パンクロックとの出会い
始まり
電車通学中、金髪で赤色のライダースジャケットにギラギラした銀色の鋲を沢山打ち込んだ小柄な女性が、隣に立ちヘッドホンで音楽を聴いていた。ヘッドホンから聴こえる音楽は大音量だったので僕にも聞こえた。
「ホヮーライ!・・・ライ!ホヮーライ!・・・オン!」
みたいな感じに聞き取れた。
始めは、なんだうるせーなぁと思っていたのだが、学校近くの駅まではまだ20分はあったので我慢していた。
一旦、音楽は止まり、今度は
「リンダ・・ダー!・ンダリン・・ンダー!」
と鳴り始めた。ん?この曲聴いたことあるな…そうだ昨日のラジオで流れてたやつだ。
なんてバンドなのか、曲名すら覚えていなかったがリンダリンダーとゆうサビが耳に残って離れなくなっていた。
これが歌なのか?とも思っていて一体どんな人が聴くのか知りたかった。そうか…こうゆう派手な人が聴いてるのか…と思った。
電車を降り、高校に向かう途中に友人と合流した。その友人に電車での出来事とラジオで聴いた音楽の話をした。
すると
「ブルーハーツだって!滅茶苦茶カッコいいんだよ!」
と教えてくれ、同時にもうひとつは「多分クラッシュ」と言っていた。彼は中学生時代からバンドをやっていて、3つ年上の兄貴もバンドマンだったのもあり音楽に詳しかった。
耳に残って離れないんだよなぁと伝えると
「帰り家に来いよ!CD持ってるから一緒に聴こうぜ」
と言われ帰り友人の家に行くこととなった。
放課後、その友人宅には初めて行ったのだが、まずドラムセットが家にあり驚いた。少なくともギター3本にベースもあった。しばらく使ってないと思える埃を被ったキーボードも部屋の隅にあった。
そしてもうひとつ驚いたのがレコードプレイヤーがあり、本棚一杯にレコードが詰まっていた。
友人に断りレコードを抜き取ると聞いたこともないミュージシャンばかりだった。
[ドアーズ]
[セックス・ピストルズ]
[MC5]
「凄い沢山あるね。知らないのばかりだ」
といる
「それ洋楽だよ!こっちだよ!」
とCDを見せてくれた。
THE BLUE HEARTSとジャケットに書いてあり、素朴な格好をした四人組が写っていた。
ブルーハーツかぁ。青い心?って意味なのかなと思った。
もっと派手な人達だと想像してたけど、皆黒髪だし意外だった。
一通り友人とアルバムを聴き終えると何故だか気分がソワソワしている自分に気がついた。どことなく学生生活に馴染めない若者の気持ちを代弁してくれているような歌詞だったからだ。
馴れ合いは好きじゃないから・・とゆう言葉が僕の胸に一番刺さった。
その日ブルーハーツのCDを2枚友人に貸してもらい1週間位聴きまくった。
聞けば聞くほど他にも良い言葉は沢山あった。
写真には写らない美しさ
三角定規じゃはかれないもの
本当の瞬間
そして同時にこうやって思いを伝えれば良いんだな、とも思った。
約1ヶ月後、僕は何を思ったのか母親に頼み込み頭を坊主にした。
翌朝登校すると、同級生達に
「スキンヘッドじゃん!」
「お前、どうしたの?」
「野球部かよ!」
等、色々言われた。
時には変だぞと馬鹿にされてるような気もしたが、心の中では人と同じじゃなくて何が悪いんだ、と自分に言い聞かせた。
坊主頭にした理由は単純だった。
ただ今までと違う何かをしたかったからだった。金髪には出来ないし楽器も演奏出来ないから簡単に出来ることをしただけだった。
その後、ブルーハーツを中心としたバンドブームに背中を押されるようにロック、とりわけパンクロックとゆうジャンルに足を踏み入れた。
街のレコードショップに通いつめ、ロックンロールやハードコアパンクに至るまで様々な音楽を聴いた。
勿論、1枚2000円から3000円もするCDやレコードを買うお金がないので学校帰りにガソリンスタンドでバイトもした。
ブルーハーツ ジュンスカ ボーイ ルースターズ モッズ スタークラブ スターリン ガーゼ ジッタリンジン
セックス・ピストルズ ミスフィッツ ディスチャージ エクストリームノイズテーラー 等々聞く暇が追いつかない位買いまくった。
洋楽の場合は日本盤は高いのでタワーレコードで輸入盤を購入した。
ブルーハーツの歌詞に感銘を受けたはずなのに気がつけば少なくとも半数は洋楽になっていた。
続く