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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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23 事件の後片付け

けっこう、先輩とフラグ立ってきました。

 前に一緒に練習した時もそうだったけど、サヨルさんはいつも俺の頑張り自体を褒めてくれる。


 俺はそれだけで報われた気になる。


「本当に怖かったです。どうしよう、どうしようって思いました。もしかしたら、ほとんど諦めかけてたのかもしれません。それでも、どうにか生還できました」


「それが君の一番の才能だよ」


 俺が飲んで減ったコップにまたサヨルさんはお茶を入れてくれる。


「君はもちろん魔法に恵まれてるかもしれない。異世界から来てマナも多いかもしれない。でも、ちゃんと頑張れること、それが君の才能」


「ありがとうございます」


 ちょっと、涙が出てきた。

 殺されそうになって、そこから抜け出して、安全が確保されて、それから不意にこんなことを言われたせいだ。


「恐怖っていうのは少し遅れてやってくるからね。怖いことを思い出したら泣いてもいいんだよ。ここで泣いても二人きりの秘密ってことになるでしょ」


 サヨルさんは席を立つと、俺の後ろに立って、ぽんぽんと肩に手を載せた。


「俺、天才だとか超人だとかクラスで言われてますけど、ごく普通の発想で生きてる人間なんです。だけど、泣き言も愚痴も人並みに言える場所がなくて……」


「だから、ここで好きなだけ言えばいいよ。私が先輩面できるのって、こんなことぐらいだし」


 やっぱり、サヨルさんって立派な先輩だなと心から思った。

 こんなに後輩である俺の支えになってくれてるんだから。


 俺はこれまで自分が強くなろう、強くなろうとしてきた。それは何も間違ってないけど、まだその力を使って具体的に誰かを守ることまではできていなかった。


 誰かを守るために、いつかこの力を使ってやろう。

 きっと神剣ゼミも、そんな心技体っていうか、心まで強い奴を育てるためのカリキュラムなはずだし。


「先輩って本当に偉人というか、聖人ですね」

「今頃気付いた?」

 冗談のように、サヨルさんは笑った。


 どうしよう……。サヨルさんと今、瞬間最大風速で結婚したすぎるぞ。

 アーシアに告白まがいのことをしてから、そんなに時間も経ってないのに尻軽にもほどがあるって思うけど、こんなこと言われたら惚れそうになっても、そこはしょうがないだろう。


 あと、恋愛感情とか色欲とかとも、また違うんだ。本当に結婚したい欲なんだ。

 こんな人と家庭を持てたら絶対に幸せだろうってわかるっていうか。


「今日はまだ事件の後始末が長引きそうだから、島津君、仮眠したほうがいいよ。体力的にかなり消耗してるでしょ」

 たしかに、相当殴ったり蹴られたりしているせいか、体に熱がこもっている気がしている。そもそも、今、深夜だろうしな。このまま起きていたら明日に差し支える。


「じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか? ヤムサック教官が犯人の事情聴取まですると考えたら、まだ時間かかりそうですし」


「うん、そうしなさい。あっちの部屋の、私のベッドを貸してあげる」


 ベッドと言われて、ちょっと変な間が空いた。

 しょうがない。年頃の男女二人しか、この空間にいないのだから。


「い、言っておくけど、一緒に寝たりはしないからね! わわわ私は起きて、教官の連絡待ってるから! 二人とも寝てたら呼び出しとかあった時に対応できないでしょ……」

「で、ですよね! すいません! 変な意図とかは何もないですから!」

「わかってるから! わざわざ言わないでいいから!」


 サヨルさんのベッドに入ったけど、しばらくドキドキして眠るどころではなかった。

 なんか、このベッド、いい香りがするし。香料でも焚き染めてるのかもしれない。

 当たり前だけど、年頃の女性のベッドで眠るなんて経験、ないからな……。こんなことは神剣ゼミでも絶対に習わないことだ。


 それでも疲労しているのは事実だったから、じきに眠りについた。


 一時間ほど眠っていた。サヨルさんにヤムサックが来たと起こされた。説明することがあるらしい。


「島津、君に危害を加えた生徒四人を探し出して、事情聴取をしたところ、全員罪状を認めた。ケガも大きかったし、その理由を隠すこともできないと思ったんだろう」


「ちなみに、全員生きてはいたんですかね……?」

 火傷は人の命を簡単に奪うからな。意識がはっきりしていても火傷が元でそのまま死んでしまうことすらあるぐらいだ。


「もし、そのままにしていれば死んでいたかもしれないが、回復させた。心配するな。あと、彼らもこのままでは助からないかもと思って、余計に包み隠さずしゃべったところもある」


 俺のほうが一方的に襲ったとウソをつくことも俺が縛られていた以上、無理だしな。あいつらが証拠隠滅をはかれるような特殊な魔法なんて使えるわけないし、逃げ道はないと考えたか。


「犯人が罪を認めたので、君のケガを証拠として残す必要もなくなった。今から聖職者に回復してもらえ。あと、明日――というか、今日か、授業は休んでいい」


「わかりました。ありがとうございます」


 一日ぐらい休んでも問題ないだろうし、そうさせてもらおう。


「あの、ちなみにあいつらの処遇はどうなるんですかね?」

 厳罰を望む気まではないが、また教室で顔をあわせると明らかに気まずいからな。


「彼らが行ったことは集団での暴行だ。全員退学のうえ、王城の外に放り出す」


 思っていた以上に重い罪だった。


「多少の金は出してやるが、それ以上の関わりは一切行わない。ここまで悪質なことをした者が人格を入れ替えるとも思えないしな。いくら能力があったとしても軍などで働いてもらうことは難しい」


 たしかに条件次第で平気で味方を売ったりしそうな奴と作戦を行うことなんてできないか。


 身から出たサビってやつだな。他人を理不尽に傷つけるならそれ相応のリスクを背負わないといけないんだ。


「ああ、それと、君は今後も自主的に修練に励んでくれ。クラス単位での教育ではまったく追いつかない」

「わかりました。せっかくなので無詠唱も活用できるようにしてみようと思います」


「あとな、これはたんにもしかしてと思って言うだけだし、事実だからといって何の問題もないのだが」

 ヤムサックは変な前置きをした。

「君は赤ペン精霊に教育を受けてないか?」


「えっ…………」


 そうですとは答えなかったが、この態度だと図星でしたと言ってるようなものだな……。


「古いマナペンに稀にそういうものが宿っていることがあってな、支給するものの中にもそれがあるとかいう話は聞いたことがある」


「そっか、教官も知ってたんですね……」

「といっても、精霊は邪悪な使用者の前には姿を現さないし、精霊がいても成績がぱっとしないこともある。入熟した人間がすべてよい成績を収めるとは限らんだろ」

「たしかに……」


「だから、仮に精霊がいたとしても、君の才能だ。誇っていい。だいたい、精霊だってこんなにすぐに無詠唱ができる指導はやれんはずだ」


 たしかに、無詠唱も、どっちかというと俺がアーシアに自慢できるような成果だもんな。


 俺はそのあと、聖職者の人に回復魔法リキュアをかけてもらって、自室に帰った。


 もう、すっかり空が明るみはじめていた。

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