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大怪獣ゲスラ  作者: ロッカ&参照太夫
27/45

  ゲスラ復活

 出没湖畔におけるゲスラ十匹による徘徊の結果は、まさに台風一過であった。


 大荒れに荒れた湖の大波のせいで、集積されていた流木島の流木が、湖面に大量に流れ出した。

 倒壊して流出した家屋の、これも大量の残骸と共に、鶴田川への分岐点の浅瀬を埋めつくした。


 友和が発見出来なかったゲスラの死体も、この場所に流れついていた。


 自衛隊の工作部隊は迅速であった。

 巨大な死体の回りの残骸はすみやかに片付けられ、特殊車両は湖岸の山を切り崩し、急ピッチで平地が造成された。


 大量の油圧ジャッキで持ち上げたゲスラの巨体の下を、超早乾性の特殊コンクリートで固め、頑丈な床が作られた。

 そして瞬く間に、幅五十メートル×三十メートル、高さ二十メートルの特殊プレハブの建物が建てられた。

 この事によりゲスラの死体は、この巨大な研究施設に横たわる事となった。


 この施設の事を、科学者達は「ゲスラのまな板」と呼び、警備隊は「ゲスラの棺おけ」と呼んだ。

 電線が引かれ、機器類が運び込まれた。

 缶コーヒーの自販機が設置され、カップ麺の自販機も設置された。

 勿論シャワーもトイレも完全完備となった。


 横たわる三十メートルのゲスラの脇には、巨大な鉄パイプのやぐらが組まれ、白衣の科学者達が立ち働いている。





 総理大臣が首席秘書官の松尾と、赤面の、市破防衛大臣を従えて来訪した。

 最高責任者である古生物学界の重鎮、山根博士がこれを迎えていた。


 総理が言った。

「どうですか? ゲスラの死体は、問題ありませんか?」


 山根博士が声を潜めて答える。

「実は総理、このゲスラ、まだ生きとるんじゃ。心臓が動いてますからな」


「何だと?」

 と驚愕の総理である。


 すかさず松尾秘書官が言う。

「市破さん、何故、とどめを刺さなかったのかね!」


「それは……、私だって、今初めて知った訳でして……」

 と、もじもじしながら市破防衛大臣が答えた。


 総理がぼそっとつぶやく。

「脳死だったらいいのにな。まったく。厄介な奴だ」


「脳死? そんな事は、有り得んな」

 と、山根博士が冷ややかに答えた。


「そうだ! もう一度、やり直せばいいんだ。……松尾。仕切りなおしを頼むよ。一時間後にまた来る。とにかく、これは防衛問題だ。だからアナタ、市破さんの責任だ。判ってるだろ!」


 こう言い残すと総理はドアを開け、そそくさと出て行ってしまった。


「俺の責任だって? そりゃ、あんまりだよ……」

 と市破。


「総理のおっしゃる通りだ。これは自衛隊の不始末だ。だから防衛大臣、早く、さっくりと、やんなさい」

 こう言うなり松尾秘書官は、壁際のディレクターチェアーにどっかと座り、タバコに火をつけた。


「う。頑張って禁煙してるのに……。松尾さん。ちょっと煙を……なんとかしてくれないか?」

 と市破。


「煙? 市破さん、アンタそれどころじゃないでしょ! 早く、さっくりと、おやんなさい」

 と松尾秘書官。


 泣きだしそうな市破の赤ら顔は、青ざめるという事が出来ない。何故だかますます赤くなった。


 意を決して口を開く。

「山根博士、お考えは、ごもっともですが、何しろ国民の生命と財産を守る事が私の務めでして、だから、お願いできますか?」


 白衣の山根博士は、カップ麺にお湯を注いでいる。


「ああ。ご勝手に。わしゃ別に構わんよ」

 強硬な抵抗を予想していた市破にとっては、予想外の返答だった。


「え? よろしいんですか? 博士は〝生命の秘密〟を解き明かしたいんじゃなかったんですか?」

 と市破。


「誰が?」

 と山根博士。


「アハハハ。何が〝生命の秘密〟だ。やっぱりアンタは〝オタク大臣〟だな」

 と松尾秘書官。


「う。……わかりました。それじゃさっそく、取り外してもらえますか?」

 と市破。


「何を?」

 と山根博士はカップ麺をすすっている。


「え? 生命維持装置に、繋がってるんじゃないんですか?」

 と市破。


「繋いでないよ」

 と山根博士はカップ麺をすすり続ける。


 椅子から立ち上がった松尾秘書官が、声を荒げて言った。

「ケッ! ぐずぐずと! こうなったら毒殺だ! 毒殺しかないよ!」


「どれだけの毒物を、どれくらい注入するのかね? 経口摂取させるのかね? それとも秘書官、君が何度も注射してやるのかね?」

 と薄ら笑いを浮かべた山根博士。


「ドンダケー?」

 と、鉄バイプのやぐらの上で、ゲスラの心電図を取っていた獣医が冷やかした。

 おのおのの作業を進める科学者達も、冷笑を浮かべている。


 市破は髭の戦車隊長に携帯をかけている。


「そうだ鬼熊、ゲスラは生きてるんだ。死んでない。すべて貴様の不始末だ。総理はご立腹だぞ。ヘリに乗ってすぐ来てみろ。ちゃんとした得物、持って来いよ。貴様んとこの戦車の豆鉄砲じゃ話にならんからな! いいか、馬鹿は馬鹿なりに頭使えよ! この馬鹿が!」


「お? 結局、部下にスルーパスかね? ボーエーダイジンのくせに……」

 と松尾秘書官が言った。


「やかましい! 松尾さん、アンタは毒薬の手配でもしてりゃいいんだ!」

 こう言うなり市破は、背広の内ポケットから、ステンレス製の携帯ボトルを取り出して、グビリと一口飲んだ。


「あー! やっぱり! いつも飲んでるんだな? この、赤防」

 と松尾秘書官が叫んだ。


「当たり前だ! 飲まなきゃこんな仕事、やってられっかってんだ? この腰ぎんちゃく野郎があ!」

 と市破も叫んだ。


「ドンダケー?」

 パイプやぐらの上から、今度は統計学者が尋ねた。


「そうさな、毎日バーボンかライ・ウイスキー2本ってとこかな。これじゃないよ。普通のボトルでだ」

 と市破は、完全に開き直った。


「それじゃやっぱり、完全なるアル中じゃないか!」

 と、松尾秘書官が叫ぶ。

 その時、突然大きな音がした。


 プップップッ プシーー! プシーー! プシーー!


「ゲスラが呼吸を始めました! 大変です! 全員避難させて下さい。睡眠状態に戻ったんです」

 こう言うなり科学者達が全員、パイプやぐらの上から降りてきた。


「おお、完全に蘇生しおった。何という生命力じゃ」

 山根博士が感嘆の声をあげた。


 グオーーー、グオーーー、グオーーー。


 ゲスラは大イビキをかき始めた。


 横たわった三十メートルの巨体は、生命力に満ち溢れ、呼吸に合わせて大きく揺らぐ。

 まさに山が揺らいでいるようだ。


 山根博士が叫ぶ。

「さあ、赤防さんもキンチャクさんも、すぐに外に出るんじゃ」


 山根博士も科学者達もドアや窓から外へ避難する。

 だが、松尾首席秘書官は納得が行かない。


「いったい何だって言うんですか? あっ逃げるな赤防!」


 本能的な恐怖を感じた市破は、窓から脱出した。

 一人残った松尾秘書官が叫んでいる。


「何だ、お前ら! 再び総理がいらっしゃる前に、ゲスラを抹殺しなきゃ、うわあ、ムギュウー」


 ズズーーーンンン


 と地響きがした。

 完全に蘇生して睡眠状態に戻ったゲスラの巨体が、寝返りをうったのだ。


 山根博士も、市破防衛大臣も、科学者達も、皆、辛うじて無事だった。

 だが、殉職者一名、松尾首席秘書官である。

 せっかく、名前で登場させたのに残念である。ともあれ、合掌。


 なお、総理の秘書官は、この松尾を筆頭に、竹内と梅原がいた。これを〝松竹梅トリオ〟と呼んでいた。

 他にも、大沢、中山、小川。これは〝大中小トリオ〟

 千駄山、差文字、万福、別府の〝千差万別カルテット〟など、大勢いるのであった。



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