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拝借したその傘を持ってみた瞬間、豪太はなんだか気味の悪い傘だという違和感を感じた。

持ち手のフィット感なのか、触り心地なのか、あるいはその両方かもしれない。



手に吸い付くようなフィット感、でも表面はざらざらで持ちやすいとは言えない。絶妙な気持ち悪さだった。



しかし、傘をさしてみても別に雨漏りするわけでもなく、傘としての機能は問題はない。ただサイズが少し小さくて。しばらくたつと肩のあたりが濡れてきてしまった。豪太は早く帰ろうと帰路をいそいだ。



一時の土砂降りからは少し弱まったけど、依然として激しい雨が降っていた。

履いていたのは長靴ではなく普通の靴だったから、できるだけ水たまりは避けて歩いていたけど、前から傘を指しつつ、ふらつきながら接近する自転車については、歩行者道路からはみ出て、避けざるを得ず。

しかめっ面で避けた豪太だったが、ばしゃんと水たまりを踏み抜いてしまった。



『あーぁ。あ?』

突き抜ける感覚。豪太は水たまりを踏んでしまったと思ったのだが、そのまま落下していた。そして瞬く間に着地した。



『景色は元の景色と変わらないけど。ビルも自販機も、空もすべて色が灰色だ』

『水の中にいるみたい』

『え?どういうこと?』



何が起こったかわからず、恐怖で脱力しそうな体を必至に奮い立たせる。

今度はあえて水たまりを踏み抜いてみる。

そうするとまた『落ちた』と感じて、元の世界に戻った。



『なんだこれ?』

景色が早送りで、まるで遊園地のフリーフォールみたいにすり抜けていく感覚。



『怖すぎ。』と思ったけど、『また戻ってこれるならよいか』と思い直し、

豪太は再度水たまりを踏み抜いてみたが、ナニモオキナイ。



『1日1往復とか?回数制限あるとか?』

『そもそもなぜこんな現象が?』考えてもわからないことが起こり、豪太はゾクゾクと感じ身震いをした。



傘から手を離して、踏み抜いてみたけどやはりだめ。

『落下は傘が原因だと思うけど』

豪太はすぐに確かめられないもどかしさを感じつつ、帰宅した。

激しい雨のことも意識から薄れるくらい、豪太は興奮していた。


あっという間に家に着いて、傘をそのまま家の中に入れるのは気味が悪かったが、盗まれたら大変だと思い、でも自分の部屋まで持って入る勇気はなくて、普通にシューズクロークにある傘立てにさした。



他の家族に使われても大変だが、そこは意識外になっていた。



豪太は、今日起こった出来事を親に話そうかとも思ったけど、夢みたいな話で、自分の中でも整理をつけることができず。結局話せず、食事中も極端に無口になってしまい、親に不審がられたが、何も言えなかった。


入浴時も浴槽の水面をみて少し躊躇したもの、特に何も起こらず。

さっぱりして自室に戻った豪太は、心身ともに疲れていたのか、あっという間に夢の世界に旅立っていった。

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