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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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58 模擬戦が待ち遠しい

 教師生活のほうもひと月ほどが経って、慣れたかどうかと言われればかなり慣れてきた。

 クラスの成績は、ヤムサックが教師をやっていた時より上がっているようだ。


「お前は教師としての才能もあるのかもしれんな」

 ヤムサックに教官室で生徒の成績表を渡されて、そう言われた。

「個人指導中心にしましたからね。真面目にやる生徒は伸びるはずです。それが目的だから当たり前と言えば当たり前ですけど」


「ただ、成績の悪い人間は相変わらず成績が悪いな。君ならそういう者をやる気にできるかなと思ったのだが」

 ああ、そういうところが期待されてたのか。

「それは難しいですね。やる気のない生徒をやらせるなら、強制的にやらせるしかないと思いますよ。やる気にさせる技術っていうのは、魔法の能力とは別だと思うんで……」


 たとえば熱血教師みたいな奴ならやれるかもしれないが、そういうのがウザいと言う層もいるだろうし、これは難しい。


「わかった。君はこのまま続けてくれ。やる気のある生徒が伸びること自体はありがたい」

「ありがとうございます。まあ、伸びたのは俺の能力が問題なんじゃなくて、教えるシステムの問題ですけどね」

 なので、もしヤムサックがそういうやり方を採用したなら成績も上がるだろう。


「君自身の魔法もぜひ成長させていってくれ」

「はい、努力しますよ」

 目下、剣技中心になってるけどな。


 型の習得はイマージュのもとでちょっとずつ結果が出せてきた。

「まだキレはないが、動きはだんだんとそれらしくなってきたな」

 イマージュもそう言って、うんうんうなずいている。これは進歩していると考えていいだろう。

「島津、お前はそれなりに才能があるようだ。これまでちゃんとした師のもとで教えられていなかったので開花が遅れたようだな。いや……でも、お前は体力のほうはあるようだし、遠回りとも言えないか」

「あの剣をくれた人に鍛えられたんです」


「なるほどな。だとしたら私は二人目の師か。まあ、師によって教え方も異なるからな」

 イマージュはどことなく寂しげだった。

「おっ、イマージュ、自分が一人目の師でないことに妬いているな。あさましい女だ」

 見物していたタクラジュがまたからかってきた。

「余計なことを言うな! 殺すぞ!」


「島津よ、イマージュが頼りにならないと思ったら、すぐに私のほうに来い。妹よりしっかり教えてやるぞ」

「当分は大丈夫そうだから、そこはいい」

 イマージュのおかげで俺は確かに強くなってるからな。自分でもある程度のことはわかる。



「そうだ。タクラジュ、お前の入ってくる場はない。このままいけば、模擬戦では優勝が狙えるだろう」

 実際、それぐらいはあっさり取るつもりでいた。明らかに俺の動きはつい二週間や三週間前までと比べ物にならないぐらい、変わっている。そろそろ最初の七種類の型はマスターできそうだ。

 これで、やっと剣士として格好がつく。

「あとは、多くの対戦相手と勝負をして、感覚を覚えてほしいところだが、それこそ模擬戦だな」

 師匠は俺以上に模擬戦を待望しているようだ。


 では、アーシアのほうとは大股走りが終わったあと、何をしていたかと言えば――


「そうです。もっと、つよく打ってください! 躊躇しない!」

 俺はアーシアの手に左手を当てる。

 すると、アーシアが握っていた半透明の剣が落ちる。

 剣が落ちると、またアーシアの手に半透明の剣が現れる。


「先生、手、痛くないですか?」

「そこが大丈夫じゃなきゃ、こんな練習してません! さあ、どんどんやってください!」


 俺がやっているのは戦場で敵剣士の剣を落とす練習だ。

 ほかにも、敵の足をひたすら払う練習もした。


 剣士に最も必要なのは勝つことだ。アーシアは俺に勝つための技をどんどん教えていくつもりらしい。


「こういう技ははっきり言って邪道なんですけどね。でも、邪道と言われてるということは効くということです。もし、戦場で相手の剣を払い落とすことができれば圧倒的に有利でしょう?」

「そうですね。逆に言えば、それをされたら終わりですけど」

「優秀な剣士はそういったこともどこかで意識に入れてるものです」


 俺は何度目の手を、アーシアの手にぶつける。精霊でも痛いのか、グローブのようなものをしているし、俺もグローブ着用だけど、アーシアを攻撃しているようなやりづらさは正直言ってある。


「もし、戦いたくない相手と当たっても戦場では戦うしかありません。後悔は勝ってからしてください! それができないなら時介さんが死ぬかもしれないんです!」

 アーシアが真面目な顔で言う。

 そう、俺が学んでいるのは殺し合いの場での技術だ。ためらいを減らすことも学ばないといけない。


「でも、いい線はいっていると思いますよ。あとは、こういう技術をいろんな対戦相手に試すことですね。人によって癖などもありますから。早く模擬戦が来ればいいですね」

 俺は思わず、笑った。

「何かおかしかったですか?」

「模擬戦を早くやれって師匠のイマージュも言ってたんで」


 これはとっとと模擬戦をやらないとはじまらないな。


 じわじわと模擬戦の日程も近づいてきた。授業での内容は知らないが、そこに生徒(もう同じ授業を受けることもないからクラスメイトと呼ぶのはおかしくなってきたよな)が意識を向けているのもだいたいわかる。


「先生、模擬戦は出るんですよね。そこで当たったら負けないから」

 そんなことを言ってくる生徒もいた。

「魔法では勝ち目はないけど、模擬戦だったらこっちが圧勝するつもりでいますからね。剣士になるの目指してますから」

 剣士側に照準を合わせてる発言をする生徒もいた。


「模擬戦だとあくまで生徒同士なんで、正々堂々とやろう。それにこっちも多少は自主練してるんだ」

 そう言っておいた。


 そして、模擬戦の日がついにやってきた。

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