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最強の魔人に育てられた少年は英雄へと至る  作者: 愛飢男
序章……幼年期、魔人さん編
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1話、平和な村の生活

「やぁハンクさん! 今日も魔人さんに届けものかい?」

「おうリック! 魔人さんのおかげで平和だからな、お前も行くか?」

「今日は収穫だから忙しいんで遠慮しときます。またハンクさんに渡すから俺の畑で採れた野菜を魔人さんに届けてくださいよ」

「わかった、じゃあ頑張れよ」

「ハンクさんもお気を付けて!」


 季節は実りの秋、昨日採れた魚を袋に詰めて魔人さんに届けに行く道中最近村の仲間に加わったリックと一緒になり挨拶を交わす。


 リックが以前住んでいた村は……というかこの国のどこも同じらしいがこの村の外は地獄だそうだ。


 俺はこの村を開拓した初期移民同士の間に生まれたから外のことはあまり知らない。


 しかし新たに移住してくる人たちの話を聞く限り、王国平民である限り人間らしい生活を望むことはほぼ不可能だということくらいは知っている。


 リックもそんな世界で生きていた男で、俺の兄貴が行っている移民集めに応じて移民してきたまだ20になるかならないかの若者だ。


 なんでも村長……親父の話では移民を募らないとこの村は血の限界? とかいうのでいずれ滅ぶ運命にあるそうだ。


 兄貴なら親父から話を聞いて理解しているのだろうけど俺にはちんぷんかんぷんだ。


 親父は、元々貴族に仕える役人だったらしい。

 平民の中ではかなり裕福な生活が出来ていたらしいのだが、ある時親父の妹、俺からすると叔母を差し出せと貴族に言われたらしい。


 親父の親父、つまり俺の祖父はなんとか断ろうとしたそうなのだが、それが貴族の怒りを買ってしまいその場で首を刎ねられたそうだ。


 祖父を殺したことで貴族の怒りは一旦鎮まったらしく、その日はそれで終わったらしい。


 しかし後日、その貴族の遣いがやって来て叔母に貴族の館まで自らの足で来るようにと命令したそうだ。


 その命令で親父は逃げ出す覚悟を決めたらしい。


 祖母は昔から体が弱く、目の前で祖父が殺されたことで大層心を病んでいた。

 逃げ出す直前「足でまといの私を殺してから逃げてくれ」と祖母に涙ながらに懇願されて親父は泣く泣く祖母を殺害、叔母を連れて逃げたそうだ。


「母さんを連れて逃げられないことは分かりきっていた。かといって置いて逃げれば母さんがどんな目に遭わされるか……断腸の思いだった」


 これが親父がこぼした言葉であった。


 親父は街の周辺に点在する農村に身を潜めながら仲間を募り、北へと逃げた。

 そこでここの土地を発見、仲間と共に開墾や狩り、採集にと必死に働いたそうだ。


 そんな時に現れたのが魔人さん。


 どうも親父たちがここに訪れる数十年前には村に住み着いていて、森の外が騒がしいことに気付いて様子を見に来たそうだ。


 突如現れた青黒い肌に蝙蝠のような翼、頭には立派な角が生えているこれぞ魔人! な姿を見た親父たちは全滅を覚悟したそうだ。


 しかし、そんな予想に反して魔人は気さくに声をかけてきたらしい。


「お困りですか?」

「え、えぇ……ここに村を作りたいのですが……」

「村ですか、いいですね。では少しばかり力を貸しましょう」


 それから魔人さんはその膨大な魔力を使い草原を畑に変え、土を操作して家屋を作り、圧倒的破壊力の魔法で岩を消し飛ばした。


 何年も掛けて開発する予定だった村が、魔人さんの協力であっという間に形になったのだ。


 魔人さんは更にその魔法で井戸を掘り、近くの川から水を引き、さらにそこ川が氾濫しないよう治水工事までやってくれたそうだ。


 村のみんなは当然魔人さんを神のように崇めた。

 しかし魔人さんは「そういう扱いは嫌です。普通に仲良くしてください」とその扱いを断ってしまった。


 それなら一緒に暮らそうと親父は提案したそうなのだが、違う種族の自分がいるのはよろしくないと断り引き続き森の中で生活することを望んだ。


 そこから魔人さんとの交流が始まり、今では親父の後を引き継いで俺が魔人さんにおすそ分けを持って行っているわけだ。


「魔人さーん! 居ますか? ハンクです」


 扉を叩いて魔人さんを呼ぶ。

「はーい」と返事があり、すぐに扉は開かれた。


「こんにちは、今日はこの間言っていた通り魚を持ってきましたよ!」


 どっこいしょ、と担いできた袋を降ろして魔人さんに手渡す。


「おお! ありがとうございます! そうだ、ちょっと珍しいものを見つけまして……」


 魔人さんは魔力で異空間を作り出してそこに手を突っ込んでゴソゴソと何かを探し始めた。


「あったあった。山桃です。みんなで食べてください」


 魔人さんは一抱えもありそうな山桃を取り出して差し出してくる。


「こんなに……」

「まだまだたくさんあるんですよ。ほら、グレンくんも喜ぶでしょう?」

「それは……はい! ありがとうございます!」


 この魔人さんは受け取りを断ると悲しそうな顔をする。

 それに、一人息子のグレンの名前を出されると父親としては断れない。


「おっと、すみません、これじゃ運び辛いですよね」


 俺が山桃の山を受け取ろうとすると、いくつか落としてしまったのを見て魔人さんは袋を用意してくれた。


「何から何までありがとうございます。またいつでも村に遊びに来てください。グレンも喜びます」

「そうですね、それなら近いうちに伺おうかな? グレンくんの大きくなっているところも見たいですしね」


 魔人さんは親父が若い頃からずっと見守ってくれている。

 その繋がりなのか、親父の子供である俺や兄貴、孫であるグレンたちのことを大層可愛がってくれている。


 グレンも魔人さんに会いたいと言っていたので、この事を伝えると喜ぶだろう。


「では戻ります。山桃ありがとうございます」

「こちらこそ美味しい魚をありがとうございます。道中お気を付けて」


 魔人さんに別れを告げて来た道を引き返す。


 しかしまた貴重なものを貰ってしまった……

 この山桃は村のみんなで食べることにしよう。


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