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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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31 秘密の警護任務

「ま、まあ、俺は実際、賊じゃなかったわけで……だとしたら、庭の正面は大丈夫だろうって二人の判断自体に間違いはなかったんだから、いいんじゃないですかね……。今後は気をつけるべきだろうけど……」


 タクラジュとイマージュの二人も顔を見合わせてどうやら納得したらしい。


「わかった……。島津よ、なかなか気が利くな」

「島津は妹と違って頭の回転が速いな……」


 これって、解決したのかな……。


「あ、ちなみに、わたくしも自衛の手段は講じていたんです。セイクリッド・ベルという補助系の魔法なのですが……」


 それは名前は聞いたことはあるが、まだ習得には至ってない魔法だ。

 しかし、それも使えるっていうことはこの姫様自体が上級の魔法使いなんだろうな。でないと、概念魔法なんて使えないだろうし。


「ええと、たしか、悪意を持った者が近づくと甲高い音がする、一種の警報装置ですよね?」


「ええ、そうです。範囲がそこまで広くないのと、自分が止まっている時でないと範囲から自分が出てしまうので、あまり意味を成さないのですが、池で概念魔法を使う前には、まずそれをかけていたんです」


 つまり、甲高い音がしたら、すぐに侍女が気づいて助けに来るということか。


「そっか、俺は姫を自殺者だと勘違いして助けに行ったから反応もなかったんですね……」


「そういうことになりますね……」


 だとしたら、一応の防御態勢はとっていたってわけか。


「じゃあ、守りも意識していたんですね。失礼なことを言っちゃってすいません……」

「いえ、不備が今回、明らかになったわけですし、わたくし達の防御網が甘いのも事実です! どうにかします!」


「しかし、島津よ、姫が概念魔法をお使いになること自体が機密なのだ。そこからどのような魔法を使えるか推測もされかねん。なにせ、概念魔法は貴重なものだからな」

 イマージュが口をはさんできた。

「たしかに、大人数で護衛すると情報が広まるよな。警護が二人だけなのは機密保持の意味合いもあるんだろうし……」


 と、にやっとタクラジュが笑みを浮かべた。


「どうした、タクラジュ、気持ち悪い顔だぞ」

「黙れ、イマージュ。やはり、私は妹より頭の出来がよいようだ。名案が浮かんだぞ」


 タクラジュが視線を姫に向ける。


「姫様、この島津も護衛に加えればよいのです。天才と呼ばれているぐらいなのだから、その実力は折り紙付きのはず。しかも、島津が護衛に増えても秘密を知る者の数自体は変化がありません」


「なるほど……。そういう手もありますね」

「ふん! タクラジュの割にはよいことを言うではないか」


 あれっ……。なんか、俺の意思を無視して話が進んでないか?


「よし、島津。我々と一緒に姫様を守ろう。ただし、池に体をおひたしになっているところを覗いたら容赦せんぞ。男が王家の女性の裸を見るなど許されることではないからな!」

「ええと、その前に俺はまだ何も言ってな――」


 せめて、労働時間ぐらい確認させてもらいたいんだけど……。いつもこの時間ならこれなくもないけど、たとえば授業時間と重なったら行きようがないわけだし……。


「あの、島津さん、お力を貸していただけませんか……?」


 姫が手を胸の前で組んで、上目づかいで俺を見つめる。


 正直言って、こんなに美しい人がこの世界にいるのだろうかとすら思った。

 これはきっと、容姿的な理由によるものだけじゃない。カコ姫の瞳はとても澄んでいる。この人は心も、この湧き水でできた池みたいに透き通っているんだ。だから、女神のように美しいと感じるんだ。


「わかりました」


 とても断る言葉なんて出てこなかった。


「ありがとうございます、島津さん!」


 ぱぁっと姫の顔が明るくなる。その表情もまた素晴らしく愛らしく魅力的だった。


「あの……護衛の時間教えていただけませんか? 俺は軍人じゃなくて学生ですし、出れない時間もあります。それと、まだまだ甘いところも多いですから、腕を磨くことにも時間をとらないといけません」


 俺が中途半端な実力しか持っていなければ、護衛の意味もない。だから、強くなる時間が確保できないのだったら、それはまずいのだ。

 本当は同意する前に言うべきだったのかもしれないけど、姫を悲しませるような言葉を言う勇気がなかった……。


 それにしても、この世界、アーシアにしても、サヨルさんにしても、カコ姫にしても、美女率が高すぎるんじゃないか? 遺伝子的な問題なのだろうか。


「それだったら、おそらく問題はないかと思います。時間は今日と同じぐらいのものですし、用が済めばわたくしもすぐに王城に戻って眠りにつきます」


 おそらく今が二十三時過ぎってところか。ならば、終わって、すぐに眠れば七時間睡眠は確保できるかな。


「わかりました。だったら、協力できるかと思います」


 でも、せっかくだから、俺も少しだけ要求をさせてもらおう。


「その代わり、俺からもお願いがあるのですが」

「おっしゃってください」

「姫が習得なさっている魔法の一部、差し支えのないものでけっこうですので、俺にも教えていただけないでしょうか? 俺が見たところ、姫は極めて有力な魔法使いであるようにしか見えませんので」


 どうせなら、俺もこの機会に成長させてもらいたい。


 俺は学生だ。学生はすべての時間を勉強に、成長に、充てるべきなのだ。


「そういうことでしたら、構いませんよ。わたくしは教育の専門家ではありませんが、それでよろしければ」


「我々も何か教えてやろうか」

「ふん。お前が教えられることなどなかろう」


 なんか勝手に姉妹がケンカしそうだが、こっちは無視しよう……。


「あと、この護衛の話は他言無用でお願いいたしますね。まだ、どこに敵が混じっているか把握できていませんから」

「はい、それはもちろん。あっ、すいません、一人だけ例外を作ってほしい人がいるんです……」


 俺は赤ペン精霊アーシアの名前を出した。


 アーシアに伝えたかったというより、アーシアに一切の隠し事をしたくなかったのだ。


「ええ。けっこうですよ」

 笑顔で姫は了承してくれた。

「だって、今のアーシアさんについて語る島津さんのお顔はすごく真剣でしたから。島津さんがそこまで心を込められる方が悪心を持っているとは思えません」


 こうして、俺に秘密の警護任務が増えたのだった。

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