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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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28 自殺未遂!?

実質的な新キャラが登場します。

 部屋に戻る途中、共用スペースで勉強中だった高砂さんに三十分ほど付き合って、復習の手伝いをした。

 高砂さんはツインテールが印象的な快活な女子だ。真面目系グループともリア充系グループとも仲がよくて、そのあたりにコミュ力の高さを感じさせる。


「あ~、なるほどっ! やっぱり島津先生は教え方が上手だね~! 理奈、感激しちゃうよ!」

「そんなおおげさな。高砂さんの理解力が早いから、なるほどって思えるんだよ」

「あっ、前にも言ったでしょ。理奈でいいって」

「り、理奈さん……」

「その理奈さんっていうのも、姉御キャラみたいで変だし、理奈でいいよ」

「……理奈」

「うん、そうそう!」


 まだクラスメイトの女子を下の名前で呼ぶのは抵抗あるな。うれしくはあるんだけど、上手く立ち回らないと男子の敵をクラスで作りかねないし。とくに、高砂さん……理奈を狙ってる人、多そうだし。


 けど、彼女の人付き合いが多いのがコミュ力だけじゃないってことは勉強を教えていてわかった。

 理奈はすごく真面目で熱心なのだ。共用スペースで勉強を教えてるのも彼女がそこで自習していたからだ。

 この子なら信頼できるということを、きっとほかの女子も感じるんだろう。だから、自然と人の輪が増えてくるんだ。


「島津先生、ありがとね! おかげで今日の復習が予定より一時間近く早く終わったよ!」

「うん。勉強も大事だけど、睡眠もちゃんと取ってね。授業中に寝ると意味ないからね」

 高校生って羽目外して遅くまで起きる奴も多いけど、ここでそれで授業についていけなくなると、死活問題だからな。

「ほんとに島津先生、先生みたいなことを言いますな~。でも、傾聴に値するお言葉だと思うよ! しっかり寝るから!」


 この調子だと、理奈も立派な魔法使いになれそうだな。

 魔法にも才能ってものはあるんだけど、そもそもマナに恵まれてるからこの世界に召喚された俺達は全員その時点で才能を持っているのだ。だからこそ、そこから先は努力でかなりの部分が決まる。


 部屋に戻ったら、すぐに寮の大浴場に入った。ちょっと遅い時間だったからか、すいていた。

 魔法の練習でありがたいところは汗をかかないところだ。これがスポーツの練習だと寝る前にやったらまた汗ダクになる。


 ひとっ風呂浴びたら、夜風を受けながら寮の外をぶらつくことにした。散歩中に体が冷めてきたら、魔法の練習を少しして寝るつもりだった。


 せっかくだし、城の庭園を一周して戻ろうかな。

 演習場の先には大きな庭園がある。植物園みたいなのも横に引っ付いているが、なかでも中心部に湧き水でできているかなりのサイズの池があるのだ。


 湧き水があるから庭園を造ったというより、湧き水があるところに城を置いたというほうが正確らしい。湧き水があれば長く籠城しても水の便で苦しめられることはないからな。

 普段は城で働く者の憩いの場なのだが、あくまでも軍事的な目的を持っている場所なのだ。


 その夜は月もよく出ていて、夜とはいえ、けっこう明るかった。この世界の月は地球のものより、光が強く感じる。月自体が発光してるわけではないだろうから、光というのは意味として厳密には変かもしれないが。


 そして、ぶらぶらと池の周囲を歩いていたら、奥に人の姿が見えた。


 誰かが池に体をつけているのだ。


 まさか、入水自殺?


 俺はあわててそこに走っていった。そして、池の中に飛び込む。


 水のはずなのに、全然冷たいと感じなかった。温水プールに飛び込んだような感覚を受けた。まさか、湧き水って温泉なのか? でも、あったかくても死ぬには問題ないよな。


「何があったかわからないけど、ちょっと待って!」


 その腕をつかむ。すごく細い腕だった。

 それで、その人物が俺と同年齢ぐらいの女の子で、しかも一糸身にまとってない姿だということをようやく理解した。

 でも、今はそれどころじゃない。


「まだ若いし、死ぬようなことなんて、そうそうないって! やり直せるって! もう少しだけ考え直して!」

「は、離してください!」

「だって、入水自殺しようとしてるじゃないか! 離せない!」

「自殺なんて考えてません!」


「…………え?」


 夜に水に入っているから、てっきり自殺だと……。


「あの、腕を離してください……ませんか……」


「あっ、すいません!」


 俺はすぐに手を離した。これじゃ、かえってこっちが犯罪に及ぼうとしてたみたいだ。


 そして、俺は改めて、その女の子を見つめた。

 どこかで見たことがある。しかも、この世界に来てから、かなりすぐに……。


「まさか…………姫のカコ様?」


「そうです。カコです……」


 か細い声でつぶやいた後、姫は両腕で自分の体を隠した。


「は、裸、見ないでください……」


「あっ、すいません……!」


 俺はあわてて目をそらした。目だけだと怪しまれそうなので、体ごと横に向けた。


 ずっと裸を見てしまっていた……。お姫様だから当然かもしれないけど、傷一つない、透き通るような白い肌だった……。まるで池に住む精霊みたいだ。


 というか、これ、姫に乱暴を働いたとみなされたら、もしかしなくても死刑なのでは……。


「あなたの口ぶりだと、自殺だと勘違いされたようですね……。悪気があったわけではないようですし、今回のことは不問にいたします」


 どうやら死刑は免れたようだ。俺は姫に向かって頭を下げる。


「あ、ありがとうございます!」


「だから、こっちは見ないでください!」

「ほんとだ……すいません!」

 どうしても礼を言う時は無意識に相手のほうを向こうとしてしまう。


「あの、それで……姫様はどうして、夜にこんな池の中に……?」


 自殺じゃないというのは事実としても、理由がさっぱりわからなかった。


「その説明は服を着てから行いたいですね」


「それもそうですよね!」


 たしかに裸の女の子と長話するの、おかしいよな。


 ――と、そこにばたばたと侍女らしき二人の女性がやってきた。


「姫! 賊でしょうか! ――その男が賊ですか!」

「すいません! 庭の奥を監視していて遅れました! ――ええい、賊め! 姫に狼藉を働いたか!」


 侍女とはいえ、二人とも剣を抜いてきた。

 しかも、すぐ首の横に剣が来て止まる……。一歩間違うと斬り殺される……。


「違います。剣をおさめなさい」


 姫の一言でひとまず命拾いした。


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