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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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57 ご褒美のおまけ

「それと、もう一つご褒美のおまけをあげたいなと思っています」

「おまけ?」

 剣の装飾品でもくれるのだろうか。少なくとも剣よりすごいものじゃないよな。

 どっちみち、かなり疲れているし、まともに思考する余裕はない。


「本格的なのは私も困るんですけど、ちょっとぐらいならいいかなって」

 なんだろう? さっぱりわからない。そもそも、こんなヒントだけでわかるわけもないのだが。


 ――と、アーシアがさっと俺のほうに近づいてきて、

 頬に短くくちびるをつけて、また離れた。


 つまり……頬にキス?


「えっ…………えええっ! キス!? 今、先生、キスしました!?」


 剣を持ったまま、俺は呆然としている。これでまともな心理状態でいられる人間なんていないだろう。


 もしかして、夢? そうだよな、こんなことあるわけないよな……。アーシアは教師で俺は教え子で……。そうだよな? そうだよな……?


「私は先生なので時介さんと付き合うことはできないんですが、ほっぺにキスするぐらいならいいかなと思って。ご褒美ということで、許してくださいね」

 むしろ、許すも何ももっとしてほしいのだけど。これ、日本の教育現場なら絶対に問題になるけど、この世界には教育委員会も何もないからいい。


「先生、こんな破目を外したことするんですね……」

「あ、あまり言わないでください……。私も恥ずかしくなってきました……」

 時間差でアーシアは顔を赤面させだした。アーシアがものすごくかわいく見える。こんな先生、反則だ。異性の魅力で生徒をやる気にさせるのは多分、不純だろう。


 立ったまま、起きたことを整理してられなくて、もう一度芝生に寝転がった。落ち着いていられないのは俺も同じだ。

「もし、先生がこのご褒美の内容教えてくれてたら、俺、もっと早く合格してたと思いますよ」

 男はそのあたり現金だからな。好きな人がキスしてくれるなら、リミッターがはずれる。


「それは教育者としておかしい気がしたので、不意打ちにしたんです。これが私の教育者としての理念と、時介さんにこたえたいという気持ちの妥協点なんです。私に好きと言ってくれた時のことはうれしかったですから……。教育者としてその気持ちを受け入れるわけにはいかなかったんですが……」

 照れてるアーシアを抱き締めたいけど、そんなことをしたら俺はアーシアを失うことになるかもしれない。それは怖くて、俺はこのまま倒れたままだ。


「これからも、教えていってくださいね……。俺も恋焦がれて勉強がおろそかになったりしないようにしますから……」

「はい。お願いしますね……。今度からは剣士に必要な技術を教えていきましょう。特定流派の技みたいなものは教えられませんが、剣士が持っていれば役に立つ知識は伝えられるはずです」

 あと、三時間ぐらいここで倒れてないと切り替えるのが難しいけど、本当に風邪を引きかねないから、レヴィテーションで空を飛んで帰った。



 イマージュに剣を見せると、「これをどこで手に入れた?」とすぐに聞かれた。

「盗んだわけじゃないですからね。ある方からもらったんです……」

「そりゃ、こんな剣を盗んだんだったら、すぐにばれるだろうからな。そうか、お前によほど期待を込めている人間がいるということだろう」

「あの、俺は価値がよくわからないんですが、どれぐらいのものなんですか?」


 なんか、彼氏にもらったプレゼントの値段をすぐに確認する女みたいで、よくないかもしれないけど、ぱっと見で価値のわかるジャンルのものじゃないから、気にはなる。


「残念ながら、刀剣の鑑定はタクラジュのほうが得意なんだ。タクラジュに見せたほうがいい……」

 そういう点はタクラジュを認めてるんだな。

「もっとも、その他の大部分で私のほうが妹よりすぐれているからな。そこは勘違いしないでくれよ」

 ちゃんとイマージュが補足を加えた。


 そこで、姫の部屋にいたタクラジュに剣を見せてみた。

「うはぁ……これは……なかなか……」

 タクラジュが剣を抜いて、刀身を見た途端、顔がにやけだした。

 笑っているのではない。確実ににやけているのだ。


「うはは……いい……素晴らしい……この冴えも実にいい……よい!」

「何度見ても気持ち悪いな。こんな妹を持って、私は不憫だ」

 イマージュが汚いものを見るような目で、タクラジュに視線を送っていた。

「信じられんだろうが、タクラジュがよい剣を持つと、ああなるのだ。どうも高揚を通り越して興奮するらしい」

「最初に見ると、ちょっとインパクトあるな……」

 これ、剣によだれでも垂らされそうで、怖い。実際、ちょっと垂れかけている。


 タクラジュが剣を傷のつかないところにゆっくりと置いた。

 すると、途端に表情が引き締まったものに変わる。

「大変よい業物わざものだ。しかも、保存状態も大変よい。持ち主は大切に保管しておいたのだろう」

「ありがとうございます」

 にやけ顔とは信じられないぐらい、まともなことを言われた。

「持ち主が大切に保存してきたものに、あまり価値をとやかく言うのも無粋かもしれないが、軍人なら軍団長クラスが持つものだ」


 想像以上に高級なものだった……。

 それって、走ったご褒美でもらえるランクのものじゃないよな……。高校生が学年トップになったら、親が新車買ってくれたような感覚だ。


「価値を知っちゃったんで、かえって使いづらくなりました……」

 余計な傷とかつけたくないよな……。慣れてない人間がやって、折れたりしても取り返しがつかないし……。

「少なくとも、まだお島津の腕ではこれを使うには値しないな。それに見合うだけ強くなることだ」


 師匠であるイマージュにそう言われた。

「まったくもってそのとおりですね。強くなりますよ」

 俺のやる気が三割ぐらい上がった。

 もう、剣士諦めますって絶対に言えなくなったな。

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