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ー7-

弟は聖女になったことで忙しくなりずっと家に帰って来られなかった。

でも、流石に休養も必要だという事で先日、家に帰ってきた。

噂で聞いていた通り、もうダニエルの面影なんて無かった。

体が女性になったのに伴って、顔立ちも美しく女性らしい華やかさを溢れさせて。

自分の心に言いようのない悔しさと嫉妬が走った気がして、

出迎えのとき私は笑顔を深くした。


夜。

ノックの音がして、開けたらダニエルだった。

彼の名はまだダニエルのまま。

女性らしい名前に変えなくていいのだろうか。

彼は頭を下げて、私にお礼を言った。

口調も女の子になっている。


ああ、ダニエルはもう居ないんだ。

べつに惜しむほど弟と関わってきた訳ではないけれど、

弟はもう聖女としてしか生きられないのだ、

聖女として生きることを許されているのは弟しかいないことを

分かっているのにしつこく言い聞かされている気がして、

私は目を伏せてしまった。


「……いいのよ。

あなたが、立派に聖女として……」

頭ではなぞっているのに、続けたくない。

弟が息を呑む。

だめ、悟られてはいけない。

誤解させてしまってはいけない。

「聖女として、頑張っているのを聞いてとても誇らしく思うわ。

……ごめんなさい、もう寝ようと思うの」


ごめんね、あなたは分かってしまったかな。

違うよって言いたい。

私は聖女になれなかったことを悔しいとかもう思ってないんだよ。

自分を騙すことなんて、感情を消すことなんて朝飯前。

事実を受け止めることは得意なんだから。

ほんとうに、眠かっただけなの。

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