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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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62 優勝した

 中山の木剣は勢いはあった。でも、それは力で強引に相手を押しのけるような剣だ。

 ――そういう剣を使っていると、すぐに死ぬぞ。

 そう、師匠に言われた。

 ついでに言うと、アーシアにも「力任せにやると柔軟性がなくなって複数の敵が出てきた時などに対応できなくなりますよ」と言われた。


 実戦で使うのは九割九分、真剣だ。もちろん鎧で武装している敵を倒したいとか、そんなこともあるかもしれないが、基本は敵の急所に当たれば強引に力を入れなくても、殺せるようにできている。


 だから、大事なのは剣で圧倒する力よりも、確実に敵を斬れる判断力だ。

 さっと、剣を剣で受け流す。

 そこから、俺は剣を敵の手に打ち込む。

 ――パシィッ!

 一度撃ったら、一歩離れて、肩を打つ。

 さらに背中にも軽く一撃。


 これでもし鎧がないという前提なら、俺の勝ちでいいと思うんだけど、審判はまだ納得しないらしい。

「それだけで致命傷とは限らん。まだ続けてくれ」


 わかった。けど、それは中山に酷かもしれないぞ。あるいは格の違いを見せつけてやってくれってことか。挫折しても這い上がるぐらいでないとやっていけないだろうし。


 俺は再度踏み込む。

 今度は敵の腕を打つ。

 踏み込む勢いだけなら俺のほうがキレがある。

 立て続けに打つ、打つ、打つ。

 パニックになった中山がひるむ。悪いけど、戦闘中にひるんだら、確実に終わりだぞ。


 そこを俺は軽く、突く。

 刺突は決まれば一撃で相手を殺せる。だから、実戦目的の「型」には刺突が入っている。


 鎖骨あたりを突かれた中山が思わず倒れる。

 表情はすっかり怯えきっている。

 俺は腰をかがめて、相手の剣をとる。文句なく自分の勝ちだと言ってもらうために。


 今度こそ審判は「そこまで!」と勝負を止めた。


「本格的に個人授業を受けたほうがいいぞ。でないと成長の速度が遅くなりすぎる。君の問題じゃなくて、システムの問題だ」

 ここまで勝ち上がったってことは絶対に素質はある。あとはそれを上手く伸ばせる場を用意すればいい。これはどっちかというとスイングに言ったほうがいいかもしれないけど。


 こうして、無事に俺は優勝した。

 記念メダルがもらえるというので待っていると、姫が降りてきた。

「本日はお疲れ様でした。そしておめでとうございます」

 紐のついたメダルを姫は手に持っている。とても晴れやかな顔をしている。


「ありがとうございます。なんとか剣でも姫を守れるようになりたいと思っていますので」

 姫を前にすると、やっぱり緊張するな。これだけ近くで見ると、姫というか、天使といったほうが正しいんじゃないかってぐらいに美しい。

 ただ、アーシアとキスした人間がこんなのぼせたような気持ちになるって、ちょっとまずいんじゃないか。俺ってけっこう浮気性なのかな……。


 さらに姫は俺に一歩近づいた。メダル授与のためだ。

 でも、それだけじゃなかった。メダルを頭に掲げる時、姫はこう言った。


「近いうちにわたくしは姫から王になります。王であるわたくしを守ってくださいね」

 そっと、俺にだけ聞こえるような声で。


「現在、お父様から少しずつ権限の委譲をしてもらっていて、自然な流れで政務の引継ぎができるようにしていますから」

「姫が王になっても必ずお守りします。まだまだ剣は半人前なので、ダメなんですけど……」

「そのことですが、イマージュがあなたに話をしておきたいそうです」


 もしかして、まずいことがあって、怒られるのかな……。大きな失策はなかったと思うが、相手が弱かったせいで、目立たなかっただけかもしれない。

「まだまだ、島津さんは伸びますよ。今度は魔法も教えさせてくださいね。王家で相伝しているものもありますから」

 姫ははにかんだような笑みを最後に俺に見せて、去っていった。

 たしかに、どうしても剣技の伸び代が大きかった分、魔法の学習時間はちょっと短くなっていたかもしれない。それに魔法の場合、剣技以上に実戦に近い形で力を試せないのもつらいところだ。


 それはひとまず置いておくとして、イマージュのところに行かないと。

 行くとイマージュとタクラジュがなぜか背を向けて、いがみ合っていた。ケンカでもしたらしい。逆によくそれだけケンカできるなと思う。


「師匠、何でしょうか?」

「模擬戦、ご苦労。でも、あそこまでしょうもないのでは訓練にもならんな。軍人とも稽古をつけるか。本当にしょうもないな。教育カリキュラムを変えるべきだ」

「あの、師匠……あまり生徒に聞こえると落ち込ませちゃうんで、声はセーブしてくださいね……?」

 俺は教師でもあるので、生徒をバカにしすぎるのは倫理的に問題がある。


「心配するな、イマージュのやつ、かなり褒めていたぞ。よくやってると言っていた。さすが自分の弟子とまでしたり顔でつぶやいていた」

「タクラジュ! そういうことは黙っておけ!」

「ふん、お前へのイヤガラセのためならお前の約束など破るに決まっているだろう」

 あれ、意外とこの師匠は甘いのだろうか?


「あ、そうだ……。それでいったい何の用で呼ばれたんですかね?」

「ああ……次にスイングとやるらしいな」

「あの教官も俺にいいようにされすぎると、授業自体の信用を失いかねないし、せめて俺より強いってことをあらためて見せたいんでしょう」


「現時点ではいくらなんでもスイングが勝つだろう。だが、自分より強い者に当たったら負けるということをやっていたのでは、そのうち戦闘で殺される。話にならん」

 言われてみればそうだな。最強になるまで誰とも戦わないというわけにもいかないだろうし。

「そこで、強者に当たった時に勝つための技を教えてやる。別に反則でも何でもない。まあ、いちかばちかやってみろ」

 そして、イマージュは俺にそのやり方を教えてくれた。

 なるほど。なかなかいい技だ。


「ありがとうございます。これを使ってみます」

「あくまで捨て身の技だから無闇にはやるなよ。それとお前、やけに剣を奪う技術に慣れていたが、あれは誰から学んだんだ? 前に言っていた一人目の師匠か。ぜひ一度お会いしたいものだが」

「ええと……ちょっと今、旅に出ていて、会えないんですよ……」


 アーシアに会わせると、まずいよな……。


「剣をとったりするのはほとんど自己流と言っていいかも……」

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