表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大怪獣ゲスラ  作者: ロッカ&参照太夫
44/45

  市破の遅い春 中   君の名は

「ところで、アナタ本名、なんての?」

 とボア大尉が、コードネーム〝近所のオッサン〟に尋ねた。


「オポッサムってんでさ」(フクロネズミ目オポッサム科。雑食性。夜行性)

 と〝近所のオッサン〟が答えた。


「キャハハハ。近所のオポッサム? もお、気が抜けちゃうわね」

 とマムマム中尉。


「どーして、こーゆうクダラナイ事が、書きたいのかしら? この作者は」

 とヒルダ大佐。


「ところでボス。この出没湖の名物は、うなぎだけじゃないんですぜ」

 と近所のオッサンが、壁に掛かったメニューを指差した。

 そこには、

『出没湖名物、かわず焼き』

 と書いてあった。


「そうそう。ウチらはよう食べへんけど、ボスたち(蛇族)は、お好きなんでしょ? ケロピョン(食用カエル)」

 と買い物帰りのオバサン。


「え? ケロピョンがあるの?」

 とボア大尉の目の色が変わった。

 あれだけ、うな重を大量に食べたにもかかわらず、ヒルダ大佐も、コブラ大尉も、マムマム中尉も、目がらんらんと輝きを増してきた。


「へえ。やっぱりお好きなんだ。親父さん、かわず焼き4皿頼むよ」

 と近所のオッサンが注文した。


「レアでね!」

 と、すかさずマムマム中尉。


「ひえっ! かわず焼きを、レアですかい?」

 と親父。


「あははは。レア気味にって意味だ」

 と近所のオッサン。


「へい。かわず焼きのレア気味。承り」

 と親父は、大きな食用ガエルを焼きアミの上に乗せた。

 デレンと垂れ下がった長々しいカエルの足が、なんとも不気味だ。

 うちわでパタパタと炭を起こし、炙っている。


 ちょっとドロ臭い感じの、かわず焼きの香りが漂ってくる。


「俺たちも食ってみっか? 名物、かわず焼き」

 とヘスが言った。


「レアでか?」

 と善行。


「あーん。やめてえ。せっかく、かば焼き、食べたのにい」

 と伸恵ちゃんが言った。


「ケロピョンって言ったの」

 と美那子。


「あの外人さん、つうだな」

 とヘス。




 小上がりの上ではキリスト(ヒッピーのあだ名)が、総理を相手に喋っている。

 秘書官達とSP達、番記者達が聞き耳を立てている。


「犯人は3人です」


「3人だけ?」

 と総理。


「そうです。SF映画に出てくるレーザーガンのような武器で、片っ端から焼き殺していったんです」

 とキリスト。


「アタシたち、茂みに隠れて見てたの。恐かったデス」

 とマリア。


「一人は軍服を着た背の高い男で、外国人です。訳ワカラン言葉を喋ってましたから」

 とキリスト。




「生き残りがいたなんて……ミスったわね。カーン少佐の事を喋ってるわ」

 と買い物帰りのオバサン。


「あとで……、捕まえて、尋問するわ。……とにかく……、今はコレよ……」

 とヒルダ大佐はカエルの足にむしゃぶりついている。


「やっぱ、私たちにはケロピョンが一番よね」

 とコブラ大尉も足の骨をしゃぶっている。


「オジサン、もう4皿クダサイ」

 とマムマム中尉。


「8皿にして! もちょっとレアでもいーのよ」

 とボア大尉。


「でもオジサン、炙りかたがとっても上手。……ガマー(大将)のヤツも(熱線銃で)炙って、足の一本も食べてやるんだった」

 とヒルダ大佐。


「ホント。小さくてもこのケロピョン、美味しいわあ」

 とコブラ大尉。


「いやあ。お客さん。嬉しいねえ。備長炭が決め手でやす」

 と親父。


「な。親父。なんてったってウチの炭は、秩父の備長炭だもんな」

 とモヒカン。


「うっく! お前は喋るな馬鹿ボーズ! さっさと運べ!」

 と親父。


 蛇族の4人は法悦境といったところだ。




「で、他の二人の特徴は?」

 と総理が尋ねた。


「ええ。あとの二人はモロ日本人です。一人は近所のオッサンって感じ」

 とキリストが答えた。


「も一人は女です。買い物帰りのオバサンって感じ」

 とマリア。


「近所のオッサンと買い物帰りのオバサンですか……。この二人もレーザーガンですか?」

 と総理。


「そうです。買い物カゴからレーザーガンを取り出して、ジュバババって感じで……」

 とキリスト。


 マリアがキリストをつついて言った。

「ふえっ……あすこに……買い物……」


 コードネーム〝買い物帰りのオバサン〟は、買い物カゴから熱線銃を取り出して、マリアとキリストにちらっと見せた。

 そして、にったら。と笑った。


「ひえっ! 大ヤバだ! マリア、逃げろ! 焼き殺されっぞ!」

 こう叫んだキリストは、マリアの腕を引っつかんで、靴もはかずに店外へ飛び出して行った。


「何ですか? どーしたの?」

 と呆気にとられる総理と取り巻き達を尻目に、ヒッピー2人は走って行く。


 その時、直下型の地震のような振動が、付近一帯を襲った。


 ──ゴゴゴゴゴ


 と凄い縦揺れ。


「ゲスラが出たのか?」

 と総理が叫ぶ。


「きゃあ」「きゃあ」「きゃあ」「きゃあ」

 とロマーノの女達が悲鳴をあげる。


 番記者達は総理をほったらかして、店外へ飛び出して行った。

 サイフを出す奴。携帯をかける奴。秘書官達は緊張の極地だ。

 SP達が総理の周りでスクラムを組む。守ってるって事か?


「超巨人の友和が出たのか?」

 と善行がハンド・マイクを握る。


「何で誰も地震だって思わないんだ?」

 とヘスが叫ぶ。


 ヒルダ大佐も叫んだ。

「ビトー・プレッソが来たわ。みんな行くわよ! オジサン、残りのケロピョン、テイクアウトにして!」


 親父は流石にプロである。激しい縦揺れの中、焼きあがったかわず焼きを、パック詰めにしている。


「こら! 馬鹿ボーズ! 輪ゴムとビニール袋だ! えー、こちらの勘定は、どなたでやすか?」


〝近所のオッサン〟がサイフを開いている。




 警察本部長が飛び込んできて叫んだ。

「総理、早く避難してください! この揺れはゲスラじゃありません! 上空に巨大な飛行物体が飛来したんです。そのせいで、ほら、重力がアレして、つまりポルターガイストみたいな案配の揺れでしょ?」


「ちっとも解らん説明だ!」

 と古参のSP。


 総理が叫ぶ。

「防衛大臣は? 市破は? いったい何やってんですか?」


「市破防衛大臣は展望ホテルです。徹夜続きだったから、まだ寝てるんじゃないですか?」

 と秘書官が答えた。


 とにかく全員外に出てぶったまげた。

 上空には巨大な、銀河連合時空重巡洋艦「ビトー・プレッソ」が滞空していたのだ。

 まるで映画インディペンデンス・デイのように、空を覆う「重巡ビトー・プレッソ」の雄姿。




「さあ。地球の攻撃機が来ますよ。迎撃しますか?」

 とビトー・プレッソの副官が言った。


「いや。電磁シールドだけでいいよ。勝手に突っ込んできて、勝手に落ちるがいいさ。原始人が相手だからな」

 とカーン艦長が言った。


 スクランブル発信した自衛隊の戦闘機が、ビトープレッソのシールドに触れて墜落した。

 地対空ミサイルも発射されたのだが、すべてシールドに当って爆発した。


《・・・衛星軌道に銀河連盟艦が来てます・・・識別・・・245ヶ星系軍・・・時空戦闘艦フェロモン号・・・艦長・・・フェロモン号のアクメ砲は・・・なかなかあなどれませんよ・・・》


「ここで滞空してる方が、安全だって訳ですね」

 と副官。


「情報部の作戦が最優先って事だ。ここでヒルダからの連絡を待とう。地球人が核弾頭を使いそうになった場合は、一旦、衛星軌道へ退く」

 とカーン艦長。


《・・・軌道上のフェロモン号から・・・高速戦闘機・・・2機発進しました・・・》


「迎撃機、出しますか?」

 と副官。


「いや、発進準備だけでいい。様子を見よう」

 とカーン艦長が言った。





 展望ホテルから飛び出した市破防衛大臣は、空を見上げて驚愕する人々の間を縫って、作戦本部に向かって走った。

 だが、すぐに息切れがして、へたばってしまった。

 目がかすみ、手足も痺れている。

 酔っ払っているだけじゃない。糖尿病も進行している様子だ。

 それに、昨日から〝柿ピー〟しか食べていないので腹が減っている。


 脂汗をかきながら、へたり込んで、ウンウンうなっていると、通りすがりの外人女が立ち止まって、しゃがんで話しかけてくれた。

「アナタ大丈夫? 可哀相に。アルコール中毒みたいね。飲んでばかりで何も食べられなくなったら、お終いよ。父がそうだったの。コレあげるから食べなさい」

 と、パック詰めの、かわず焼きを一つ手渡した。


 なんという優しさ。

 市破はジーンときた。

 そもそもモテル男じゃないし、陰険そうな赤ら顔が祟って、いらぬ警戒心を刺激するのが常だった。

 だから女に優しくされた事なんか皆無なのだ。


 単純ながら、恋心がポっと芽生えた。

 喧騒の中、こう聞くのがやっとの市破であった。


「あの、君の名は?」


「ヒルダよ」

 と女が答えた。


「ボクは市破と言います。展望ホテルに泊まってます。ロビーの日本庭園の橋の上で今夜、逢ってくれないかな?」

 と、もじもじしながら言った。


「いいわよ。7時にしましょ」

 そもそもヒルダの好みは、かなり変わっていた。


 ──細目の赤ら顔、実直そうな喋り方。珍しくタイプだわ。可愛くて素敵なひと。


「ホントにいいの? 待ってるからね。ゼッタイきてね」

 赤ら顔がますます真っ赤になる。


「じゃ、今夜ね。ちゃんとケロピョン食べなきゃ駄目よ」

 と言い残して去って行った。


「ケロピョン?」

 市破は暗示にかかったように、かわず焼きを頬張りながら、ヒルダの後姿を見送っている。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ