9
落下しているその数秒の間に、
さまざまなことが豪太の脳裏によぎった。
中でも一番恐怖に感じたのは、もう二度と元の世界に戻れないこと。
その可能性を考えたとき、背筋がヒュっと凍えた。
『どうする、どうする、どうする』
着地地点の近くで、いつもであれば元の世界に戻れるくらいのサイズの水たまりを見つけた。
これを踏み抜くことで、さらに下に落っこってしまわないか、という懸念はあったが、
豪太は帰りたい、というその一心で祈るように水たまりを踏み抜いた。
落ちたその先は、元の世界であった。
『戻ってこれた!』
気付けば両足とも水たまりにたっぷり浸かっている。
踏み抜いたときは気づかなかったが、結構深い窪みの水たまりで、
長靴の中は両足とも、かなり浸水していた。
いつもは不快でイライラするぐらいの浸水っぷりであったが、
無事に現実世界に戻ってこれた喜びの方が大きすぎて、気にもならなかった。
暫くは長靴の中を、グッチャグッチャ言わせながら無事、生還した勢いに身を任せて、
道を我が物顔で闊歩していたが、
段々足が重く、だるくなってきたので、豪太は長靴を脱いで中の水を捨てた。
豪太はようやくそこで、一息つけた気がしたのだった。
家に帰る道中、現実世界ではまだしとしとと雨が降っていたが、豪太はあえて傘をささなかった。
1日に一度しか落ちない、と経験則ではわかっていたが、本当にそうか分からないのと、水たまりに映る世界への恐怖心がそうさせたのであった。
それから、まもなくして梅雨が明けた。
梅雨の最終期間には、だいぶ恐怖心は薄れていたが、それでも探索を尻込みさせるには十分で、一度も潜らなかった。
お読み頂きありがとうございます。元々そんなになかったストックが尽きております(爆)
週2位のペースで、後もう少しの完結まで描き切れればと思っています。それとなんとなく第2部の雰囲気の構想だけ、ぼやっと浮かんでる状況です(笑)
もし良かったら励みになるので高評価宜しくお願いします〜




