1/4. 生きる、って
「――生きる、って何なんだろうな」
突然の問いに、少女は思考停止に陥った。
言葉は耳に届いたが、その意味を理解できなかった。
焚き火が、ぱちん、と弾けた。
ぽかんとした少女の表情を見て、男は取り繕うように言葉を続けた。
「――いや、うん――まあ――そりゃあ、そうなるわな」
男は、ばつが悪そうに目線を伏せ、頭をぼりぼりと掻いた。
そして大きく、ふうぅ、と息をついてから、口を開いた。
「――すまん、忘れてくれ。もう寝よう」
言うと、男は焚いていた火を消した。
そして、すぐそばの草むらの上でごろんと横になり、外套にくるまった。
顔は、少女とは反対側を向いていた。
少女は、しばし呆気にとられていた。
が、ほどなく男に倣って横になり、外套にくるまった。
その夜、少女はほとんど眠れなかった。
(生きる、って何なんだろう、って――何だ――?)
男の言葉が、頭の中で、ぐるぐる回り続けていた。
そんなこと、考えたこともなかった。
そもそも、そこに疑問の生まれる余地があったのか。
考えれば考えるほど、わからない。
いや、私は今、何を考えているのか。
何を。何に対して。どう考えて。――ダメだ。ぐちゃぐちゃだ。
――生きる、って――何なんだ――。
少女は、ひどく混乱していた。