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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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59 模擬戦開始

 そして、模擬戦の日がついにやってきた。


 会場は王国で御前試合などを行う時に使う場所だ。城の中庭に当たる。なので、面している城の二階のベランダから試合を見下ろすことができる。


 ちょうど、ベランダに王と姫の姿があるのが見えた。

 さらに一階の観覧者用の席には師匠であるイマージュとタクラジュもいた。来るとは聞いてたけど、これはつまらない勝負をしたら無茶苦茶怒られるだろうな……。


 それと実はもう一人、俺がそうっと招いた客がいる。

 アーシアが堂々とした態度で観覧車席に座っている。なお、服は貴族っぽいものに変えている。

 こそこそしていると逆にばれるから、ああやって試合に興味がある貴族ですよという顔をすることにしたらしい。たしかに不審に思っている人間はいないようだ。

 まあ、不審者という確信がなければ、「お前は誰だ」と聞きづらいのかもしれない。有名な貴族とかだとかなり無礼なことになる。


 どちらかというと、客席のほうに意識がいっているということは、対戦相手はどうでもいいということだ。

 俺に声をかけてくる「生徒」も多かったが、みんな、俺を強敵とかとは考えてないらしく、気楽に声をかけてくる。

 あれだな。運動会とかの余興にある父親だけの綱引きみたいなやつだな。


 それはそれでいい。ダークホースが出てくるほうが面白いからな。


 やがてトーナメントの表が貼り出される。

 きれいに三十二人の名前が書いてある。退学者みたいなのを入れると、三十二人も生徒がいないはずなので、別枠で参加している人間がいるようだ。過去の生徒で魔法部門に進んだ人間だというような話が聞こえた。魔法使いになったが、やっぱり剣剣も学ぼうとしてる奴がいるってことか。


 俺の名前はかなり後半だ。ぶっちゃけ誰が優勝候補だったり、誰が強いのかとかはまったく知らない。おそらく大差ないだろう。


 そこに上月先生が声をかけてきてくれた。

「お疲れ様です。今日は出場するんですね」

「だって、このトーナメント表見たら、魔法使いになるつもりの生徒も出てるでしょ。俺が出ないのはおかしいと思うんですよね」

「多分ですけど、弱そうな人は強そうな人と一回戦は当てられてますね。私も勝てないと思います」

 上月先生も今ではかなり回復魔法を使えるようになってきていて、この調子だとほぼ確実に魔法使いとして生きていけると思う。


「じゃあ、その敵を圧倒したら、お客さんは驚きそうですね」

「なかなか難しいですけどね」


 その難しいことを覆すのが面白いんだよな。


 当分、自分の番にならないから、試合を見学することにした。


 審判は剣技の教官であるスイングが行うらしい。

 木剣同士の戦いで、どちらかが明らかに優勢と判断した時点で勝負アリとする。制限時間は一応三分と定めてあるが、それも差がないと判断したら、そのまま延長するという大雑把なものだ。

 ちなみに男女は入り乱れてのものだ。実際、武器を扱ってのものだから、腕力の差みたいなものは縮まるだろうし、おかしくはないのだろう。戦争になったら男女関係なしに戦うしかないしな。


 さて、第一試合。といっても見学だけど。俺は一回戦十四試合目だ。


 すぐにわかった。

 二人とも動きが遅い。

 遅いというのは全部の動作がトロいという意味ではなく、攻撃に踏み込む時の切れ味がないのだ。ぬったりと攻撃に転じたり、守りに入ったりする。その間にどうしても隙が生じてしまう。


 よく見てみると、どちらも隙だらけだ。いくらでも攻撃を打ち込んで崩すことができるだろう。正直、泥仕合だ。


 それでも剣道みたいに胴が入って、勝負はあったらしい。スイングが決着を宣言した。

 その次の試合は高砂理奈だ。相手は中山という男子。たしか柔道部だったから、中山のほうが有利だろうな。

 理奈は魔法だとかなりの優等生なので、どうしても理奈のほうを応援してしまう。けど、これはかなり手ごわい相手だろう。


 防御の姿勢は理奈もよかったが、あくまでも防御だ。攻めることができないと、勝ち目はない。一方で中山は攻め続けることで、このまま決着をつけるつもりだ。


 中山も相手に反撃されてないから押しているように見えるけど、攻めと攻めの間にブランクがありすぎる。あれを埋めていかないとそこを攻撃されて、すぐに窮地に立ってしまう。


 運動神経が悪いとも思えないので、素振りからみんなで教えることの限界がこのへんなんだろうな。


 一分近く、理奈も木刀で持ちこたえていたが、腕に中山の剣が二回ほどぶつかって、そこで負けとなった。


「先生、負けちゃったや……」

 負けた理奈が俺のほうに来て、横に並んだ。ちなみに負けた人間は負けた人間で試合をやらせるらしいので、これで今日の勝負が終わったということにはならない。数をこなすこと自体が大事なので、正しい発想だ。

「けっこう悔しそうだけど、もしかして勝とうと思ってたか?」


「防御の素質はあるって言われてたから、ワンチャンあるかなって……。残念ながら無理でした~」

「防御はできてるけど、重心が後ろにいきすぎてるから、攻撃に出ようがないんだ。もっと前に体を傾けて守っていれば、ぱっと攻めこめるんだけど」

 さっきの試合の解説をする。

「あと、斬ろうとしないで突くことを覚えたほうがいいな。そのほうが殺傷能力が高いことも多いし、隙も狙いやすい。振りかぶらないでいいから、自分の隙も減る。そしたら理奈ももうちょっとやれると思う」

「先生、魔法を教える側なのに、剣技もよくしゃべるね~」

 理奈に笑われた。これ、あんまり信用してないな。


「けど、先生のアドバイスは正しいと思う。やっぱり先生はよく見てるね」

「そうかもな。こっちもたくさん試合を見れて勉強になる」


 生徒同士の戦いは欠点が目立つが、その分反面教師としてはありがたい。悪い例をいくつも見るから、どこを修正していけばいいのかがわかる。


 上月先生は五試合目に出て、これも相手の男子に二十秒ぐらいで押されて、負けていた。先生、腰が最初から引けてたからな。もう、魔法に専念したほうがいいけど、真面目だから剣技も一応やってるんだろうな……。


 そのあと、負けた上月先生も俺の横にやってきた。


「全然ダメでしたね……」

「上月先生、あんまり向いてないですよ」

「やっぱり、わかりますよね」

 先生は苦笑した。自覚もあるんだろうな。

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