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第二話:発見と発進

前回とは打って変わって……

 ——都内のとある対生物災害組織の指令室にて——


(はぁ、一体あれはどこに消えた……)


 数年前に起きた大規模な生物災害に対応すべく、国が同時期に設立した対生物災害組、”Corresponding Mutant Organism Hazard Organization”(対変異生物災害対応組織)通称”CMOHO(クモホ)”の関東部隊で隊長を務めている芦名魁人(アシナカイト)は指令室で頭を悩ませていた。原因は先日ようやく姿を見せたとある"Type C"の一匹が未だ逃走中だからである。


(久しぶりだな、こんな風に捜索に手こずるのも……)


 普段なら優秀な追跡要員やサポーターがいるのだが、生憎今は活動できない状態にあったり、別件で出払っていたりして、それが捜索を難航させていた。


(あいつのメンテナンスが終わるのを待つのは無理がある……なにか少しでもいいから情報があれば……)


 そんなことを考えているとまるで思考を読まれたかのように情報が部下のオペレーターから伝えられた。


「群馬県北部の山林近くの防犯カメラに例のやつが映ったとの情報です!」

「群馬ぁ? 随分奥地に行ったな」


 魁人が言うのも無理はない、前回目撃の報告があったのは一日前、東京の八王寺あたりなのだ。それから一切、目撃されたりも、どこかに被害を出したという報告もないということは、約160~180㎞の距離を一気に移動していることになる。


(このまま北へ進まれると厄介だな……)


「ドローンはどうだ? 追えそうか?」

「なんとか3台体制で追っていますが、ここから先はおそらく森林になるので……」

「上空から正確に追うのは難しくなるわけだな」

「おし、そうならドローンに被害が出てもいいから意地でも追跡ビーコンを奴につけろ。あとはこっちでなんとかしてみる」

「了解です!」


 一旦追跡は部下たちに任せ、魁人は準備に取り掛かかることにした。


(この距離なら本来はヘリを使いたいが、トラブル続きで生憎ヘリも出払ってるんだよなぁ……ってなるとやっぱバイクしかないか)


 そう決断し、車両管理棟のスタッフに車両の準備の連絡を入れ、魁人自身は装備を身に着けに更衣室へ向かった。


(ったく、こんな任務なのに出れるのが俺だけってのがここの人手不足を物語ってるよなぁ……あと一人でも増えりゃまだましになるんだが……)


 嘆きつつ更衣室にたどり着いた。目の前に複数ある少々特殊なロッカーに自分の暗証番号を入力すると、自身の装備品一式が”ガシャン!”という音と共に用意される。まず安全靴に履き替えると、次は下半身用と上半身用で分かれているCMOHO隊員専用の安全服に着替える。Type C達の牙や爪はおろか一部銃弾クラスを通さない優れものだ。


(まあ、俺はこれ着る意味あんまないんだけど……)


 彼がこう言う理由はいずれ分かるので悪しからず……

 

 安全服とそのオプション品であるナイフや弾薬なんかををよしなに着け終わると、次は頭部の装備品であるHUDディスプレイ内蔵のシールドが装着されているヘルメットを被り、内蔵の通信機の感度を確認。良好そうだ。最後に動作確認を済ました武器類だ。サイドアームのH&K社製の拳銃であるSFP9を腰のホルスターに突っ込み、彼の専用装備であるライオットシールド、ベネリM4を背中に背負った。


(よし、バイクの方はどうかな?)


 車両管理棟に通信機で確認するともう用意完了とのことだった。


(相変わらず仕事が早くて助かる)


 そう心でスタッフを称賛しつつ、更衣室の両サイドにあるエレベーターで車両管理棟まで下りる。

下りた先でCMOHOに入ってから使い続けているバイク、2019年式YAMAHA YZF-R1が黒い車体と追加された赤い回転灯を光らせながら、リフト上で待機していた。


「言われた通り”増槽”もつけといたよ」

「あぁ、有難う。今回少しばかり遠出だから必要なんだ」


 スタッフが”増槽”と言ったのはバイクにつける追加燃料タンクのことだ。何故そんな呼び方をしているかというと、役目が非常に兵器の方の増槽そっくりだからだ。航続距離を増やし、空になったらパージするという使い方のため、いつしかそういう名前になっていた。ちなみに搭載場所はパニアケースのように車体後部に装着する。どうしても車体重量が増えたり、バランスが悪化してしまうが航続距離には変えられない。

 魁人は増槽を含めた車体の最終点検を済ますと、R1に跨り、スタッフに準備完了の合図を送った。スタッフが操作盤を使いリフトを作動させる。するとリフトは周囲の金網を上げ、安全になったことを確認し、ゆっくりと斜め上の首都高速接続口へ上昇を始めた。リフト内の電光掲示板にエンジン暖気開始のサインが表示される。魁人は指示に従いキーがオンになっているのを確認し、スタータースイッチ兼用のキルスイッチを押し込んだ。するとR1は”キュキュッ、キュルキュル”と不機嫌そうな音を立ててエンジンを始動させ、暖気運転を始めた。”ドコドコドコ……”というクロスプレーンエンジン特有の音に包まれながら上昇中の魁人に部下からの追加情報が入った。


「隊長、なんとか対象への追跡ビーコンの付着完了です。今そちらのHUDにまとめて情報を表示します」

「了解。慣れないのに良くやってくれた」

「いやぁ、中々しんどかったです。ドローンであれを追うの……」

「引き続き何かあったら情報を送ってくれ」

「了解です」


 指令室との通信を終え、HUDを起動する。すると目標地点までの位置、追跡ビーコンのバッテリー残量、自身の身体の損傷具合等様々な情報が視界を妨げないよう上手く表示されていく。一通り確認しR1のメーターに目を落とすと暖気中のサインが消えていた。R1も準備完了だ。そうこうしているうちにリフトが首都高速への接続用道路へ到着し正面ゲートが開いた。だが、まだ発進はできない。とある作業の完了を待たなければいけないのだ。数秒待つと電光掲示板に待っていた情報である”交通規制完了まであと10sec”の文字が表示された。同時に電光掲示板が”ローンチコントロール準備開始”と追加の指示を表示した。今回も指示に従い、魁人はギアを一速に入れ、ローンチコントロールを起動しクラッチを握った。電光掲示板の残り時間表示が2secになった瞬間スロットルを全開にすると、R1は発進に最適な回転数を自動で維持する。そして残り時間が0secになった瞬間、魁人はクラッチを離した。するとR1はけたたましい音を奏でながらとんでもない勢いで車体を加速させていく。100km/hまでの加速を数秒経たずで終わらせ、そのままどんどん速度が上昇していく。目標巡行速度の240km/hまで加速を終え、魁人は接続口から首都高速の関越自動車道へ繋がるルートに合流していく。


(規制は問題ないっぽいな)


 そんな速度で走行していいのかと思われるかもしれないが、彼の乗っているR1は緊急車両として登録を受けているので基本速度に縛りは無い。それでも一般車もいる中をこの速度は危険では?とも思われるだろうが、実は現在の高速を含めた主要な道路には、強制的にCMOHO隊員が使うルート上の一般車を規制するシステムが関東全域に備わっている為一般車を巻き込むことはない。CMOHO隊員は空っぽの道路をすっ飛ばして目的地まで辿りつけるという訳だ。


(さて、目的地まで約160㎞。頼むからそこからあまり動くなよ)


 そう祈りつつ、魁人は群馬県へ超高速巡行で向かうのだった……

ようやく書きたいところまで差し掛かれました。

とりあえずガンバリマス

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