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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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10 最初から特別扱い

日間12位ありがとうございます! これからも努力してどんどん更新します!

 六週目の最終日。

 いよいよ、中間テストがある。


 といっても、日本での中間テストみたいに科目数が多くはないから、まだマシだ。実質、魔法座学というやつ、一つだけだ。その分、授業スピードは速いので、日本の科目の中間と期末の両方の範囲をさらに超えたぐらいはあるが。


 さすがにこの日はみんな気分が重いらしく、教室も静かだった。

 なにせ、これの成績次第では国から報奨が出ることが決まっているのだ。


 これまでも週に五千ゴールド、だいたい五千円が小遣いとして与えられていた。報奨が出ると、次のテストによる結果までこれが倍になるという。


 週に一万って月四万円の小遣いだ。バイトでもしてない限り、不可能な額である。

 これだけでも努力をするのに十分すぎるものだろう。


 それに日本だと数学の成績が悪くても、たいていの場合、就職先でその知識は使わなくてもやっていけるが、この世界では魔法がまったく使えないのはかなりリスキーだ。


 もちろん、すでに剣士のほうに方向性を定めている男子もいることはいるが、たいていはそんな思い切った決断はまだできずにいるはずだ。


 そもそも、剣士なんて戦死のリスクも高い職業だし、気楽に選んでいいものじゃないよな。ものすごく剣技に素質があるならいいけど、魔法使いが難しいから剣士にしますなんていうノリじゃまずい。


 そんな独特の緊張感で包まれている教室だったが、俺はかなり落ち着いていた。


 一人だけ模擬試験をやってるわけだし、これでガチガチに固まってるほうが変だ。


 ヤムサックが全員の机に裏返したプリント三枚を置いていく。


「解答用紙は一枚、問題用紙が二枚だ。はじめてよしと言うまで裏返しておくように。試験時間は一時間とする」


 限りなく、日本の高校のテストと同じだな。


 そして、テスト開始。


 おっ! すらすら解ける!


 問題は全体的に模擬試験でやったものより簡単だ。

 模擬試験というのは本番より難しく作るから当然ではあるが。



 最初の十分でほぼ勝ったなと思った。

 まったく、手が止まらないのだ。答えも確信を持って書ける。出題者がどういう意図でこの問題を作ったかすらわかるのだ。


 全部解き終わった時点で、試験時間はまだ半分ぐらい余っていた。

 ゆっくりと答え合わせを自分なりにして、あとは終了を待つ。


 ラスト直前までマナペンを走らせる手の音が聞こえるから、みんな手こずってるんだろうな。


「よし、やめ!」


 ヤムサックの声が響いた。


 そのあと、剣技の実習があった。といっても、テスト直後だから体を動かせということで王城の敷地を走らされただけだったが。


 そして教室に戻ってくると、成績表がまた貼り出されている。


一位 島津時介 98点


 よし、無事に一位になれたな。


 これでアーシアに勝利報告ができるぞ。


 なお、以前に俺にケンカを売ってきた亀山は64点だった。すごく悪いわけではないが、威張れる点数でもないな。


「ら、来週からやる実習で実力見せないと一緒だからな!」


 いかにも負け犬の遠吠えみたいなことを亀山は言った。それ、自分の箔が落ちるから言うのやめたほうがいいと思うぞ……。


 それに、むしろ、魔法実習こそ、俺の実力を試す場なのだ。


 座学での範囲をはるかに超えて、俺は魔法を習得していた。

 アーシアと、俺に才能があったおかげだ。



 そして、魔法実習の当日。


 俺たちは演習場に連れていかれた。

 これまで俺がずっと夜にアーシアと練習をしていた場所だ。


 そこに木の板が何枚も地面に突き立てられている。


 いつものヤムサックだけでなくて、もう一人若い女性のサヨルという人も助手としてやってきていた。


「初めまして、助手のサヨルです。魔法は人間の体と違って制御が難しい場合があります。そういう不慮の事態に対処するのが主な役目です」


 少し事務的で冷たい印象だが、クールビューティーという印象で、男子のウケはよいようだ。

 銀色の髪に白いローブを着ているので、なんとなく氷の魔法に強いように感じる。


「もちろん、指導もしていきますけど、ヤムサック教官の言葉を聞いてもらったほうがいいかなと思います。魔導士は人によって癖があるのでオーソドックスな教え方ができる人のほうがいいので」


 サヨルさんの話をヤムサックが引き継いだ。


「今日はファイアの魔法を練習する。板は魔法で燃やすことを前提にしたものだ。自分の板を燃やし尽くせたものから、この授業は終わりとする。火をぶつけるだけでは燃え広がる前にたいてい消えてしまうからな。意外と時間がかかるぞ」


 そっか、普通はそれぐらい時間がかかるのか。


 俺は自分の前に割り当てられた板の前で詠唱を行う。


「焔よ我が指先にカンテラの如く灯るがよい――ファイアッ!」


 一瞬で激しい炎が板を焼き尽くした。

 ファイアは初歩的な魔法だから、威力が強くてもこんなものだな。


「えっ!? なんだ、今の!」

「島津、もうやったのか……」

「あんな火柱みたいなのが立つものなの……」


 ちょっと目立ちすぎたかな……。けど、こんなのちまちまやってもしょうがないからな……。


 すぐにヤムサックがこちらのほうにやってきた。


「島津、お前、これぐらいのことはもうマスターしているのか……?」


「自主的に練習してまして、炎関係の魔法ならフレイム、ファイアボール、ブレイズやメテオ、パイロキネシスあたりまでは」


 ヤムサックは頭を抱えた。

 ある意味では俺って問題児なんだろうな。


「パイロキネシスか……。なあ、サヨル、お前は使えるか?」

「使えはしますけど、コントロールが大変なので実戦用というほどでは……」


 パイロキネシスは複数の場所で発火を起こしていく魔法だ。同時にいくつも炎を出すので、精神集中が難しい。


「わかった……。もう、この実習をやる意味がないな……。サヨル、お前が付きっ切りで面倒を見てやってくれ」


「わかりました」

 少々、困惑気味だったようだけど、サヨルさんはうなずいた。


「これは次回から助手の人数を増やさなばならんな……」


 こうして俺はいきなり特別扱いということになってしまった。


「うわ、美人先生と個人授業かよ……うらやましい」

 そんな声が聞こえてきた。

 しかも、ちゃんとした魔法使いとマンツーマンでやれるのは悪くはないな。


 一方、移動の際にちらっと亀山と目があったが、茫然とした顔をしていた。

 あれは俺が出した炎を見たんだな。戦意喪失って感じだった。


 多分、これでやっかんでこられることも、もうないだろう。


次回は夜の更新予定です!

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