18話、観光
本日宿泊予定の宿に昼食を食べに行く途中で見つけた屋台で唐揚げを購入、それを持って宿へと向かった。
宿泊の受付を済ませて食堂へ、ランチを注文するとすぐに運ばれてきた。
メニューはパンにシチュー、サラダと一般的なもの。
パンをちぎってシチューに浸して一口食べてみる。
「うーん……」
正直、イマイチだ。
表現するのが難しいが、味に深みがないというか、単調と言うか……
続けてサラダを口に入れる。
塩だけで味付けされたサラダもあまり美味しくない。
仕方ないと諦めて先程屋台で購入した唐揚げを取り出して齧り付く。
口の中に広がる肉汁……じゃないなこれ、油だ。
師匠は想像の倍は油っこいと言っていたが、倍どころの騒ぎでは無い。
師匠やおばあちゃんが作ってくれるサクサクカリカリジューシーな唐揚げとは全く別物だと感じた。
これは……しかしせっかく師匠に買ってもらったもの、残すわけにもいかずになんとか全てを食べきった。
「ご馳走様でした」
昔師匠に教わった通り手を合わせて食事を作ってくれた人や食材に感謝を捧げる。
本音を言うと、美味しくなかったので作ってくれた人に対する感謝は控えめだ。
師匠は平然と食べていたが、ルーシェも俺と同じ気持ちなのか、なんだかモヤモヤしたような顔で手を合わせていた。
「じゃあ、観光しようか」
食事を終えて宿を出る。
俺たちは3人連れ立ってドワーフ族の里を見て回った。
魔人族の里とは違い、ドワーフ族の里の大半は洞窟内に作られている。
師匠の解説によると、最初は外に街を作っていたが、山には魔物も多い。
外敵から身を守るために掘り進めた坑道を土属性魔法で補強しながら拡張、そこに街を築き始めたそうだ。
見たこともない建築物やモニュメント、洞窟の外壁沿いに立ち並ぶ鍛治工房など、見ていてなんだかワクワクした。
一通り師匠の案内でドワーフ族の里を見て回り、夕方には宿へと戻る。
サイズ調整の済んだ俺たちの装備品も届いており、一度試着。サイズを確認した。
「うん、ピッタリだね。2人ともよく似合ってる。こうやってみると一端の戦士みたいに見えるね」
師匠はなんだか嬉しそうに褒めてくれるが、言い過ぎだと思う。
「えへへー!」
ルーシェは無邪気に喜んでいる。
なんだろう、胸がほっこりする。
「それから、明日はいつもの訓練とは違うことをしてもらうよ」
「いつもと違うこと?」
「うん。実力も付いてきたし、ちゃんとした装備も手に入った。だから明日からは実戦を行うよ」
先程までの優しげな雰囲気は消えていた。
師匠は俺たちに覚悟を問うような目を向けていた。
「分かりました」
「頑張ります!」
俺たちがそう返事をすると、師匠は満足そうに頷いた。
「もちろん危険だと思ったら助けるからね。でも、僕が手を出したらその時点で訓練は終了、また基礎から鍛え直すよ」
「「はい!」」
「いい返事だね。じゃあ今日は早めに休もうか」
それからあまり美味しくは無い夕食を食べてお風呂に入って就寝。
食事はイマイチだったが、宿の風呂はとても広くて気持ちよかった。
翌朝、朝の支度を整えて宿で朝食を食べる。
それから師匠に教えて貰いながらルーシェとお互いに鎧を装着、腰に剣を挿して準備は完了した。
ルーシェに鎧を着せる時にドキドキして手が震えそうになったが、なんとか平静を保つことが出来て良かった。
「それじゃあ行こうか。目的地は大森林の浅い部分。ターゲットはゴブリンやビッグボアだね……そうだ、グレンちょっと来て」
「はい?」
今日の訓練内容を説明していた師匠に呼ばれる。
なんだろ、特別課題かな?
並んで話を聞いていたルーシェから離れて師匠の側へ。
すると、師匠は俺の肩を抱いてルーシェに聞こえないように耳元で話し始めた。
「グレン、ゴブリンはね……人間や亜人の女性を攫って巣に連れて帰る習性があるんだ」
「え?」
それって危ないんじゃ?
ルーシェに危険が及ぶ訓練なんて……
「もちろん僕が居るんだからそんなことはさせないよ? だけど、万が一も無いようにしっかりとルーシェを守ってあげてね?」
「……はい!」
絶対にそんなことにはならないように気合を入れながらルーシェの隣に戻る。
「嘘だけどね」
途中、師匠が何か言ったように聞こえた。
「え? なんですか?」
「別になにも?」
聞き取れなかったので聞き返すが、何も無いよとはぐらかされてしまった。
「さて、初めての実戦だし今日は僕が運ぶよ。魔力は温存しておいてね」
師匠は異空間収納を開いてそこから久しぶりに見るゆりかごを取り出した。
「さぁ乗って」
ルーシェと2人で久しぶりのゆりかごに乗り込む。
こんな狭かったっけ?
「じゃあ行くよ」
俺たちが席に座ったのを見計らって師匠は宙に浮かび上がる。
そのまま、大森林の方角へと向かい移動を開始した。




