『疾風POKKA作戦』 act 5 【ヒルダの脱皮】
アルファセントリー惑星での銀河連合軍、第73軍の作戦会議の模様をお伝えしよう。
基地司令塔ビル内の「作戦本部室」には、将軍連に参謀連。第73軍首脳部15名が集合していた。
第73軍は、何故だかケロピョン族の将軍が多い。
何処の世界でも一緒だが、学閥と縁故が幅を利かした結果だ。
73軍の最高位にあるアブドラ・ガマー上級大将の引き立てにより、この種族が多くなったのだ。
司令官のガマー上級大将は、汗のような油を副官に拭かせながら言った。
「連盟軍の生物兵器疑惑についてだが、早急に解決策を講ずる事にした。つまり、生物兵器の出現した、第3惑星の○□×◎△地区を、熱核爆弾を使って破壊する」
席上は、しんと静まり返った。
○□×◎△地区とは出没湖の事だ。
簡潔に進める為に、記号で記す事はやめよう。
本当は銀河連合共通語を、そのまま記述したいのだが、
「しまケロちょんて・くびらみれ・くのちょのケロケロにょ・ちゅりちゅり・もふふんケロ」
と聞こえる。これじゃ訳が解らない。
ケロケロの部分は、ケロピョン訛りが交じっているのだが、いずれにしても鬱陶しい。
だから、やめよう。
「情報部の報告を待ったほうがいいのでは……」
とケロリン少将が言った。
すかさずガマー大将が叫んだ。
「そんなの関係ねえ! いいか、俺様の決定は絶対だ! 躊躇なしだ! 今ならこの島(日本列島)の中央部だけで済む。一瞬のためらいが敗北を招く! 戦略の基本だ!」
「よし! やろう!」
と即座にケロヨン中将。
「やりましょう!」
と参謀たち。
「重巡ビトープレッソを使いましょう。カーン艦長なら腕は確かです」
とゲロッパ参謀長。こいつは少将だ。
〝秘宝の香油〟を上納する筈の、カーン艦長に手柄を立てさせたいのだ。
「しかし、チンギス・カーン艦長は、潜入したまま消息不明の情報部の、ギュンター・カーン少佐の実兄ではないか。これは、ちょっとマズイのではないか?」
とゲロゲロ少将。
「何? 兄はモンゴル系で弟はドイツ系なのか?」
と、こちらはケロッピ中将。
「ハイ! 姉は淫売、妹は芸者、末のチョロ松バクチ打ち。ハイハイハイ!」
とゲロッパ参謀長。
「ビトープレッソって、目の前の、微糖カン・コーヒーと同じ名前でありますな」
とケロロ参謀。大出世して中佐になっている。
「よし、何でもいい。ビトープレッソに出撃命令を出せ! ──
この攻撃を……ん? POKKAってのか。爆撃予定の? 第3惑星産か?
ケロロの土産か。
どれどれ。
ムグムグ。ゴクゴク。
うん。豆臭くて旨いな。も1本くれ。
ムグムグ。ゴクゴク。
……。
よし! この攻撃を『疾風POKKA作戦』と命名する」
とガマー大将が宣言した。
「おおー!」
と全員が雄たけびをあげた。実音はゲロゲロゲロ。
「英断です。今後、あなた様には〝疾風アブドラ・ガマー大将〟と呼び名がつくでありましょう」
とガマー大将の副官で、こちらはマングース族のシャイロック大尉がゴマをする。
「ふん・ふん・ふん」
と鼻息も荒いガマー大将の身体は、確実に、5割増しくらいに膨らんでいる。
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「今回は、人形劇のシナリオみたいでありんすな」
と参照太夫がよけいな事を言った。
「何だと! 〝HBE書き〟をなめるな!」
とロッカが言った。
一方こちらは、基地司令塔ビル内の「秘密情報室」の、更に「奥の院」
そう。73軍の情報部ヘッドである〝蛇の舌〟ヒルダ大佐の部屋だ。
真っ暗である。
調度品は?
真っ暗で何も見えない。
何やら、うごうごと蠢いている。
目を凝らして見ると……女だ。女の肢体が、ゆっくりと動いている。
視点を変えると、ちょっとエロい。
すべやかな脚が、むっちりとした太ももが……。
そして脇腹のクビレから一気に盛り上がる抜群な美尻。
陰影のある下腹部の作り出すデルタは、まさにため息が出る。
顔はよく見えないのだが、形の良いおとがいから、首筋を通って、鎖骨から視点を下げると……それは綺麗な乳房が見える。
フェロモンの香りが漂う。
それと、もうひとつの香りとのハーモニーだ。……。こっちは「秘宝の香油」の香り。
いったい何をしているのだろう?
SEXか?
「秘宝の香油」を使って?
地球から〝エステ棒振興会会長〟が来訪してるのか?
ともかく、
──シュリ・・シュリ・・シュリ・・
と変な音が聞こえる。
「秘密情報室」から「奥の院」に通じるドアの前は、ヒルダの部下の蛇族の女性情報将校3名が、しっかりガードしている。
「奥の院」からヒルダの呻き声が漏れる。
「あ・・うん・・うん・・うん・・ここ・・ちょっと・・あん・・ちょっと痛い・・うっく・・引っかかっちゃう・・・うん・・うん・・」
と、かなり色っぽい声。
だが、すぐさま、
「シャーーッッッ!」
という音。これも声なのか? 凄い声。
「ッッッ!」が恐い。
──ギイイイッッ。
と、ドアが開いた。
「はうううう・・・・」
と声を発しながら、放心顔のヒルダが出てきた。
一糸まとわぬ素っ裸。
まさに輝くばかりのプロポーションではないか。
赤ん坊のようなプルンプルンの肌を紅潮させ、確実に若返っているヒルダは、開口一番こう言った。
「やったわボア、見てちょうだい。やっぱり〝秘宝の香油〟って凄い!」
「まあ! 見事に再生してるわ」
と驚くボア大尉。これも美人だ。かなりの大女。
先の作戦にまつわる諜報戦のさなか、負傷し、失った、左の眼球であった。
なんとこれが元通りの、美しい切れ長の左目となって再生していた。
ボア大尉が言った。
「おめでとうボス、記念にアイパッチ、私にください」
「いいわよ。でもねボア、アイパッチは『蛇の舌』のトレードマークになってるのよ。連盟情報部は第1級ターゲットに指定してるわ」
と、出来立てホヤホヤの左目でウインクしてみせる。
「そうよボア。アンタ、オフなんか、いつもテレテレしてるんだから。ボケーとしてると殺されちゃうわよ」
とコブラ大尉。こちらも美人だ。
「大丈夫。これからは『蛇の舌』の影武者として、毎日キリリと行動するわよ」
とボア大尉が答えた。
「あー。イケメンアイドルグループのオッカケやったり、有名スイーツ店の行列に割り込んだり。『蛇の舌』もイメージダウンって感じ」
と、こちらは、ちょっと小柄で可愛いマムマム中尉。
「何よー!」
と、さっそくアイパッチを付けたボア大尉。
「ボスお疲れさま。お腹へったでしょ。デネブ牛のステーキ焼きますわ」
とコブラ大尉。
「熱線銃の一撃ね。超レアがいいわ。ホントはケロピョン一匹がいいんだけど……うふふ。こっそりとね……」
と笑いながらヒルダが言った。
「ああ……気持ち分かるわ……脱皮の後ですもんね」
と、ボア大尉が言った。
「何てったって私たちには、ケロピョンが一番よね。特にあの、新米参謀のケロロなんか……美味しそう」
とコブラ大尉が舌なめずりをする。
大きなデネブ牛のステーキ用サーロイン肉に向かって、マムマム中尉はブラスターの一撃を加えた。
素っ裸のままのヒルダは、テーブルに付き、ナイフとフォークを超レア肉に突き刺す。
脱皮後の猛烈な食欲を満たすのだ。
ワインを飲みながらヒルダが言った。
「やっぱり〝秘宝の香油〟は効くわね。目玉の再生も凄いけど……〝脱皮〟の際の〝剥がれ〟が違うわ。アンタ達も、使うなら10倍希釈モノよ」
ガウンを差し出しながらボア大尉が言った。
「作戦会議の決定が届いてます。重巡ビトープレッソによる核攻撃です。1メガトンを使用するそうよ」
「なんですって!」
とヒルダが叫んだ。
切れ長の両目がルビー色に光っている。
ヒルダは怒っているのだ。
ひらりとガウンを脱ぎ捨て、再び素っ裸になって叫んだ。
「こうしちゃいられない! ボア! 軍服持ってきて! 将軍達は、まだ作戦室にいるの?」
「ケロロ参謀の持ってきた第3惑星のお酒で、宴会をやってます」
とマムマム中尉が答えた。
「〝爆撃決定〟ですって? おのれ! 情報部の報告も待たずに! ケロピョンのくせに! ガマー大将だって、許さないから!」
カッカッカッカッと足音も高らかに、軍服を着たヒルダと3人の部下は「作戦本部室」へ向かった。