JSTO創設の道
2013年10月11日午前10時
日本首都東京霞ヶ関首相公邸1階応接間
此処で伊部総理が麻田副総理を迎えて話しをしていた。
「世界は変わりましたな。」
麻田副総理の言葉に、伊部総理は大きく頷いた。
先日まで東南亜細亜諸国連合(ASEAN)首脳会議が開かれており、7日と8日はインドネシアでAPECが開かれていた。そこに伊部総理は出席した。プーロン大統領も出席しており、日露首脳会談が行われた。そしてASEANではプーロン大統領と金第1書記が特別参加し、日露朝三ヶ国首脳会談で発表されたJSTO設立に向けた説明が行われた。ASEAN諸国首脳は伊部総理とプーロン大統領・金第1書記の説明に、耳を傾けた。JSTOの目的が経済連携・安全保障に加え、対中包囲網と言う形であった為に好意的に受け入れられた。これにより11月1日にJSTO創設準備理事局が東京に設置される事が決定した。ASEAN諸国にしても世界第3位の経済大国とかつての超大国、そして朝鮮半島唯一の正統国家が味方になる事に旨みはあった。更に11月5日には帝国ホテルでJSTO創設準備会議が開かれる事となった。
「ASEAN諸国だけで無く、インドもJSTOに興味を持ってもらいました。」
伊部総理はそう呟いた。11月5日の会議には日露朝とASEAN諸国に留まらず、東南亜細亜の軍事大国インドも興味を示した。インドはJSTO創設準備会議の出席を表明し、更に日本の第5次防衛力整備計画を支持も表明し空母運用技術も提供すると表明した。空母運用技術についてはロシア連邦とタイも提供を表明しており、伊部総理の最終目的である『日本の真の独立』が実現性を帯びてきた。
「ASEAN諸国とインドを味方にすれば、JSTOは安泰になりますな。アメリカも無視出来ない経済同盟、軍事同盟が創設されるとなれば。」
「このJSTOと私の対応が、アメリカの南朝鮮引き揚げに繋がったのでしょう。」
伊部総理の言葉は驚きも含んでいた。伊部総理の言う通り、アメリカは南朝鮮から撤退した。アメリカ軍に限らず進出企業と大使館・領事館も総引き揚げとなった。
「TPPについてもアメリカの対応は驚きましたな。」
「まさかのTPP構想の白紙でしたからね。」
伊部総理の言葉は驚きが含まれていた。伊部総理の言う通り、アメリカはTPPを白紙撤回した。JSTO設立が現実味を帯びてきた現状、アメリカはその過程を見極める必要性が出て来た。そこでアメリカは経済TPPを白紙撤回し、東太平洋経済連携協定(EPP)構想を発表した。これにより交渉参加していたアメリカ・カナダ・メキシコ・ペルー・チリ・オーストラリア・ニュージーランドは東太平洋経済連携協定に、日本・ベトナム・ブルネイ・マレーシア・シンガポールは日本海条約機構に入る事になった。
「これでアメリカは一先ず、南朝鮮政策に距離を置いてくれました。後は竹島奪還を何時決行するかです。」
「確かに重要なのはその日ですな。」
伊部総理の言葉に、麻田副総理は腕を組んだ。
「どうせなら開戦記念日に実行したいですな。」
「開戦記念日に竹島を奪還する。確かにそれはいいですね。しかし国会承認に時間が掛かれば分かりません。」
「そうなれば前日の12月7日に防衛出動の承認を求めれば、良いかも知れません。国賊議員が騒いで時間が掛かりますから。」
「国賊議員とは、麻田副総理も上手い事を仰る。」
「ハハハ、いやいや偶々ですよ。」
2人の顔には笑顔しか無かった。