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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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24 休日の過ごし方

 部屋に戻ったら、すぐにアーシアが出てきた。

 俺も早く事情を説明しておこうと思っていたからちょうどよかった。


「あの、なんで、夜に帰ってこられなかったんですか? 何か事件に巻き込まれでもしたんですか……?」

 火傷はだいたい回復してもらったけど、状況だけでも異様ってことはすぐに想像がつくからな。


「その心配の通りでした。今から話します」


 俺の話を聞いている間、アーシアは「なんてひどい人達なんでしょう!」とか「時介さん、つらかったですね……」とか「まさか、無詠唱がそんなところで使えるなんて! おめでとうございます!」とか、表情がころころ変わった。


「はい、無詠唱魔法を使えたのは本当に収穫でした。漢字を利用するのがこんなに効果があるなんて思ってもなかったし」

「ですね。そんな表意文字はこの世界にはないので、私も計算外でした。こっちは現在使われているのは大半が表音文字ですからね」


 たしかに中世ヨーロッパも当然アルファベットっていう表音文字だったからな。この異世界も表音文字を使っている。


「それに時介さんが長らく使っている文字でなければ、存在を知っていてもそこまで意識を高めることはできないでしょうし」


 まさに俺にしかできない方法だったっていうことか。


「勉強って人によって必勝法も変わってくるものですからね。時介さんは自分なりの必勝法をしっかりと見つけたんですよ。おめでとうございます!」

 ぽんぽんとアーシアが俺の頭に手を置いて撫でてくれる。すごくいろんなことがあったからか、それぐらいであたふたするようなことはなかった。


「それと、これも話しておいたほうがいいかなと思うんですけど」

 ヤムサックに赤ペン精霊の存在が知られていることを告げた。


「ああ、なるほど。まあ、別にいいのではないでしょうか。クラスメイトに知られるとズルだとか言う人もいるかもしれないですけど」

 アーシアはとくに驚いた様子もないようだった。


「それに、いくら私でも時介さんほどの劇的な変化は狙って起こせませんからね。時介さんは自分を誇っていいんですよ」


「それはほかの人にも言われました。まあ、まだまだやらないといけないこともあるし、偉そうにしてる暇もないんで、このままやりますね」


 そう、無詠唱魔法をもっと実践しないといけないのだ。


「先生、今日、授業は休んでいい日なんで、無詠唱の練習を見てもらえませんか?」


「わかりました! では、場所を移動しましょうか! ちなみにレヴィテーションも無詠唱でできますか?」


 レヴィテーションはすでに無詠唱でも使ったぐらいだったので、難なくできた。

 そして、演習場まで俺は無事に空を飛んでたどりついた。


 基本的にこれまで詠唱アリでは問題なく使えていた魔法を順番に無詠唱でやってみる、それを一つずつ試していく。


 やってみた結果から言うと、攻撃系は無詠唱も比較的簡単に成功して、補助系はあまり上手くいかないものも多かった。やって一時間や二時間で判断するのは早すぎるかもしれないが。


「時介さんもここはこうなりますね。補助系の魔法ほど無詠唱でも難しくなるんですよ。理由ははっきりしていて、補助系のほうがイメージを固めるのがより厄介だからです」


「ああ、わかります。俺も補助系だと漢字をどうしようかって思いますし……」


 炎を出すなら炎、氷を出すなら氷と、漢字をすぐに選べる。

 でも、魔法の威力を低下させるウィークネスだと「弱体化」になるのか、「魔法威力低減」にしたほうがいいのかよくわからない。

 そもそも弱体化とか低減とかがある種の抽象概念で、ぼんやりしている。道を歩いていたら、弱体化が落ちているなんてことはない。


 あと、傾向として漢字の数が少ないほうが上手くいく気もする。それもわからなくはない。意識を集中させる時に、極端な話、漢字が五十文字も頭に浮かんでたらどこに集中させていいかよくわからない。


 たとえば「魔法威力低減」という六文字のうち、「法」に意識を集中させても無意味だろう。だって「法」という漢字が持つ意味に自分が魔法で実行したいような要素は存在しないからだ。


 となると、一字で「魔法威力低減」という意味を持つ漢字があればいいんだけど、そんなのあるわけないよな。


 そのあたりのことをアーシアにも相談した。無詠唱なんて高度なことを相談できるのはアーシアだけだ。もし、クラスメイトに言っても、調子に乗っている奴にしか見えないだろうし。


「そうですねえ、一度『弱』とか『減』とかいった漢字一文字でやれるか実験してみてはいかがですか? 文字数は大幅に減るので、補助系でも無詠唱ができる糸口になるかもしれません」


「意図はわかります。ですが……」


 ちょっと懸念点があった。


「弱くする魔法も減らす魔法なんてきっと無数にあると思うんですが、一度、『弱』で魔法が使えたら、たとえば攻撃力を下げる魔法を無詠唱で使おうとした時に困らないですか?」


 そういう魔法を使いたいのにウィークネスしか使えないということになったら、まずい。似た意味の漢字を無数に知っていれば話は違うかもしれないが、漢和辞典なんてこの世界にあるわけもないし。


「時介さん、じゃあ、色をつけてみましょう」

「色?」


「そうです。その文字に色をつけるんです。たとえば、ウィークネスなら赤色の『弱』、攻撃力を下げる魔法なら青い『弱』みたいな感じで」


 たしかにカラーバリエーションなら有名どころの色だけでも赤・青・黄・緑・紫・白・黒・金・銀とけっこう数がある。これなら、埋まってしまって使えないということもまずありえないだろう。


 あと、イメージが色がつくことでより具体的になる。


 たしかに現実世界で色のないものって存在しないものな。透明に見えるものもあるけど、透明だって色の一つだと言えばそうだ。


「アーシア先生、それってかなり上手くいきそうです! 早速やってみます!」


 ひとまずウィークネスは黒の「弱」にした。魔法の効果的に敵にマイナスイメージを与える印象があったからだ。


 補助系魔法はそもそも発動がわかりにくいのだが――


「時介さん、今、成功したと思いますよ!」


 十五分後、アーシアがそう言ってくれた。


「やった! 色を付ける方法、早速効果があった!」


 そこから先は速かった。

 俺はまだ詠唱付きでも使ったことがない補助系魔法の一部も、無詠唱で唱えられたのだ。


 色を脳内で付けることで具体化がよりできたらしい。


 まだ、詠唱アリで覚えるのよりは難易度が高いが、無詠唱で覚えるのに慣れたら、これ、ほとんどの魔法を使えるようになるんじゃないか?

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