表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大怪獣ゲスラ  作者: ロッカ&参照太夫
13/45

  ぶてぃっく!

 お土産店で弁当を探したのだが、コンビニ弁当のような物はない。

「鰻のひつまぶし」と、本格的に竹皮に包んでいる「おむすび」数種類を、地酒にカン・コーヒー。タバコと一緒にカゴに入れた。


 外へ出ると、西側の空いっぱいにゲスラどもが見える。 

 ゲスラどもは対岸の山の方へ移動していた。

 ゴロゴロしながら遊んでいる。

 ドスンドスンと振動が伝わってくるのだが、人間とは不思議なもので何事にも慣れてしまうのだ。

 もっとも、友和達には〝空飛ぶタクシー〟がある。だから、安心故の余裕なのだ。


 ゲスラの数を確認してから、(勿論、踏み潰されない為の用心だ。)洋品店に入ったのだが、女物しか見当たらない。

 小洒落た感じの店だ。男物は見当たらない。


「ぶてぃっく!」

 と、一声発したaタイプが、マネキンの衣装に飛びついた。

 この状況には、まったくそぐわないカラフルで可愛らしい衣装。しかもミニスカートだ。


「わあ。これカッワイ~イ! どお? 似合わない?」

 数点引っつかんで、さっそく鏡に向かっている。


 ところで、aタイプが着用している銀色のツナギは、245ヶ星系軍のパイロットジャケットだ。

 この服は〝オートクリーニング機能〟のスグレモノである。

 脱ぐと同時に数十分でクリーニング完了。しかも自動修復機能。これはむしろ〝再生機能〟と言うべきだろう。

 だから、友和とエンタメのように、泥まみれの衣服とおさらばして、ホテルの甚平で飛び出した訳じゃない。

 もっともaタイプの場合は、ホテルじゃ浴衣を着ていた。(甚平を着せてみたい気もするが。)


 ジャケットの下に着ているのが、例の〝バンピレラコスチューム〟。

 これが、インナーじゃないってんだから!

 これだって、再生オートクリーニングなのだ。

 という事は、ホテルじゃ浴衣の下に、何も着てなかったという事になる。


 aタイプは、パイロットジャケットを脱いだ。

 銀色ツナギから、すぽんと抜け出したって感じ。

 友和は思わず叫んだ。

「うわっ! よせっ! aタイプ」


 バンピレラコスチュームは、245ヶ星系軍の通常ウェアである。

 だから、わざわざ試着ブースに入ったりはしない。



 ──参照太夫でありんす。

 ロッカのgooブログ『aタイプと一緒にいたい!』の『スーパー・エン・タメ小説 江守友和の冒険』

http://blog.goo.ne.jp/locka1955/e/2029a4c34c1a83fc782acd9693e81143

 aタイプ。独裁官ミナコ。ロボ・ミナコ。の画像あります。参照してくんなまし。──



 フェロモン号の中じゃ、あたりまえに見慣れていたコスチュームも、ここでは、紐パンと紐ブラの連続体のようで、つまりウルトラエッチな品物に見える。(そのとーりです。)


 オッパイのほんの一部と、腰の小さな三角形を、紐で繋いだようなコスチューム一枚だけで、つっ立っているのだ。

 肩も脇腹も太もももすべてむき出し。

 それにしても、なんて素敵なプロポーション。

 本日着用の銀色ブーツとの組み合わせが、妙にエロい。エロすぎる。


 思わず店の外をうかがった友和なのだが、店の前を、なんと、あの4人組のガキどもが通りかかったのだ。

 ガキどもの目がまん丸になった。


「しえ~! コスプレかあ?」

「スンゲ格好」

「ピンクのおねいちゃん、エロッペー!」

「たっまんね~!」


 すかさずaタイプが、ガキどもに言った。

「あなたたち、ワゴンみたいなの、探してきて!」


「ハイ!」

 と答えて、モヒカンと、♂タトゥーと、鼻ピアスは弾かれたように走り出す。

 スキー帽一人が、まるで「タイコモチ」のようなリアクションで、てけてけと近づいてきた。


「へい。アネさん、エっへっへ。コンチまた、いいご機嫌でゲスな……」

 とは、言わなかったが。


「おねいさん。これなんか絶対、似合いますよ」

 と、同じような事を言った。


「そお? ちょっと馬鹿っぽく見えない?」

 と、スキー帽お勧めのウェアを、首に宛がっているaタイプ。


「トンデモナイ。もー最高っす。ところで、その格好、寒くないっすか?」

 とスキー帽。


 たまりかねた友和が叫ぶ。

「うっわ! 裸だ。すっぽんぽんと、なーんも変わらん! aタイプ、着替えするなら、ちゃんと着ろよ! ブースに入って!」

 その時、

「おねいちゃん、おまたせー!」

 と、モヒカンと、♂タトゥーと、鼻ピアスが、量販店の大きなワゴンを、ガラガラと一台ずつ押してきた。


「あ~ん。これも、これも可愛いくて、すてがたいな。コッチとコッチ、ドッチがいいと思う?」

 とaタイプ。


「やっぱ、コッチでしょう!」

 とスキー帽が相手をしている。


 選んだ衣料品を、次から次へワゴンの上に積み上げているじゃないか。

 友和はタバコを取り出してくわえた。


「どぞ」

 と、モヒカンが、神妙な顔で火を差し出した。


「おい。お前ら、男物の店、知ってるか?」

 と友和。


「ハイ。角を曲がって2軒目す」

 と鼻ピアス。


「aタイプ。行くぞ」

 と声をかけると、

 ぶんぶんと顔をふって答えた。

「もちょっとだけ! ぶてぃっくでお買い物!」


「ふう」

 と煙を吐いて友和が言った。


「おい、おねいちゃんの事、しっかりガードしてやってくれ。育ちが良すぎて、ちょっと、な。そーいうタイプなんだ。aタイプってんだ」

 とモヒカンに言い残してブティックを出た。


 不良どもが頭を下げて見送っている。

「どぞ、ご心配なく!」

 とモヒカンの声。





 角を曲がって2軒目は、普通の衣料品店であった。

 友和はここで着替えをした。

 大きめの、ジーンズ風ストレッチパンツに、無地の、そんなに厚ぼったくない綿シャツを何枚か選ぶ。

 その中から青っぽいのを着た。

 シニア向けの灰色の毛糸のチョッキを着て、暖かそうな、バーゲン品であるフリースを貰った。


 奥の方には高級セーターや、ブランド品のコートやジャケットもあったのだが、友和にはこれで十分なのだ。

 なにも遠慮している訳じゃない。


「軽くて暖かいフリースを、身体が覚えちゃうとな、楽なものしか着たくなくなるんだよ。ストレッチパンツも同様」


 そういう事なのだそうだ。


 万年背広オヤジの友和は、ファッションとはまるで無縁な男だ。しかし何故だか、この男、ジャージだけは嫌いだった。


「あんなものを年がら年中着ている奴は、ファッションセンス、ゼロだな」


 そういう事なのだそうだ。





 周遊観光船の桟橋では、エンタメの個人タクシーが待っていた。


「エンタメさんにもほら、似合いそうなジャンパー持ってきてやったぞ」

 と、ねずみ色の作業服のようなのを差し出す。


「お、いいのがあったな」

 この男も、すぐに昔の土建屋さんみたいな格好になりたがる。不思議なセンスの持ち主である。


「大佐あ、トランク開けてくださーい!」

 と言いながら、不良どもを従えて、aタイプが帰ってきた。

 不良どもは、衣料品を山積みにした3台のカートを、ガラガラ押している。


 友和が言った。

「こりゃ、万引きどころじゃないな」


「何よー! 後で、ちゃんと清算するもん」

 とaタイプ。


「そろそろフェロモン号に帰るんじゃないのか?」

 と友和。


「あら、休暇はまだ始まったばかりよ。これは休暇中のお洋服よ」

 とaタイプ。


 そうだった。事件の連続(第5話 蛭)と、タイムトラベル(第6話 元禄カエサル編)に、宇宙旅行(第7話 モノリス)もあって、すっかり忘れていた。

 時間感覚だってムチャクチャになる。

 あれからずいぶん経ったような気がする。


 友和とともに過ごすaタイプの、一年間にも及ぶ休暇は、嫁とりにも等しいとばかりに、子ノ渡市内に新居を決め、電化製品も一新して、ベッドも、セミダブルではなく、なんとダブルベッドを購入していた。(蛭 ショッピング 参照。)


「元の地球時間に戻ってきたんだ。って事は、aタイプの休暇は、まだ、始まったばかりじゃないか! うふふ。そーだった。嫁とり。嫁とり。むふふ。新居のダブルベッドへ引越しだあ! むっふっふっふ」

 友和は、顔の弛緩が止められない。


「あの……」

 とモヒカンが話しかけてきた。


「何だ?」

 と友和。


「お詫びを……やっぱ、ケジメっすから……」

 と鼻ピアス。


「すみませんでした」

 と不良どもが頭を下げた。


「何かあったのか?」

 とエンタメ。


「そーか。お前ら、もう、オヤジ狩りなんて、やるんじゃないぞ!」

 と友和。


「ハーイ! ワッカリマシタ!」

 と不良ども。


「よーし! じゃ、為になる話をしてやる!」

 と友和。


「お願いします!」

 と不良ども。


「あのな。……えへん。……つまり。……」

 と友和。


「アハハハ。ダンナ、どうせ何にも出てこないんだろ?」

 とエンタメが冷やかした。


「今は昔、……つまり……な。……」

 友和は目を白黒させている。


「とにかくだな。お前ら、怪獣に踏み潰されんように、気をつけろよ」

 と友和。


「ワハハハ。何だそりゃ」

 とエンタメ。


 aタイプが言った。

「こうなったら、流木島を調べるしかないわね。やっぱり気になるもん」


 スキー帽が言った。

「流木島って? 今は……超ヤバじゃね?」


 モヒカンが言った。

「島へ渡るんすか?」


「君達、行った事あるのか?」

 とエンタメの質問。


「俺らのガキの頃からの遊び場っす」

 と♂タトゥー。


「どんな島だ?」

 とエンタメ。


「ちっちゃい神社があって、草木が茂ってて、結構大きな島っす」

 と鼻ピアスが答える。


「それから……」

 とモヒカン。


「何かあるのか?」

 とエンタメ。


「コイツ、ジャリの頃、島からゴム風船、いっぱい拾ってきたって、水入れて大きなヨーヨー作って、みんなに配ってたんス」

 とモヒカン。


「そんでもって親にぶっ飛ばされちゃった。あははは。使用済みのコンちゃんだった」

 とスキー帽。


「懐かしいな。アオカンが盛んな時代……」

 と友和。


「アオカンってなーに?」

 とaタイプ


「そか。……少しも参考にならんな。ダンナ、aタイプ、乗ってくれ。行くぞ」

 エンタメはアクセルをふかした。


 個人タクシーは桟橋から、ためらいもなく湖へ飛び込んだ。

 そして、流木島目指してザブザブ進んで行く。


「ウッソみてえ……」


 あんぐりと口を開けた不良どもが見送っている。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ