8話、魔人族の里
~魔人さん視点~
エルフ族の里を立った日の夕暮れ、なんとか日が落ちる前に魔人族の里に到着できた。
少なくともここで生活していく限り、アルベイン王国からの手出しは無くなる。
各種族同盟にて、もしもアルベイン王国からちょっかいを受けた場合、全種族が団結して追い払うというものもある。
地理的に、ちょっかいを掛けられるとすればまずエルフ族の里だ。
その場合まずは最も近い場所に里がある獣人族が応援に駆けつける
さらに僕たち魔人族は全員が飛行能力を持つのですぐに駆けつけられる。
他にもハーピー族や天族も飛べるし、竜人族の中にも飛べる者は存在している。
エルフ族と獣人族が持ちこたえている間に僕たち飛べる種族が応援に向かう、この約束が取り決められたのはおよそ100年前……
というか、この同盟の発案者は僕である。盟主も僕である。
全ての種族の立場は平等。ただし、僕が1番強いよ? という謎の魔王ムーブで結んだ同盟である。
完全に我が名のもとに! だから魔王ロールだね。思い出したくない。
今思えばよくみんな賛同して加盟したよな……
まぁ完全に黒歴史。はやく忘れ去ってもらいたいのだが、亜人というのは寿命が長い種族も多い。
エルフ族の族長もそうだが、同盟を締結した本人がまだ生きている種族が大半なのだ。
恥ずかしい……
いや、同盟の内容自体は今でもいい物だと思っている。
相互安全保障条約みたいなものだしね。
この同盟のおかげで元々あまり仲の良くなかったエルフ族と獣人族も渋々交流が始まり、今では普通に仲良し種族になったからな。
まぁそんな訳で亜人領は安心安全な土地なのだ。
保護した女性たちには安心して過ごしてもらいたいし、グレンくんとルーシェちゃんにはのびのびと育ってもらいたい。
そのためなら僕は力を使うことを躊躇しない。
「あら、アザトゥース。おかえりなさい」
「ただいまかーちゃん」
「帰ってきたってことはようやく働く気になったの?」
「いや……」
まぁ……うん。この6人の安全のためなら……
「ホントあんたは図体と力だけは大きくなって……はぁ、まぁいいわ、それよりそっちの人間たちのことを紹介して貰えるかしら?」
「わかったよかーちゃん。ところでとーちゃんは?」
一応とーちゃんが魔人族の族長だからな、話を通しておかないと……
「あの人なら家でゴロゴロしてるわよ。ほんと親子揃って……」
「かーちゃん今は勘弁してよ……」
ブツブツと文句を垂れ流すかーちゃんを宥めながら実家に入る。
かーちゃんの言葉通りとーちゃんはリビングのソファでダラダラしていた。
働けとーちゃん。お前族長だろうが。
「ん? アザトゥースか?」
「ただいまとーちゃん。ちょっと話があるから起きてよ」
僕たちがリビングに入るととーちゃんは顔を上げこちらを見た。
僕の後ろに居る人間を見てとーちゃんはニヤリと笑った。
「アザトゥース、お前は変わり者だと思っていたが……種族の壁を越えたハーレムを作るとはさすがは……」
「ぶん殴るぞクソ親父」
言うが早いか、とりあえずぶん殴ってから説明を始める。
隣に座ったかーちゃんが怖いのか、とーちゃんは大人しく話を聞いていた。
「というわけでこの6人を魔人の里で保護したいんだ」
「なるほどな、噂には聞いていたが……人間の国とはやはり恐ろしい場所なんだな」
とーちゃんはここで人間を保護することに反対しないようだ。
まぁ亜人領全体として、割と困ってる人は保護したりしているから今更か。
「わかった。許可しよう。その代わりアザトゥース、お前は働け」
「ぐぬぬ……」
「同盟の盟主はお前だろうが! なんで俺がお前の代わりに働かないといけないんだ、」
「うるせぇクソ親父! 可愛い可愛い息子の頼みだろうが! 黙って働け!」
「お前は可愛くない!」
「なん……だと!?」
僕が可愛くない? なんて親だ!
「はいはいそこまで。保護の件は了承したよ。住む場所は……」
「ふぅ、アザトゥースと話しているとこうなるからいけない。お嬢さん方、人間の多い地区と少ない地区どちらがいい?」
「おい……」
とーちゃん……
「あの……出来ればあまり人間の居ない場所の方がいいです」
エルフ族の里の宿では店主と普通に話していたが、やはり人間は怖いらしい。
「分かった。ならそうしよう。家を準備するから数日はこの家に滞在するといい」
「そうね。何かあればこの糞ガキに言えばいいからね」
かーちゃんまで!
紆余曲折を経てとりあえず全員この里で暮らしていくことが決まった。
さて、頑張ってグレンくんとルーシェちゃんを育てないとな……




