竹島奪還
午後12時
島根県竹島沖合い
此処に海上自衛隊の全護衛隊群が集結した。日本の威信を掛けた防衛出動である為に、海上自衛隊は総出撃し航空自衛隊も精鋭を築城基地に集結させ、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊も海上自衛隊の輸送艦と、民間から借用したフェリーで輸送していた。今回の有事に於いて、福岡の第4師団司令部に『統合部隊司令部』が設置された。此れにより海上自衛隊護衛艦隊と航空自衛隊・陸上自衛隊が指揮下に入った。
この竹島奪還作戦はロシア連邦と朝鮮共和国を筆頭にJSTO加盟予定国全てが支持を表明した。加盟予定国には台湾も名を連ねており、中国包囲網は文字通りとなった。
そして30分前にはアメリカ合衆国オグマ大統領も竹島奪還作戦の支持を表明した。更にオグマ大統領は伊部総理との電話会談で、南朝鮮が竹島以外に攻撃を仕掛けて来た場合には日米安全保障条約を発動させる、と明言した。伊部総理には朝鮮共和国の金第1書記が南朝鮮へ祖国統一の進攻を行うと、電話会談で表明されていた。此れにより南朝鮮の崩壊は決定的となった。
中国は日本の竹島奪還作戦に対して『韓国領の独島に対する侵略』として国連安全保障理事会の緊急召集を呼び掛けたが、アメリカ合衆国・イギリス・ロシア連邦・フランス共和国が拒否した為に召集される事は無かった。中国も米露に拒否される事は予想していたが、英仏に拒否される事は予想外であった為に慌てた。南朝鮮は八方塞がり、地理的にも政治的にも全てに於いて四面楚歌に陥った。
同時刻
首都東京市ヶ谷防衛省地下3階防衛指揮センター
防衛指揮センターは、防衛省に存在する秘匿施設である。自衛隊は有事・災害出動全てに於いてこの防衛指揮センターからの命令に従う。過去の朝鮮共和国のミサイル実験も東日本大震災への災害出動も、全てこの防衛指揮センターからの命令により自衛隊は活動していた。此処は核シェルターも兼ねており、あらゆる事態に対応出来るようになっている。
「総理、海上自衛隊と航空自衛隊が竹島へ攻撃を開始しました。」
「……」
大野寺防衛大臣の言葉に、伊部総理は無言で頷いた。
「戦況は優勢です。」
オペレーターが液晶画面を見つめながら呟いた。
伊部総理達が見つめる大型液晶画面にも同じ物が映し出されていた。
確かに戦況は優勢であった。自衛隊を示す青い点が竹島に近付くに従い、南朝鮮軍を示す赤い点は減っていった。
「現地のAWACSより連絡です。『南朝鮮から航空機20機急速接近中。F−15EJに迎撃を命令。』以上です。」
「南朝鮮の最後の足掻きですな。」
麻田副総理が笑いながら言った。最早勝利は見えている為、麻田副総理は笑顔が絶えない。
「普通科連隊が上陸を開始しました!!」
「おぉ〜〜!!」
オペレーターの言葉に、防衛指揮センターは歓声に包まれた。
「頑張ってくれ。」
伊部総理は力強く呟いた。
そして15分後、遂に待望の連絡が防衛指揮センターにもたらされた。
「現地の西部方面普通科連隊連隊長より連絡です。」
オペレーターはそう言うとスピーカーの電源を入れた。
『こちら西部方面普通科連隊連隊連隊国中1等陸佐です。防衛指揮センター、聞こえますか?』
「国中1佐聞こえますよ。」
大野寺防衛大臣が答えた。
『西部方面普通科連隊より防衛指揮センターにお知らせします。我が連隊は竹島を奪還致しました!!』
「おぉ〜〜!!」
再び防衛指揮センターは歓声に包まれた。ガッツポーズや万歳をしている者もいた。
「国中1佐、聞こえますか?伊部です。」
『総理!!聞こえます!!』
伊部総理に話し掛けられ、国中1佐は幾分声を裏返しながら答えた。
「竹島に掲げられている旗は何か?」
『日章旗と旭日旗であります!!』
国中1佐の言葉に、防衛指揮センターは再び歓声に包まれた。
「国中1佐、ご苦労であった。全国民に変わってお礼を申し上げる。」
『ありがとうございます!!』
国中1佐が礼を述べた。防衛指揮センターは未だに歓声に包まれている。
しかしそこへ歓声を打ち壊す情報が防衛指揮センターへ飛び込んだ。
「報告します!!南朝鮮海軍の艦隊が竹島近海に進出して来ました!!」
「来たか。」
オペレーターの言葉に、伊部総理は呟いた。
「オペレーター、護衛艦隊に連絡。『皇国の興廃はこの一戦にあり。各員奮励努力せよ!!』以上だ。」
「了解しました!!」
オペレーターは伊部総理の言葉に、敬礼をするとコンピューターに向き直った。
「諸君、此処からが正念場だ。最後まで頑張ろうではないか!!」
伊部総理の言葉に、防衛指揮センターの空気が引き締まった。そこへ嬉しい知らせが飛び込んできた。
「総理!!アメリカ合衆国海軍第7艦隊とロシア連邦海軍極東艦隊が竹島近海へ向けて出撃しました!!」
「おぉ〜〜!!」
最早趨勢は決した。