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「ヤンデレヒロインが落ち込んでる主人公を励ます話」

作者: 結晶蜘蛛


 ――先日にクラウドマンによる強盗活動による被害は――

 ――やはり、いままでの活動はカモフラージュで本当は悪人だったんですよーー

 ――我々は文字通り煙にまかれていたわけですね――


 ニュースで自分のことが流れている。

 クラウドマン――天和てんわ 晴海はるうみは悪魔に憑依され、力を得た。

 ほかにも同じようにして力を得た人たちもいるようで、友人の中村優斗なかむらゆうとが同じような悪魔怪人に襲われたため、自分は同じような目に合う人を減らそうと思い、止める方に回ることにした。

 しかし、その友人である優斗が悪魔怪人に変身して人を襲っているのを発見していたため止めることにした。

 優斗は怪人に襲われた悔しさから悪魔を呼び寄せ、憑依されたようだ。

 そして、力を振るって悪人を倒してるうちに楽しくなっていってエスカレートしていった。


「――オレとお前は同じだ! オレと同じく敵を倒して楽しんでいるだけだ」

「違う!」

「違わない! 違わないなら証明して見せろよ!」


 そして、自分は優斗を止めた。

 楽しんで拳を振るったことはなかったはずだ。

 しかし、優斗の言う通り、もしかすると無意識のうちに力を振るうことを楽しんでいたのかもしれないと思い、活動を止めることにした。

 街角のテレビから聞こえてきた声からは自分の偽物が活動しているようだ。

 しかし、ここで止めに行くべきなのだろうか。

 敵を傷つけるのを楽しんでいるのではないだろうか。

 そんなことはない、はず、だが、確証が持てない。

 優斗は長い付き合いの友人だった。

 彼が自分を親の仇のように睨みるけて来たことが……いまだに目に焼き付いている。


「さすがに……疲れたなぁ……」


 そして、アパートの自室を開けた。



「お待ちしておりました、あなた様! ささ、鳳と一緒になりましょう」

「………………」


 思わず自分は硬直した。

 アパートの部屋に白魚のような指を床についた美女が頭を下げて出迎えてくれた。

 張りのある肌、均整のとれた目鼻だが少女味を少しまとっている。

 胸元が大きく開いているためか豊満な胸の上半分が見えている。

 おおとり 青華せいか

 前に事件でかかわった女性だ。

 鳳の小ぶりな唇が開く、


「どうして玄関で固まっているのです? ささ、疲れているでしょう。どうか、鳳のそばへ。ごはんを食べますか? それともお風呂? むしろ鳳を食べますか?」

「その前にどうして……どうやって僕の部屋に入ったのかな?」

「管理人の方とお話をしたら、快く開けてくれました。あの方の好意ですわね」

「……能力を悪用しているのなら――」

「た、ただ、話を聞いてもらっただけです。悪いことには使ってませんから!」


 ……自分の部屋に勝手に入るのは悪いことではないのだろうか?


「大丈夫です、あなた様に懲らしめられましたから前回みたいなことはやりません。むしろ、いまはあなた様のことが大好きですから!」


 鳳は悪魔怪人だ。

 能力は「熱」……といっても心に作用する熱で人を熱狂させることができる。

 昔、地下アイドルの星野ほしの 瑠奈るなにはまりこんだ鳳は、星野を人気アイドルにしようと能力を行使し、星野に熱狂した人間をたくさん作りだそうとした。

 しかし、その熱狂っぷりは常軌を逸しており、ファン同士で殺し合いになりかけたので、自分が止めることに入った。

 その後、なぜか自分が気に入られたんだけど……。


「それで何でここに?」

「あなた様が……疲れているだろうと思いまして。慰めに来ました」


 どうぞ、こちらへと、言うと、食卓には料理が並んでいた。


「食材は鳳が自分で買いましたから心配しなくていいわ」

「うれしいけど……どうしてわかったの?」

「鳳はあなた様のことをずっと見てましたから。話をご友人との話でひどくお疲れになったのは容易に想像がつきますわ。ですから、癒されてもらおうと思いまして」

「……ありがとう」


 湯気が上がっているコンソメスープ、こんがりきつね色に焼かれた鶏もも肉、複数の野菜が盛り付けらられたサラダ。

 もも肉を一つ食べてみたけど、噛み応えのある弾力と肉汁がにじんできてうまい。


「おいしい……。料理、相変わらず料理が上手だね」

「うふふふ、うれしい。鳳のすべてはあなた様のためにありますから。どんどん食べてください」

「そこまでかしこまらなくてもいいんだけど……」


 けど、うれしそうに笑う鳳に自分の箸もよどみなくうごいていった。

 誰かと夕食を食べるのも久しぶりな気がするな。

 一緒に食べるとおいしいものだ。


「何も言わないのかい?」

「あなた様が話したいなら聞きますわ」

「……この前、友人と喧嘩してね。自分は怪人を止めるつもりで戦っていたけど、もしかすると暴力を振るうのが楽しんでたのかなってなって、たたかえなくなっちゃったんだ」

「誰に言われたんですの?」

「長い間つきあいのあった友人だよ。だから、本当に疲れちゃった」

「そうですのね」


 後頭部に柔らかな感触。

 鳳の手が僕の頭をなでる。


「あなた様が休みたいのでしたら、鳳はいつまでも休んでいいと思いますわ。その間に近寄るすべてを鳳が滅しましょう」

「……ありがとう」

「それにあなた様が暴力を楽しんでいるなんてありえません。鳳と戦った時もほかの人と戦った時も、あなた様は苦しそうに拳を振るっていました。そんな人が楽しんでいるはずありえませんわ」

「……ありがとう。もう少しこのままでいいかな?」

「ええ、あなた様が望むのなら」


 自分は鳳の言葉に甘えて、少しの間だけ鳳に頭に預けた。




「もういきますの? ずっといてくれていいですのに」

「自分の偽物をずっと放っておけないし……犠牲者も出てるからね」

「そうですか……なら、鳳はずっとここで待ってます。あなた様が帰ってくる場所を守ってますから、ご安心なさってください。

もし、世界のすべてがあなたさまの敵に回ったとしても、鳳だけはあなた様の味方です」

「うん。言ってくるよ」

「いってらっしゃいまし」


 僕は鳳に手を振って玄関を後にした。

 うん、心が軽くなった気がする。

 帰ったら鳳に感謝しないとね。

 さて――偽物退治をしよう。



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