二話~究極の選択~
金髪、碧眼。彼女は急に現れた。
「ねえ。聞いてる?ねえってば!!」
『...え?何を?』
俺は自分が思っていた以上に混乱していたらしい。彼女から聞かされた話は正直突拍子もなかったからだ。
曰く、パンドラのハコには管理者がいるらしくそれはゲーム内の役持ちの一人であるハートの女王であるということ
ハートの女王は、パンドラのハコの核を守る役目を与えられた人工知能らしい。
今回の不具合はハートの女王が人工知能として長い年月をかけて蓄えた知識によりゲームをハッキングし支配したことが原因で、核を壊す以外にこれを解決する方法はないという
そして一番重要なのは、確かにゲーム内で食事をすれば飢えることはそうそう無いらしい。というのもゲーム内での時間と外の時間には差があり脳に直接リンクするこのゲームでは空腹という概念が存在しないらしい。ただそれは気休めで限界がある。人間である以上食事をしないことが長く続けばやはり支障をきたす
しかも、これだけ大きなゲームデータを完璧にハッキングするのはさすがに無理だったらしく色々な所に歪みが生じたらしい。
役持ち達は役目を放棄し好き放題で性格もねじまがってしまっているし、ゲーム内でのユーザー保護のプログラムが働かなくなっていると。
ユーザー保護プログラムとは、ゲーム内で死亡しそうになった場合又は死を強く意識した場合脳があまりにも強い刺激を受けて障害を起こさないようにダメージを軽減し強制的にログアウトさせるプログラムである。つまり、ゲーム内で致命傷を受けログアウトした場合、最悪脳に直接強い攻撃を受けるということだ。
アリスは、こういう時のための緊急破壊プログラムまあようは自爆ウイルスらしい。
『それで、何でその自爆ウイルスが初心者ユーザーの俺のところに?』
「ちょっと!なにその自爆ウイルスって!!やめてよね。私にはアリスって名前があるんだから!」
アリスは地団駄を踏みながら憤慨している。見た目も幼いが行動も幼いな。パンドラのハコが人気なのはこういう細かいところまで作られている所なのかもしれない。
『悪かったよ。で?そのアリスがなんで俺のところにきたんだよ。パッパと核を壊してこいよ』
「私だってそうしたいけど、ハートの女王のすぐ近くに私一人で行っても兵隊たちにやられちゃうでしょ。ハートの女王だって馬鹿じゃないの。自分の国だけじゃなくて周辺の町には監視をおいてるわよ。だから私は初心者ユーザーが一番最初に現れるここにいるわけ。ここは一番トランプの国から遠いし。雑魚にいちいち監視をつけてたらきりがないでしょ?でも、だからこそ目をつけられてない初心者ユーザーを引き連れて行こうと思ったんだけど...あなた一人みたいね」
顔に似合わず辛辣だな。雑魚って。
『いや、引き連れてって俺一人じゃ無理だって。他の人も待ったら?人数は多いほうがいいだろ。それに俺の友達も来てないし待ってたらくるだろ?』
俺一人で国と戦うなんて無理だろう。そもそもゲームなんてそうそうしないのに。
「無駄よ。ハートの女王がこれ以上ログイン出来ないようにデータを書き換えたもの。いくら待ってもここにはだれも来ない。多分あなたの友達もギリギリの時間差で弾かれたのね。だから来ない。貴方に残された選択肢は2つ。私と行くか、ここでのたれ死ぬか。」
かくして俺はどちらを選んでも死亡フラグが立っているとしか思えない2択を、凶悪な笑顔と共に突きつけられたのだった