表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大怪獣ゲスラ  作者: ロッカ&参照太夫
1/45

【モノリス】

 小学5年の時だった。

 同じクラスに気の合うオタク仲間が4人いて、へたっぴいなマンガを描いたり、無線通信キットを作ったり、アホらしい遊びを考えたり、いつも一緒に遊んでいた。


 ちなみに、当時はオタクという言葉はなかった。

 しかし、SF好きで、マンガ好き。

 それから超安カメラ。これは激安というのとは意味が違う。

 くじのオマケとか、多々存在する不思議な流通品だ。

 バッタ品と呼んでいた。プラスチックレンズのカメラで500円とか800円で買える。

 映りだって、オリンパスペンシリーズなんかの1万円クラスのカメラに引けを取らない。

 しかし、デザインが、旧ソ連風とでも言おうか……かなりカッコ悪いから、他人に見せるのが、ちょっと恥ずかしい。

 変なモノ好きで、機械好きで、オカルト好きのウンチク好きだから、ヨースルニ、オタクだった。


 ムカシだから、番長みたいなのがいた。

 コイツは多数派の親分だった。


 この番長の取り巻き(今風に言うと、パシリ)の一人、丸夫って奴が、何かというと我が4人組を、めのかたきにしていた。

 番長をうやまわないで、シラッとした態度で接するのが、しゃくにさわるのだ。




 ある朝、教室の中、丸夫が、新聞(?)の切り抜きを持って、わざわざ見せにきた。

 切り抜きには、


『太平洋上を飛行中の未確認物体は〝葉巻型母船〟の可能性が高く、米空軍が追跡中。このまま進むと日本列島に到達する模様。自衛隊は未確認物体の飛行コースを割り出すべく……』


 と、こんな感じの記事だった。

 うっすらとした葉巻型母船の写真も掲載されていて、我々4人は、にわかに色めきたった。


 まさにその瞬間、丸夫は、その切抜きをひったくり、ストーブに放り込んだ。(ムカシの寒いイナカだから、薪ストーブをガンガン燃やしていた)


「あー!」

 と我々が叫び声をあげると、丸夫は、さも痛快そうに、


「うっひゃっひゃっひゃっ」

 と笑った。


「おい丸夫! 今のはどこの新聞なんだ?」

 と聞くと、


「知るか! クソバーカ!」

 と答えた。


 その後、我々の懸命な調査にも関わらず、その記事は発見できなかった。


「ありゃ確かに、新聞紙っぽかったよな」


「ザラ紙(少年マンガなど)でも、ワラ版紙(学級新聞など、ガリ版刷りで使う)でもなかったよ」


「ヨタ(ガセネタの意)かな?」


「シカシなあ……(捏造は)無理だろ?」


 パソコンもワープロもない時代だ。

『ムー』みたいなカルト系の雑誌も、まだ存在しない。

 我々は本当に悩んでしまった。


 悩んでいた4人組の中に、今も付き合っている樺山かばやまとヘス(あだ名です)がいた。

 笑っちゃうほど長い付き合いなのだ。

 もう一人は、お亡くなりになった。イイ奴だった。合掌。


 現在、樺山には、拙作のキャラクター〝参照太夫〟の画を描いてもらっている。

 ヘスとは一緒にバンドをやっている。




 後年、ヘスが言った。

「丸夫の親父ってな。組合の、イットーエライさんで、あすこんちにゃ和文タイプライターなんかもあったんだって」


「じゃ、あの記事は、やっぱり丸夫が作ったって訳か?」

 と私。


 ヘスが言う。

「丸夫ってさ。番長の注文で(頭ゲシゲシこづかれながら)ムキムキマンばっか、描いてたよな。アイツ、画が上手かったんだ。〝葉巻型母船〟な。アレだってシコシコ描いたんじゃないか?」

 

 番長は、プロレスラーみたいな男の裸の画が大好きだった。(筋肉マンはまだ無い)


 10本に1本くらいの割合で、オンナの画(水着でポーズとか……たいしたモンじゃないが)を描かせては、「にへへ」と喜んでいた。


 喜びながら、テレ隠しに「このシケベが!」と言って、更に丸夫の頭を小突くのだ。

 トーゼン周りの女の子は、丸夫にケーベツの視線を向ける。


 こんな時、お抱え絵師の丸夫としては、パシリの悲哀をかみしめていたのだろう。



「そーか! 丸夫こそ、本物のオタクだったって事だ。実は、俺達と遊びたかった……」

 と私。


「いや、むしろ、お前らの〝オタク度〟なんて、俺に比べりゃ〝大甘〟だって、言いたかったんじゃないか?」

 とヘスが言った。




 SFにまつわる思い出を一席。デシタ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ