愛のことをそこまで具体的に考えてなかったかもしれないです……」


 アーシアを好きになったことは、近くにいる女性を見る余裕ぐらいしか俺になかったという言い方もできる。

 強くなることに必死になるしかなくて、色恋にうつつを抜かしている場合じゃなかった。

 ――というのは言い訳かもな。じゃあ、高校生の時は色恋に生きてたかといえば、そんなことないもんな……。


 生徒はある程度のお金を国からもらえるので、そのお金で王都でできた恋人にものを買ってる男子生徒もいたはずだ。結局は行動力の差だ。


 でも、行動力があろうとなかろうと、告白に答えを出さないといけないのは事実だ。


 じっくり考えよう。でも、じっくり考える時間はないんだけど。



 部屋に帰ったら、アーシアのほうから俺の前に出てきた。

「いや~、なかなか大変なことになりましたね~。これぞ青春ですね!」

 他人事だからなのか、アーシアは無茶苦茶楽しそうだ。


「古来より神剣ゼミを続けていればモテると言われていたんですが、それが証明されましたね。勉学に励む姿は人をときめかせるのです!」

 この場合、サヨルさんと仲良くなれたのは俺の魔法による実力のせいだから、あながち間違いではないのかもしれない。


「あの……先生、俺はどうしたらいいですかね……?」

「時介さん、それはないですよ」

 ジト目でアーシアに見られた。

「時介さんの人生に関わることなんですから、自分で決めないと。サヨルさんだって、ほかの人に付き合えと言われたから付き合うことにしましたとか言われたら、ショックですよ」

「いや……別れろとか付き合えとか答えを求めてはいないんです……。ただ、先生の立場からアドバイスがほしいんです」


「なるほど。そう来ましたか。筋は通っていますね」

 まだ、完全に納得してくれているわけではないが、何か言ってはもらえそうだ。俺としてはとにかく考える材料が少しでもほしい。


「そうですね~。やっぱり、これは時介さんがよく考え抜いて決めるべきですね」

「アドバイスくれないんですか!」

 生徒がこんなに悩んでるのにそれはひどいんじゃないか……。


「じゃあ、あえて言いますよ。時介さん、私に告白したことあるじゃないですか」

「うっ……」

 俺は思わず部屋の中で一歩後ずさった。


「つまり、時介さんにとって私は完全なる第三者ではないんです。そういう私が一般論のつもりで言っても、かつて告白されてごめんなさいした人が語った言葉になってしまうんです」

「ものすごい正論で何も言い返せないです……」


 そこで、アーシアは空を飛んで俺の横にまで来ると、ぽんぽんと肩を叩いた。


「だから、よ~く悩んで答えを出してください。どういう結果になったとしても、時介さんが今のベストを尽くしたのなら、それが時介さんを成長させます。当然、それでサヨルという方が幸せになれればもっといいですけど、そこは人と人の相性ですから」


 俺もやっと決心がついた。

「わかりました」

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