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新たな仲間はスーパーエリート

 池袋警察署は、池袋駅から徒歩5分ほどの場所に位置している。隣には、メトロポリタンホテルがある。ホテルは数年前に完全リニューアルされており、昔ながらの池袋警察署とのコントラストが著しい。

 なんだか警察権力ごと旧世代の遺産と断じられているようで、いい気分はしない。

 ホテルを眺めながら、署に入ると、なんだか時代に逆行している気分になってくる。

 そのことを以前、部長に話すと、

「実際そうじゃないかアナログ刑事(デカ)

 と笑われたことをよく覚えている。

 そんな部長がデスクで報告書に目を通していた。

「戻りました」

「ごくろう。どうだった」

 部長が老眼鏡の下の鋭い眼光をむける。威嚇しているようだった。退官を間近に控えた部長の若かったころを思い出させた。

 部長は、昔、部下にも犯人にも鬼のように厳しい態度で臨むことと、(たいら)正太郎という名前から「鬼平おにへい」と呼ばれていたらしい。もっとも本人の名前の由来にもなった池波正太郎の「鬼平犯科帳」からもとられているそうだが、その作品のことを鯨岡は知らないのでよくわからない。なんでも、昭和に流行った大衆向けの時代小説だそうだが。

「どうやら犯人は、最先端の科学技術によってワープができるようです」

「バカいえ。第一発見者が消えたそうだな」

「そうそう、こいつもワープの使い手で――」

「とりあえず聞き込みだな」

 部長は鯨岡の軽口を無視。鬼平時代ならば、すでに張り手1発くらいもらっていたかもしれない。部長は淡々と、今後の捜査方針について言及する。

「合同捜査本部が設置される。本庁からもでばってくる」

「これだけ我が物顔で帝都を荒らされると、面子も丸つぶれですからね」

 いいながら、鯨岡はまったくくだらないとも思う。面子や体面にこだわった結果、この国の警察はいったいどれだけ重大事件の犯人を取り逃がしてきたのだろう。

「バカらしいと思うか」

 表情にでていたのか。部長がいう。

「ええ。唾棄すべき風潮だと思いますよ」

「まあ、そういうな。プライドがあるからこそ、俺たちは全力で捜査ができる」

「給料だけじゃ、とうていわりに合いませんからね」

「まったくだ」

 と失笑。が、ポーカーフェイスに戻ってから、そのことで相談なのだが、と漏らした。

「相談? なんです。10歳の娘の誕生日プレゼントのことですか。『おジャ魔女どれみ』の人形とかどうでしょう」

「だとしても、だれがおまえに相談するか。そもそも、いまの子どもはおジャ魔女なんぞ知らん」

「お詳しいですね」

「ほっとけ――だが、おジャ魔女ではないが、上は例の魔法に頼る気ではあるようだ」

 魔法? そういえば、電話でそんなことをいっていた。

分析(アナリスク)とかいう物量作戦ですか」

 たしかそんなことを部長はいっていた――ような気がする。

 探るほど古い記憶ではないが、その手の話題に疎く、興味も持てないので、聞き流していた。畢竟、あいまいな記憶しかない。

「のネクスト・ステップだそうだ」

 おいおい。世間の流れについて行こうと近づいたら、2倍のスピードでぶっちぎられた気分だ。『イニシャルD』第1話かよ。豆腐屋はやすぎ。

「ステップねえ。踏み外さなきゃいいけど。で、具体的には現場レベルでなにがどう変わるのです」

「――新人が入る」

「新人? キャリアのエリート様が前線をかき乱すのは、別にいまに始まったことじゃあ――」

「そうじゃない。そうじゃないんだ」

 不審が顔にでていたのか、部長が慌てて否定する。

「それじゃあ、いったい――どういうことなんです」

 要領をえない。いつでも直截的なもの言いの部長にはめずらしいことだった。

「ひと言でいうぞ?」

「ええ。お願いします」

 ふだんの部長なら、そんな前置きはしない。その時点で、「ひと言」ではないも同然だ。知らず知らず、鯨岡はせかすような声音になっていた。

 だが、鯨岡は部長の躊躇のわけに深く納得することになる。

「――ロボットが仲間になる」

「……へっ?」

 なるほど。これは魔法だ。あるいは、「超」が何個もつくスーパーエリート。

 めまいがした。アイザック・アシモフでも読み直そうかな。


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