聖女に呪われた国ー アスロッド王国の末路 ー
古アスロッド王国終焉録 後に堕天王国記(滅亡の記録)と表記
ガリアン歴555年 霜月
元王国騎士カイル=レオノール、密告を携え聖王国に至る。
その一言が、王国の命運を揺るがす引き金となった。
556年 早春
聖王国が証言を公開。秘められてきた「聖女の搾取」が暴かれる。
かつて沈黙していた者たちが次々と声を上げ、真実は雪崩のように広がった。
556年 春
首都の神官や学者が逃げ出し、王都の権威は揺らぐ。
農村では「祈りは届かない」と人々が嘆き、徴税に刃を向けた。
556年 皐月
空は裂け、雨は途絶える。旱魃が大地を焦がし、収穫は失われた。
民は口にする。「女神が、我らを見捨てた」と。
556年 夏
洪水と飢饉が追い討ちをかける。人々は国外へと逃げ、村は空になる。
山野から溢れた魔獣が街道を蹂躙し、子らの泣き声すら掻き消した。
556年 葉月
反旗を翻した北辺の都市が陥落。火柱は三日三晩消えず、夜空を焦がした。
騎士団を襲った病は剣を握る力を奪い、英雄たちの名を次々と葬った。
556年 長月
王都で暴動。人々の怒声が城壁にこだまし、やがて神殿が炎に沈む。
聖女の名を刻んだ古き記録も、灰となり風に散った。
556年 神無月
反乱軍が合流し、王都を囲む。補給を絶たれた城下に、飢えと恐怖が広がる。
灯火は一つずつ消え、王都は死者の街と化した。
556年 霜降月未明
ついに王宮が炎に包まれた。
最後まで抗った王家の血筋は途絶え、王都は瓦礫と化す。
歴史の記録
──ガリアン歴五百五十六年、霜降月未明。アスロッド王国、滅亡。
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私は、幾つかの散逸した記録を拾い集め、この滅亡の歴史をまとめた。
その中には、かつて聖女と呼ばれたロージィが残した薬草の手記がある。小さな庭で育てられた草花の記録に、彼女の生きた証が確かに刻まれていた。
また、王国を去った騎士カイル=レオノールの証言も、断片ながら手元に残されている。彼の筆跡は乱れていたが、最後まで聖女の名を守ろうとした意志が読み取れた。
私は彼らと直接会ったことはない。ただ、遺された文字の中に、人としての温もりを感じる。
そして歴史は語る。国は滅びても、彼らが選んだ道が、決して無意味ではなかったことを。
記す者:アレシウス
ガリアン歴六百八十七年、聖王国シエルの片隅にて
最後までお付き合いくださりありがとうございました。楽しでいただけると幸いです。




