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聖女を輩出した家になったという事で、公爵家の中でも、国内は勿論他国からも
重視されて私達もたくさんのお茶会やパーティーに呼ばれるようになり。
でも学園にも当然通って、
試験も受けなければいけない。
ただただ忙しかった。
忙しい中でもふとした瞬間に頭が勝手に考え始める。
自分が聖女になれなかったこと。
ダニエルのことは羨ましい。
でも、男として生きてきた彼が突然女の子になったことはかわいそうだとも思う。
このことを考えると結局自分の気持ちが分からなくなっていくので、
いつも考えるのを止める。
それに忙しい毎日が考える時間を奪ってくれる。
お茶会するには寒くなり、忙しさが一段落したころ、
久し振りにヨハンと会った。
「久し振りね」
「うん、元気だった?忙しかったみたいだね」
「まあね」
「「……。」」
押し倒し事件以降、私達の間ではずっと気まずい空気が流れていて
そのうち忙しくて会えなくなったから、
正直どう接すればいいか分からない。
お互い何か余計なことを言ったら、という不安が沈黙を産む。