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序章:ハジマリハジマリ

初投稿になります。

「体が……熱い……」


 青年は突然自身の体に発生したあまりの熱に気を失おうとしていた。

徐々に聞こえなくなりつつある耳に辺りで叫ぶ人々の声がかすかに飛び込んでくる。


「まだ、何も分かって無い……のに……何も……返せてないのに……」


必死に意識を保とうとした青年だが、彼にそこまでの体力、気力はもう残っていなかった。

そのまま彼は意識を失った。だが、彼はまだ知らない。この熱と同時に自信の体に大きな変化、いや進化? が訪れていることに……




(そろそろ休憩かな)


 若干白髪交じりの青年、弐可( ニカ)は”ふぅ”と一息ついた。ここは群馬の山中のとある小さな村。とある古い蔵の中で早朝から作業し始めて時刻はもう12時前になろうとしていた。


(いい加減、ここでの生活にも慣れてきたかな)


 この村に来て早2ヶ月、まさかここで暮らすことになるとは思っていなかった。というのも弐可は、別にここに引っ越してきたわけでも、親戚の家に遊びに来ているわけでもないからである。”親戚”といったが弐可にはそもそも家族がいるのか、自分は誰から生まれたのか、どこにいたのか何も分からないのだ。ここにいる訳は村の人が村の近くの県道で倒れている弐可を見つけてくれたからである。その人の家で目を覚ました弐可だったが、一応読み書きや道具の扱いは人並みに出来るものの、それまでの記憶を一切思い出せず、自分のことは何も分からないという状態だった。村の人が警察に連絡をして最近行方不明になった人はいないか聞いてくれたものの、この村はおろかここ最近、弐可のような青年が行方不明になったという事件は他県でもなかったという。”弐可”という名前も本名ではない。’弐’という文字は発見されたとき着ていた服にうっすら残っていた字から、’可’は拾ってくれた人の娘さんの名前である”可那”から一文字拝借させてもらっている。そのため弐可には苗字がない。いや、あったのかもしれないが……思い出せない以上どうしようもない。なんなら”弐可”という呼称を付けてもらっただけ遥かに幸せである。


(結構綺麗になったと思うんだけど……)


 そう思いながら弐可が行っていた作業は蔵の整理と掃除である。古くから手つかずだったらしく、かなり中が汚れて一部朽ちていたが、それでもなんとか埃やカビをもらった作業書通りに落とし、古い管理記録とにらめっこしながら、散らばっていた物を所定の位置へと戻した。今の弐可の生活を支えているのはこういった村の人から頼まれる手伝い、言い換えればアルバイトのようなものである。かれこれ1か月ちょっと、こういった手伝いで貰える少々のお金と作物で食いつないでいた。


(うぅ……まただ……また借りなきゃ)


「すいませーん。またトイレ借りてもいいですか?」


 苦笑い交じりに手伝い先の家のおばあちゃんにそう伝えると、笑いながら”若いのに随分近いねアンタ”と言われてしまった。そう、弐可が”まただ……”と嘆いたのは自身の代謝の”良さ”である。良い分には嘆かなくても、と思うかもしれないが”良い”というよりは”いくら何でも良すぎる”のである。どういうことかというと、紙なんかで指先を切っても1時間あれば傷跡すらなくなっていたり、風邪を引いたら30分寝たら治ってたりとちょっと不気味なレベルなのだ。ただそれだけだとと良いことづくめに聞こえるが、もちろん弊害もたくさんある。まず先ほどのようにトイレがとてつもなく近い。外気が冷えているわけでもないのに2,30分おきに尿意におそわれたり、食事をしてすぐに、なんならしている最中に大きい方の便意が来たり、少し力仕事をしただけで半袖になりたいほど体が熱くなり、汗を滝のようにかいて脱水症状が出かけたり、(あと何故か髪が生え変わっても白髪ばっかりだったり……)と、慣れるまではとても生活できたもんじゃなかったのである。実際今日の手伝いも、かなり外気温が低いにもかかわらず村のみんながしっかり着込んでいるのに対し弐可は半袖である。


(はあ、まさか自分の体がこんなに使いずらいとは……)


 生活に支障が出ていたので所持金の半分をはたいて一応村唯一の医者にコッソリ(身分証明書がないので)診てもらったのだが、経験豊富そうな老先生でも弐可のような体は初めてだったらしく、”一旦私の知り合いの医者たちに症状を伝えて調べてもらうよ。”と言われてしまった。まあ、こんな訳の分からない奴に対して適当に流さず、そこまでやってくれるだけ幸運かと思いつつ、自分でもこの不思議な体について色々調べてみることにした。一応この村にもネット回線はあるので、まずは自分と近い症例がないのか村の人に頼んでパソコンを借りて調べてみることにした。するとバセドウ病など甲状腺に関する代謝が良すぎると起こる症状などは出てきたものの、自分のと似たものは出てこなかった。


(一体以前の僕は何をしている人間だったのだろう……)

(激しく動くスポーツでもやっていたのだろうか? それとも自衛隊にでも所属……いや流石にそれは考えすぎか)


 そんなことを考えながら小便を済ませ、手を洗い終わると家の人に声をかけられた。


「もう、作業は終わったのかい?」

「あ、はい。掃除、片付け共に言われた通りにしました。確認されますか?」

「そうだね。疑うわけじゃないけど見ようか」


 おばあちゃんとともに蔵に向かって中を確認してもらった。


「うん、大分綺麗にしてくれたね。助かったよ。何分この年じゃこんな大きい蔵の掃除なんてできなくてねぇ」

「いえいえ、自分みたいな見ず知らずの人間で良ければいつでも手伝いますので」

「あんたも苦労するねぇ。その若さで記憶も何もないなんて……」

「まあ、皆さんのような優しい人たちがいる村で見つけてもらえただけ、自分は幸せもんですよ」

「ふふ、前向きなのね。そうだ、これ今日の分のお金と野菜ね。あと、これ家で余っちゃったからついでにあげるわ」


 おばあちゃんから報酬と一緒に渡されたのは木目状の紙に包まれたものだった。


「これは?」

「イノシシ肉よ。夫が獲ってきて本当は孫と食べる予定だったんだけど、来れなくなっちゃったみたいで、余っちゃってたのよ」

「なるほど。ありがとうございます!」


 その後おばあちゃんと談笑しつつ家路についた。


 弐可が暮らしているのは自分を見つけてくれた人の家の荷物置き小屋である。元々あまり中に荷物を置いてなかったらしく、親切にも少しだけあった荷物を移動させてくれて弐可の生活スペースを作ってくれた。台所なんかも時たま貸してくれるのでかなり助かっている。今日も食べ物をもらったので台所を借りた。メニューは手伝い先のおばあちゃんにもらったイノシシ肉を使った料理である。完璧にメニュー通り……とはいかなかったがそれなりの味のものが出来上がった。


(ふぅ、久々に肉を食べた気がする)

(さて、食事も終わったし寝るかな)


 オイオイ午後一から睡眠かよ!と思われるかもしれないが、こうしなければ夜まで持たないのである。というのも先述したように弐可の体はすこぶる代謝が良い、言い換えればエネルギー消費量も人一倍、いや、なんなら三倍くらい多いのである。そのため下手に活動時間を増やすと脱水や栄養不足で倒れかねないのだ。ここで暮らして1ヶ月たって理解したことである。


 もらった敷布団を引き、そのままもう消えつつある満腹感と共に就寝した。


 この時村の近くで異常が起きつつあることを弐可はまだ知らない。



書きたいとこまで出せていないのでガンバリマス

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