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最強の魔人に育てられた少年は英雄へと至る  作者: 愛飢男
序章……幼年期、魔人さん編
11/28

10話、巡り行く日々

 ~魔人さん視点~



 それからの数年間はあっという間に流れていった。中々に大変で、楽しい時間であった。


 離れると不安がることが分かったので、対外的な仕事の大半をとーちゃんに丸投げして安全そうな仕事のみ僕が2人を連れて行った。


 幸いなことに僕でないと倒せないような魔物は現れなかったのでとーちゃんが八面六臂の大活躍であった。


 とーちゃんはブツブツ言っていたが、子育てという大義名分を得た僕にかなうはずもなく……


 かーちゃんすら僕の味方だったのでとーちゃんは泣く泣く仕事に向かって行っていた。


 しかしとーちゃんもグレンとルーシェが可愛いのか、仕事に出かける前に頭を撫で、仕事から戻ると2人をハグする生活を送っていた。


 ある日の夕食後に、とーちゃんと2人がコソコソ話していたので聞き耳を立てていると、どうやら自分のことをじーじと呼ばせようとしていたことが発覚、割と強めのチョップをかましておいた。

 ちなみにかーちゃんは既にばーばである。解せぬ。


 だったら僕はパパなのではなかろうか? と思った時期もありましたが未だに2人は僕のことは「魔人さん」と呼んでいる。


 名前すら呼んでもらえない僕は一体……


 そんななんだか納得のいかない生活を送っていたある日、2人から真剣な面持ちで呼び出しを受けた。


 珍しい、一体何なのだろうか?

 いよいよ「お父さん」と呼んでもらえる日が来たのだろうか?


 嬉しい反面、天国にいる友人たちに対して申し訳ない気持ちもあるな……


「どうしたんだい?」


「裏庭に来て」と言われたので言われた通りに1人で裏庭へとやって来ると、2人は「気をつけ!」の姿勢で僕を待っていた。


 一体何を言われるのやら……


「魔人さん」

「お願いがあります」


 2人は真剣で、それでいて強い瞳で僕を見据えていた。


 これはただ事では無いな。

 自然と、僕も姿勢を正していた。


「僕たちに、戦い方を教えてください!」


 2人は腰を90度に折って深く頭を下げた。


 戦い方……ねぇ。


「うーん……まぁとりあえず頭を上げてよ」


 僕が促すと、2人は恐る恐る頭を上げた。


「力、戦う方法……キミたちはそれを得て何がしたいんだい? アルベイン王国に復讐でもするのかな?」


 頼まれたからには、戦い方は教えるつもりだ。

 だけど、どこまで教えるかは僕が決める。


 力を誇示することが目的だったり、復讐に使うというのであれば必要最低限の自衛方法だけを教えようと思う。


「ルーシェを守りたい!」

「グレンを支えたい!」


 間髪入れずに、2人は答えた。


「ルーシェを守りたいのならここに居ればいいよ? ここなら危険は少ない」


 僕が居る。とーちゃんも居る。かーちゃんも居る。


 魔人族自体、戦闘能力は割と高いのだ。

 この里にいれば以前のような危険な目に遭うことは無いはずだ。


「魔人さん。僕は何故僕とルーシェがここに来たのかを知っています。何が起きたのかも知っています」

「うん」


 それは想定の範囲内。

 里のみんなは知っているし、特別2人の耳に入らないようにしてもいない。


 そのうちどこからか聞きつけてくるとは思っていた。

 ただ、思ったより早かったかな?


「魔人さん。僕はルーシェを守りたい。僕やルーシェみたいな人も助けたいんだ」

「グレンやルーシェみたいな人?」


 この数年間、当然アルベイン王国のことも調べてみた。


 結果、調べれば調べるほどクソな国だということが分かった。


 平民など、税を治めるだけの存在であり、貴族のストレスを発散するための道具でもある。


 貴族は平民を人とは見ていない。家畜と同等かそれ以下だ。


 そんな国だからグレンやルーシェのような人、2人より酷い目にあった人はたくさん居るだろう。


「それは……復讐じゃないのかい?」

「違います! 僕は助けたいんです! 守りたいんです!」

「あたしは……それを支えたいです!」


 正直言って、僕からすればほかの平民、ほかの人間がどうなろうと知ったことでは無い。

 お気の毒に……くらいは思うのだが、所詮は別種族の話なのだ。


 僕にとって大切な人間なんてあの村の生き残りくらいのもの……

 あとは亜人領で生活してる人くらいかな?


 しかしそんな僕からすれば取るに足らない存在のために、グレンとルーシェは力が欲しいと言う。

 その瞳に迷いはなく、嘘も曇りも存在しない。


 それは覚悟の表れか? 子供ゆえの安っぽい英雄願望か?


 どちらでもないようで、どちらでもあるように思う。


 少なくとも、悪用するつもりは全く無いのであろうことは分かった。

 それなら、触りくらいまでなら教えても良いかもしれない。


「分かった。教えてもいい」

「本当!?」

「ただ、条件がある」


 一瞬、喜色満面の笑みを浮かべたが、条件という言葉に反応して再び聞く姿勢を取った。


「戦いは遊びじゃない。安易な気持ちで手を出すと怪我では済まなくなる」


 2人は真剣な表情のまま頷いている。


「だから教えるとなればきちんと教える。僕との訓練は痛いししんどいよ。それでもやるかい?」

「「はい!」」


 その表情と返事に迷いは無い。


「もし、辞めたくなったら何時でも辞めていい。だけど、一度辞めたのなら僕は二度と教えないし、キミたち2人をこの亜人領から人間の国に行かせることは絶対にしない。それでも……やるかい?」


 僕がいいと認めるまでは人間の国へは行かせない。

 中途半端な力は災いを呼ぶだけだ。


「「やります!」」

「いい返事だね。分かった、じゃあこれから2人を鍛えていくんだけど、この言葉だけは覚えておいて欲しい」


 2人はしっかりと聞く姿勢を取る。

 いいね、弟子! って感じがするね。


「『力無き正義は無力、正義無き力は暴力』使い古されてきた言葉だけど……この言葉こそが真理だと僕は思う」


「力無き正義は無力……」

「正義無き力は暴力……」


 2人は噛み締めるように呟いている。


「2人の志は立派だよ。だけど今は力の伴わない理想論。これはわかるね?」

「はい」

「分かります」


 2人が理解を示したので言葉を続ける。


「対してアルベイン王国が行っているのは、法も秩序もない……正義のない力、暴力だ」


 2人はギュッと唇を噛んでこちらを見つめてくる。


 ちなみにハンクさんの死や、村の壊滅に怒り僕が行使しようとしたのは間違いなく暴力。

 これは言わないでおこう……


「キミたち2人には、きちんと志のある、思いやりのある力を得てそれを奮う必要がある時にだけ奮って欲しい」

「はい!」

「分かりました!」


 こうして、僕に弟子が出来た。

 辞めたいと言うギリギリのラインを攻めていこうと思います。





〜序章、幼年期魔人さん編終〜


明日から主人公視点がようやく始まります。

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