表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/119

29 姫との出会い

変な双子が増えました。

「では、この男は何者なのでしょうか?」

「服装からして、教官助手のようですが」


 侍女たちが聞いてくる。あらためて見ると、二人ともよく似ている。リボンの色が黄色と青なのを除くと、同じようなポニーテールだし。


「自殺者だと勘違いされて止められました。事故のようなものです。魔法自体はおおかた形になっていますから、もう出ます」


「「はっ!」」


 侍女二人はすぐにタオルを用意して、池から上がった姫を拭き始めた。

 しばらく見ると殺されかねない状態が続くと思うので、ずっと真逆を向いていた。俺もずぶぬれで風邪をひきそうだけど、しょうがない。風邪ですむならありがたいと思おう。


「それで、この男に見られたとして、いかがいたしましょう?」

「ここは口封じとして殺しておきましょうか?」


 なんか、物騒な話をしているな……。


「こちらの都合が悪いというだけで人を殺すような者が、国を統べることなどできません。説明をしたうえで、黙っておいてもらうようお願いいたしましょう」


「さすが、姫!」

「やはり姫は偉大なお方です!」


 こいつらも、かなり調子がいいな……。


「それに、死のうとしてると誤解して、池に飛び込んできた方ですよ。とても心根の優しい、人格的にも信頼できる方です。怪しむ要素もありません」


 よかった。そこは評価してもらえるらしい。

 抱きついてきた変態と思われるか、命を助けようとした善人と思われるか、雲泥の差がある。



「服は整えました。もう、こちらを向いていただいてけっこうですよ」


 その声に振り返ると、たしかに姫らしい豪奢なドレスを着飾った女の子がそこにいた。


「う、美しい……」


 思わず、そう口走ってしまった。


「ありがとうございます。おもねりの心が見えない言葉はうれしいものですね」


 姫は、ふふふっと微笑んだ。

 テレビの中だけで見たことのある美少女アイドルが眼前に出てきたようなインパクトがあった。


「あちらに四阿あずまやがあって、ベンチも置いています。そこでお話をいたしましょう」


 姫と侍女が歩いていくので、俺もそちらについていく。水をしたたらせながら。


「あなた、みっともないですし、これを使いなさい」

 侍女の一人がタオルを出してきた。

「あっ、ありがとう。お返しします」

「返さなくてけっこうです。男が使ったタオルを姫に使うわけにはいかないですから」


 なかなかきつい言葉だけど、それもそうか。姫だもんな。


 たしかに四阿には三人は横に座れるベンチが向かい合って置かれていた。

 中心に姫が座り、両サイドに侍女が立つ。俺はその向かいに座った。


「まず、こちらから自己紹介をいたしましょうか。といっても、わたくし、カコのことはご存じでしょうから、侍女二人を紹介いたしますね」


「タクラジュだ」と黄色のリボンをつけてるほうが言った。

「イマージュだ」と青のリボンをつけてるほうが続く。


「二人はどちらも過去に異世界から召喚され、学校の課程を経て、わたくしの護衛に配属されました。どちらも立派な魔法剣士です」


 魔法剣士……。この二人が……。

 そういえば、この目で魔法剣士を見るのは初めてだ。


「あなたのお名前も聞かせていただけますか?」

「はい、異世界からやってきた生徒で教官助手をしている島津時介と申します。先ほどはご無礼をいたしました」


 その名前を聞いた侍女含めた三人が驚いたような顔になった。


「そうでしたか……。島津さん、あなたの名前はよく知っています。学校が始まって以来の天才だとか」

「いや、それは盛り過ぎだと思いますが……」

 謙虚が美徳の日本人なので「そうです、俺が天才です」とはさすがに言えない。それに学校の中で優秀でも戦争で活躍してきたわけでも何でもないのだし。


「ですが、魔法を習い始めて数か月でもう無詠唱でかなりの魔法が使えるとは伺っています」

 姫様が耳ざといのか、情報が漏れるのがけっこう早いのかどっちだろうか。


「それは事実ですが、その……悪漢に襲われた時に偶発的に手に入ったものですから……」


「百人のうち九十九人は襲われてもそんなことにはなりませんよ。島津さんのような有名人に出会えて光栄です」


「姫様に有名人と言われるのも変な感じですが……。それで、姫様は、あそこで何を……」


 ずっと俺を持ち上げられても話が進まないので、こっちから切り出した。


「あれは……魔法を使っていたんです」

 その言葉にはとくに意外性は感じなかった。少なくとも、ただの沐浴なら姫様なんだし、水を引っ張ってくればいい。


「エルドラードという魔法がありまして、それを使っていたんです。水の中で行うほうが範囲が広がりやすいので」


「水の中でのほうが広がる? それって、かなり特殊な魔法でしょうか」


 少なくとも、俺は聞いたこともない。


「あの、姫様、その魔法はあまり口外なされるべきでは……」

 黄色のリボンをつけた、タクラジュのほうが懸念を示した。


「構いません。そもそも、それを話さなければ理解もしていただけないでしょう」


「まったくだ。タクラジュ、お前はそんなこともわからんのか。アホか」

 イマージュのほうが辛辣なことを言った。

「お前こそアホだ! 学校での総合成績はこちらのほうが上だった!」

 タクラジュがすぐ言い返す。


「なら、魔法剣士に選ばれるのが決まったのはこっちが三日先だ!」

 イマージュも応酬する。

「ふん! 叙任されたのは同日だったから、イーブンだ! バカ!」

「バカと言うほうがバカだ! バカ、バカ、バカ!」

「じゃあ、お前もバカだし、しかもそんなに回数重ねてるからものすごくバカではないか! バカバカバカバカバカバカ!」

「何を言うか、カバみたいな顔をしおって!」

「お前こそ、カバみたいだぞ!」


 ちなみに俺には二人とも同じ顔に見えるが……。


「こほん、二人とも、お静かに」

「「はっ! 申し訳ありません、姫様!」」


 そこだけぴたりと声が合った。


 何なんだ、こいつら……。


「タクラジュとイマージュは双子なのです。ですが、幼い頃からとても仲が悪かったそうです」


 姫様が解説してくれた。全部、姫様に言ってもらうほうが早いな……。


「姫様、イマージュが自分が姉だとか言い張るからケンカになるだけです。姉はこちらなのに」

「姫様、タクラジュが言ってることは大嘘です。姉はこのイマージュですから!」


 ああ、ケンカしてる理由だいたいわかった……。

 どっちが姉かで、二人とも譲らないんだな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ