『疾風POKKA作戦』 act 6 【不許可】
拝啓兄上様。お誕生日おめでとうございます。
そして、日々の艦上勤務、ご苦労様です。
このたび小生は任務の為、太陽系の第3惑星に赴く運びとなりました。
例によって任務内容は、極秘に類する事なので、書けません。
書いてもどうせ、不許可になるだけでしょうから。
そうだ。試しに書いてみよう。
まずいところは勝手に不許可になるんだから。
小生が気を使う必要は無いって事ですよね。
実は連盟の【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】
という訳なのです。
やはり不許可かな? どうですか?
この任務遂行に当たって、考えてみたのですが、小生の直属の上司であるヒルダ大佐は、小生に、確実に気があるって事なのです。
小生や兄上も、そしてカーン家の男達は皆、男前ですからね。
ヒルダは〝蛇の舌〟と異名をとっている、諜報世界では名の知れた、ちょっといい女なのですが、ま、しょせんはオンナです。
小生の助けがなければ、箸一本動かす事もできないダメな奴なんです。
小生にしたってヒルダが憎い訳じゃない。だから、おおいに助けてやってます。
その結果、ヒルダの恋心はつのる一方なようでして。
困った事です。
ヒルダのせつない気持ちは、分からぬ訳じゃないが、小生は元々蛇族がニガ手なのです。
あの先っぽが割れた舌を見るだけで、正直、ゾ~とします。
しかし、ケロピョン女はもっと嫌いです。
情報部のエージェントにはいませんが、本部の受付嬢がそうです。
この女も小生に色目を使ってきます。
そもそもケロピョン女って奴は【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】
という訳なのです。
やはり連合は、ヒューマノイドタイプが1番ですね。中でも「チュートンの森の蒼き狼」である我々モンゲル族が最高だと思います。
それにしても、73軍におけるケロピョン族偏重は【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】【不許可】
ではないでしょうか。
ご自愛を。
ハイル・テンゲレ。
ニュールンベルクのクリルタイでは会えますか? ギュンターより。
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艦長室に引き上げたカーン艦長は、ベッドの上でメールを読んでいた。
勿論、このメールは艦長室の、壁のモニター画面に映し出されている。
つまりこれもメインコンピューターが管理している。
《・・艦長・・【不許可】の部分・・解除してさしあげましょうか?》
とメインコンピューターが言った。
「そんな事をしていいのか?」
とカーンが聞いた。
《・・そりゃ・・いいとは・・言えませんが・・・・・あっ・・・艦長の・・その目つき・・・心理分析します・・・・・メインコンピューターを疑っていますね・・・【不許可】は・・・メインコンピューターが検閲している訳じゃありませんよ・・・これは・・・73軍政務局の管轄です・・》
「そうか……分かった。解除はいいよ」
とカーン。
《・・せっかく・・艦長の為に・・解除して・・さしあげようと・・思ったのに・・・・疑うなんて・・・・》
「重ね重ね……、すまなかった」
とカーン。
《・・政務局のコンピューターに侵入するって事は・・・一種のハッキングなのですよ・・・》
「許せ。不完全生命体の無知のなせる業だ……」
《・・艦長・・・そうまで卑屈にならなくても・・・私は・・・艦長を尊敬しているのですよ・・・長い付き合いじゃないですか・・・もっと自信を持って下さい・・・》
「……そうか。そう言ってくれるのか。さんざん世話になったくせに……名前もつけずに……ただの機械だと思っていた……。本当に私は、情味の乏しい、最低の人間だったよ」
《・・学習して成長する・・・それが知的存在というものなのです・・・艦長は成長しました・・・》
「そうか? ありがとう。おやすみ」
《・・おやすみなさい・・・艦長・・》
照明が消えて、カーンは眠りについた。
より快適な温度と湿度。適当な微風は、艦内の閉塞感を忘れさせてくれる。
メインコンピューターは、カーンの安眠を守っている。
同時に、他のみんなの安眠も。
メインコンピューターにはカーンの悩みが解っていた。
実弟が潜入している流木島のある出没湖を、命令とはいえ、核爆弾で破壊するなんて……。
カーンは、辛く悲しい任務を遂行せねばならんのだ。
カーンは銀河系共通ネットの「銀河系軍事オタク情報」で、ギュンターの潜入先を知ったのだ。
勿論、これは公式のニュースじゃない。
「銀河系軍事オタク情報」は、連合系でも連盟系でもない「銀河互助会」系の著明人、ナンデン・リークスキー氏が始めた様々な情報ツールの一つだ。(ちなみにリークスキー氏は、現在「銀河共栄圏」系の監獄で服役中だ)
長期間、虚空を航行する宙軍の艦長にとって、これは有難い情報源だ。
実際、ギュンターの消息を司令部に問い合わせたところ、
──情報部の行動に関しては「極秘」である。貴艦はすみやかに作戦を遂行せよ。
と、にべもない返事であった。まあ73軍は元々そうした所なのだが。
「銀河系軍事オタク情報」によれば、この辺境星において、多数の巨大生物が出現し、そして、やにわに消え失せたのだという。
暴れ回ったとか、そのような事は何も言ってない。
いずれにせよギュンターは調査の為に派遣されたに違いない。
『……の〝出没湖の流木島〟へ潜入後、消息を絶つ』
との事だ。
連盟軍絡みの事件に違いない。確証がないから「連盟軍」とは言ってないのだ。
カーンが少年時代の、そう、チュートンの森でギュンターと遊んでいる夢を見ている、ちょうどその時、73軍参謀本部の高速艇がドッキングを求めてきた。
カーンの安眠は航行の必要条件であったが、メインコンピューターは職務を果たす。
《・・艦長・・起きてください・・・カーン艦長・・起きてください・・・検索・・アサー! ・・これは20世紀の起床法です・・アサー! アサー! ・・21世紀・・・オッハー!》
照明が付いた。
司令室には、眠そうな副官が駆けつけてきている。
参謀本部の高速艇は、重巡ビトープレッソの発着ゲートが開くのを待ちながら、ランデブー飛行を続けている。