1.出会い
初投稿なので温かい目で見守って頂けると幸いです。
主人公は最初ちょっとかなりまあまあ挙動不審です。
…なぜ、こんなことに。
松坂 優花ことわたしは、くっそ陰キャである。まじで、信じられないくらい。小学校まではフィーバーしていた記憶があるが、中学に上がるとフィーバーは終わった。ある時一軍にぶつかってしまい、「ごめんね」と謝った。謝ったのだがわたしの影が薄すぎておそらく視界に入っていないのだろう、振り向きもせずお仲間の方に戻っていった。あれは完全なる無視だった、絶対に。うん。
そこからだんだんと交友関係が小さくなっていき、残ったのは同じ部活の子と親友の中の親友だけだ。その子たちの中で自分で言うのもなんだがダントツに頭のいいわたしはまあまあ良い偏差値の女子校に受かった。多分頭の変わりに何かを捨てた。おそらく女子力を。高校が変わったことにより、その仲の良かった中学の友達とは別れることになった。高校ではそこそこに勉強をし、そこそこに友達を作り、そこそこにお金を稼いだ。そのまんま大学に移ったところ、自分が思ったよりも陰キャなことに気付いたのはおよそ2年半ぐらい前のことだ。まあよくよく考えてみればトイレに行った時鏡を見るとみんなキラキラしていたのに正面を見るとキノコが映っていた気がした。…多分そのキノコはわたしだ。
女子校だったことにより物理的に男子との交流がなくなったわたしは、男子に話しかけられず、女子は女子でキラキラ過ぎて近づけもしなかったため、大学で死にかけだった。そんな時話しかけてくれた子がいたことが、大学入学当時のわたしが生き延びた理由だ。
そして、今のわたしが死にかけている理由でもある。
……どうして、キノコのわたしが合コンにいるのか。言っちゃ悪いが、合コンって割と陽キャのイベントじゃないのか?
話しかけてくれた子、つまり杜中 葵ちゃんが「久しぶりに出かけようかな、優花も来る?」と誘ってきたので嬉しくてノリノリで乗ってしまった。今のわたしが思っていることは、ただただあの日のわたしを殴りたいということだけである。
「君、お酒いける? ウーロンハイ頼んだよ」
「いけるいける! ありがとう! ねえ、お名前なに? どこの大学なの?」
あー、目の前の会話が別次元の話にしか見えない。あおいちゃんはなんか気付いたらすごい端にいるし、みんなペアが作られ始めてて、気まずい。この状況でわたしを放り出すとか、あおいちゃんはわたしに死ねと申すのか? そんな愚痴を心で吐き続けていると、目の前に男性が腰を下ろした。反射的に視線を下げる。そうすれば、相手が見えない。気まずくない。素晴らしい。とか考えていると、なんと話しかけてきた。ん?はなし…かけてきた?
「ねえ、君のことさっきから見てたんだけど、なんにも食べてないんじゃない?」
はっ、はなしかけてきた…!?食べてない!?いや、別に食べてないわけじゃない。氷だけど。えっ、顔見えない、けど今更顔を上げられない、やばいどうしよう。
「いえ、そんなことないです、よ」
「ええ? ほんとに? てかさ、言っちゃ悪いけど、君、人数合わせ要員だよね?」
「ひ、そうです、ね、そっ、そう見えますか?」
やばいまって自分から話題を振ってしまった。みすった。あぁああぁ。
「ふふっ」
わ、笑われた…だと!?なんかしたっけ? やばい、男性と話すのが久しぶり過ぎて本当にやばい。
「あはは、全部顔に出てるよ!」
「え、かお、かお…?」
そうつぶやき自分の顔をペタペタ触る。わからなかった。
「君、わかりやすいなぁ。あぁ、ちなみに僕も人数合わせ要員だよ」
「あ、そうなんです、ね…」
な、なるほど…この人も人数合わせ要員だからわたしに話しかけてきたのか。…多分。
「ねぇ、これ多分割り勘だよ。ある程度は食べた量によるかもだけど、見たところ食べたの水? あ、氷もかな、だけでしょ? 食べなきゃ損だよ」
「えっ、え、そうですね、はい」
そうか、合コンとかは割り勘って聞いたことあるな。確かになんも食べてないのに2000円とか払うのは悔しい。というかこの人わたしの食べたものを把握してるのか!? ずっと見てたんだろうか。…まあ、なんか食べるか。
そう思って唐揚げを食べようと机の上を見渡した。あるにはあったが、少し遠い。…これ届くかな? とりま頑張るか。
「…ほっ……取れない…だと…」
「ははっ、どうぞ」
取れなさすぎて苦しんでいると、男性が取ってくれた。ありがたいけど、なんでそんなに手が長いんだ。不平等だ。
「…ね、そういえば名前言ってなかったね。僕の名前はゆうと。如月 ゆうとだよ」
なっ…如月だと。何処かのネットのサイトだとなりたかった苗字ランキング上位だった気がする。ゆうとさんか…漢字は色々思い浮かび過ぎて分からないが、なんか響きはいい。
「え、えっと、わたしは松坂 優花です」
「松坂さんね。ゆうかって言うのは、優しいに花って書いて優花?」
「は、はい。そうです。あ、ゆうとさんのゆう…も、もしかして優しいの優?ですか?」
思わずピンと来た気がしてまたしても自分から話題を振った。でも、不思議と焦る気持ちはなかった。
「あー!そうそう!やっぱり松坂さんも優しいって書くのか!お揃いだね!」
そう言って彼…如月さんは微笑んだ…気がした。見えないから分かんないけど。
「ゆうとの"優"はそれだけど、"と"の方は分かった?」
と…との方か。"と"って考えてみると色々あるな。仁、飛、留、戸、塗…は組み合わせ的になさそうだが、結構出てきた。と…と…と…と…?
「斗…ですか? 北斗七星の斗です」
思いついて、これじゃないか?と一番ピンと来たものを聞いてみると、見えないがぱあっと音がしそうなほど喜んでいそうな雰囲気がしてきた。
「そう! それ! 正解だよ!! 全部一発で当てるなんて松坂さん凄いね!」
「あ、ありが、とうございます…」
そんなに褒められると照れてしまう。そうか…じゃあ、如月 優斗さんってことか。
それから、わたしと如月さんはかなり話した。如月さんはなんというか、ふわふわとした雰囲気がしてとても話しやすかった。顔を上げるタイミングを完全に逃しずっと下を向いていたわたしに何も突っ込むことなく穏やかに話してくれた。
「松坂さんって大学何年生なの?」
「3年です」
「お、じゃあ一個下だね」
「じゃあ如月さん4年生なんですね!」
「そうそう。良かった、こんなタメ聞いててさ、もし、もしも上だったらどうしようかと」
「えー、上に見えなかったんですか?」
「見えないよ―」
「如月さんってどこ出身なんですか?」
「んー? 神奈川だよ」
「え! 同じですね!」
「え、ほんと? あぁ、あと"如月さん"じゃなくて優斗でいいよ」
「優斗さん? じゃあわたしも優花でお願いします!」
「おっけー。優花さんって何市出身なの?」
「えっと、湘南地区の―――」
ずっと話していれば、如月さんと今日始めて会ったことも忘れていろいろ話し、どんどん上機嫌になっていく。
そして、お酒がかなり入っていたことに気付いたのはそろそろお会計…という雰囲気になった頃だった。
「優花さん、大丈夫? …ごめん、もっと早く気付いて止められれば良かったのに」
「いえいえ〜! すっごく楽しかったです〜! あっ、そうだ〜、優斗さん、あのね!」
ああ、ふわふわする。やけに全部キラキラして見えて、物事を深く考えられない。自分が、今どうなっているのかもよく分からない。
「ん?」
「あのねあのね!今日―――」
「あ! やっと見つけた!!!!」
この声は…あおいちゃんだ。そういえば、今日お店についてから1回もあおいちゃんと話してなかったな。そう思って目を向けると、あおいちゃんの隣には優しそうな男の人がいた。
「あおいちゃん?」
「よかった! 一人でこんな夜に帰るかもしれないって思って。それは危ないし、どうしようかと思ってたの。でも…大丈夫そうだね。」
「ああ、君、優花さんの友達?」
「はい、そうです。私が誘ったのに置いていってしまって…」
「あおいちゃーん!! 大丈夫だよ、わたし一人じゃないよ!!」
一人じゃないから大丈夫だと、その男の人と行って大丈夫だと主張する。よく見ると男の人はあおいちゃんから見て席が正面だった人だ。多分だけど。
「ほんとに? ごめん、本当なら私が連れてきたんだから私が一緒に帰るべきだし近くに座るべきだったのに…」
くらくら、ふわふわしてくる。どんどん酔いが回ってくるのが分かる。
「気にしてないよ! あのね、優斗さんと仲良くなったの!」
そうそう、優斗さんっていい人でね、わたしなんかとでも楽しそうに話してくれたんだよ。それでね――
「んんっ! なら、僕が優花さんのお友達に変わって送るよ。君は安心して健司と2次会でも行ってきな」
うん! わたしも優斗さんに送って貰いたいから大丈夫だよ! …健司って誰? まいっか! やった、優斗さんに送って貰えるって。よかった、一人で帰ることにならなそうで。…また、置いてかれるかと思った。
「……。行こうか、優花さん」
うん! 行こー! …あれ、なんで離れていっちゃうの? えー、待ってよー!
「ごめんね、ちょっと待っててね」
分かったぁ。あ、裏路地の方に行っちゃった。何話してるのかなー…
「―――。――…―――ね? ――――――、――――――――――――ら…」
「いえ、――――――――よ。」
あ、戻ってきた。
「ごめんね、帰ろうか」
うん! 帰ろー!!
「…すいません、お願いしますね。優花、またね!」
またねー!! あおいちゃんも気を付けて!
「ふふ、大丈夫だよ。私はこの人と帰るから」
む、あおいちゃんに変なことしないでくださいね!
「う、うん。絶対に同意なくそんなことしないよ。それより、君のほうが―――」
「行こう、優花」
はーい!! 帰ろー!
はっ!!! え、待って今何時?わたしは何をしていた?
ばっと起き上がって辺りを見回す。…はずが、頭が土器で殴られたように痛み、それは叶わなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字は教えて頂けるとありがたいです。




