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First Phrase 赤砂の牢獄

 砂塵舞う景色をゴーグル越しに眺めながら、少女はマスクの奥で舌打ちする。全身を覆う重く暑苦しい壁外活動制服にも、砂が当たってびしびしと音を立てていた。

「ララ、じき活動限界だ」

 相方が少女の腕を引き、少女はマスクの奥で頷いた。

「シェルターに帰ろう。荷物をトラックに乗せて」

 相方に引っ張られて、少女は抱えていた麻袋を持ち直す。ひゅーん、と風を切る音がして、銀色の板が二人の足元に寄ってきた。やや縦長で、二人が寝転がれる程度の大きさの板だ。少女の相方が軽く側面を蹴ると、四隅で棒が立ち上がり、その間に光の壁が形成された。少女と相方が、麻袋を金属板に乗せる。二人が乗ると、金属板はふわりと地面から浮き上がった。

 二人と荷物を載せた金属板は、石が転がる地面の上を飛んでいく。少女は膝を抱えたまま、ゴーグルの奥で目を閉じた。

「夜には着くよ。ララは寝たら?」

 相方にそう言われて、少女はことりと頷いた。



 半球のドームに覆われたシェルターは、赤茶けた大地にできたイボにも似ていた。外門から入った二人は、壁外活動制服を脱いで内門に向かう。黒い表面がうっすらと黄色に色づいた制服と、砂だらけの麻袋、同じく砂に汚れた金属板が、洗浄室へと運ばれていった。

「お疲れさん。戦果はどうかね?」

 内門の門番が、少女を引き摺る青年に声をかける。青年は苦笑いを返した。

「俺もララも、美味しいごはんにだけはありつけそうだよ」

「空腹は最高のスパイスってか? そりゃ、本当にお疲れさんだ」

 少女はゆっくりと顔を上げる。門番は少女をちらりと見遣ると、声を潜めた。

「なあ。このお嬢さんが許されるためのノルマはいくらか、お前知ってるのか?」

「さあね。俺興味ないや」

「鉄がまず一トン」

 二人の会話に、少女が割り込む。掠れた声は、呻くように彼女の『ノルマ』を告げた。

「アルミニウムが五百キログラム。赤砂に育つ植物の発見。地下水脈の探査。シェルター内での各種奉仕作業一年……北半球のケモノとの接触」

「……年端も行かない子供に無茶させるね」

 門番の言葉に、少女は黙って口を引き結んだ。

「じゃあ頑張りな、ララちゃん」

「ララじゃないわ」

 ひらひらと手を振った門番に、少女は短く否定を返した。

 青年に引きずられながら、少女は内門をくぐる。ドームにそってぐるりと道が敷かれ、そこを自動操縦の貨物車が走っていった。鉄色の立方体を積み上げたような街が、その先に広がっている。さして広くないこのシェルターは、星を開拓する拠点であり、開拓団の居住区だ。二人が入ってきた門と反対側には、宇宙船が接続されている。サイコロを積み上げたような居住区の向こうに、鈍い鉄色の塊が見えた。

「ごはん、ごはん」

 青年が少女を引き摺って向かったのは、雑に積み上げられた居住区の最下層、角ばった路地が迷路のように入り組んでいる場所だ。似たり寄ったりの四角い家に暖簾や看板で個性をつけて、十数件の食べ物屋が軒を連ねていた。橙色のランプが、頭上の銀色に反射して道を照らしている。

 キューブ型の住居を並べた町は、開拓団の拠点としては一般的な形だ。平野に宇宙船を降ろし、ロボットアームでキューブを並べ、その上に天蓋を張る。星の開拓を始めるときの、基本的な手順である。だが、整然と並べればそれなりの街並みになるキューブが、この拠点では乱雑に積み上げられていた。

「ララ、何食べたい?」

 青年の言葉に、少女は応えない。

「じゃあ初めてのところに行こうか」

 青年は遠慮なしに少女を引き摺って、にぎわっている店に入った。



 空地の草を煮込んだような粥を流し込んで、少女は青年に寄り掛かって寝息を立てていた。青年は黙々と食事を続けているが、混んでいる店内で二人に近付くものはいない。

「あの男誰だ?」

 やや離れたテーブルで、ひそひそと噂話が始まる。

「さあ。でもあの嬢ちゃんに近付くなんて度胸があるな。上の奴らに目をつけられるだろうに」

「あの嬢ちゃん……手を貸せるわけじゃねえが同情するぜ。親のやらかしを全部擦り付けられてよ」

 少女がぴくりと瞼を動かした。

「ララ、起きた?」

「ん……ごめんなさい。先に寝床に行ってるわ」

 少女は懐から代金を取り出し、椅子から立ち上がる。ふらふらと左右に揺れる少女の腕を、青年がつかんだ。

「ララ、だーめ。途中で寝るだろう?」

「ここはうるさいの」

 少女の視線が、噂話の声へと向く。

「それに、いつも言ってるけど、私はララじゃないわ」

 少女は青年の手を振り払って店を出ていった。

「……あの嬢ちゃんの名前なんだっけな?」

「確かー……」

 ぽつんと残された青年の背に、野次馬な視線が注がれる。

「エレーナ。エレーナ・ニーヴァだったっけな」



 開拓団は通常、数百人の作業員と、それを統括するリーダーからなる。エレーナはそのリーダーとなった夫婦の一人娘だった。リーダーには高い教養と知識が必要とされ、開拓団全体の責任がのしかかる。その分、地球の統一政府からは手厚く保護され、開拓を終えて地球に戻った暁には、一般市民が目を回すような報奨金を約束されていた。

 そして、エレーナ達が向かった星は、今まで数度の開拓に失敗している星だった。組織された開拓団の人数は千人に届くほどで、明確な上下関係、身分の差すら存在していた。上層部はリーダーや技術者、知識を持つ専門家が占め、中層に一般の労働者、下層は食うに困って開拓団に拾われた日雇い労働者達だ。その下層の更に最下層に、船で罪を犯した者がいる。最下層の労働者は食料の支給がなく、未知の惑星を探索して得た成果でその日の命を買っていた。

「へえー。じゃ、ララはどうしてこの最下層にいるんだ?」

「……お前本当に開拓団か? 何にも知らねえんだな」

「よく寝てたから……」

 噂をしていた男達のテーブルに移動して、青年は容赦なく酒を注ぐ。それをあおって、男達の口は随分と滑りがよくなっていた。

「まあ上で起きたことだから、俺達も大して知らねえさ。今この開拓団には正規のリーダーがいなくてなあ。それで、船の備蓄もない中大慌てで作ったもんだからこんな不格好なシェルターになっちまって」

「ふうん。これが普通かと思ってた」

「ともかくあの嬢ちゃんにはあんまりかかわらねえほうがいいぜ。あの子の両親は、地球でリーダーの地位を金で買ったんだよ」

「ふうん?」

「リーダーの地位さえあれば、開拓に失敗しても地球に逃げ帰れる。開拓なんてほとんど口減らしだからな。移住先が見つかれば最高、異星の資源を持ち帰れば万々歳、人が減って戻ってくれば万歳ってところかね。リーダーが帰ってくれば、同じことを何回でもできる。高い報奨金をもらって、また宇宙に飛んで人を減らして戻って……要するにあれだ、リーダーってのは地球の掃除屋をさせられるんだよ」

 赤く火照った顔に下卑た笑いを浮かべて、男はまた一杯酒を飲む。

「だがその金に目がくらむ奴はまあ多い多い。あの嬢ちゃんの両親もそうだったんだろう。金でもっと高い金を買った。開拓を成功させる気なんてなかったんだろうさ。バカンス気分で娘を連れて宇宙に出て、どこかの星に人を捨てて帰ってくるだけ。……それがバレてぶっ殺されるなんて思ってなかったんだろう」

「殺された?」

「あぁ」

 青年の顔が曇り、男は反対に笑い声をあげた。

「いやぁ、だがざまあないと思うぜ。俺達をゴミみたいに捨てていこうとしたんだろうさ。船の備蓄はシェルターを作って開拓基盤ができるギリギリまでしかなかったし」

「詳しくないって言ってたけど、いろいろ知ってるんだな」

「どうしてそうなったかまでは知らねえさ。殺さないで済む方法はあっただろうが、上の連中がどんな話をしたのやら、あの嬢ちゃんの両親はぶっ殺されて、あの嬢ちゃんが両親の分まで働かされるそうだ」

「鉄一トン、アルミニウム五百キログラム、赤砂に育つ植物の発見、地下水脈の探査、シェルター内での各種奉仕作業一年、だっけ」

 指折り数えた青年に、「それと、北の連中との接触」と男が付け加えた。

「女の子がこなす量じゃないよねえ」

「奉仕作業は一年でいい。植物の発見も鉄だのアルミだのを集めながらすりゃあいい。……ま、ノルマに金は払えねえそうで、ただ働きは確実だがな」

「ふうん」

 青年は立ち上がり、手首を軽く捻る。

「帰るのか?」

「んー、まあ、うん。底が知れた」

「あ?」

「ケモノって、北半球の人達のことでしょう?」

「ああ、あのジャングルの……前にも何回か開拓団が来てるんだが、そいつらに邪魔されてるんだとさ」

「その程度の認識なら今回も問題ないね」

 青年が捻っていた手首が、かこん、と外れた。手がついていた部分に、黒い穴が残される。

「彼女は俺がもらうとしよう」



 最下層の人々が雑魚寝する狭い部屋で、エレーナは寝転がる場所すら与えられず、壁に寄り掛かって膝を抱えていた。寝息といびきが混じる部屋は暗く、空気がよどんでいる。

 がん、と音を立ててドアが開かれた。狭い通路に反射した光が室内に入り込んでくる。エレーナはそれで目を覚ましたが、重労働で疲れている女達はまだ眠っていた。

「ラーラ! 行こう」

 無遠慮に、青年が部屋に入ってくる。思い切り踏まれた女が、うめき声をあげた。

「えっ?」

 腕をつかまれて、エレーナは顔を上げる。被っていたぼろ布が落ちて、青年は軽々とエレーナを持ち上げた。

「……エモニ?」

「うん? うん!」

 青年の体格は、先ほどより一回り大きくなっていた。エレーナを引き摺っていた腕は、エレーナを受け止め、姫を抱き上げる騎士のように抱え込む。

「な、何で……」

「だって、ララが呼んだんじゃないか」

 ぼろきれを踏みつけたまま、エモニはエレーナの顔に自分の顔を近づけた。

「君は呼んだ。俺は応えた。ほら、橙色の石を拾ったろう」

 ぎぃん、と鈍い金属音がして、エレーナの右目が勝手に見開かれた。その目は、朝焼けに似た橙色に変化している。白い光の筋が目から立ち上って、歯車型のフレームのモノクルとなった。だがそれはエレーナのどこにも固定されておらず、目から小指一本分離れた空中に浮かんでいる。右上方には小さな歯車が付属しており、二つの歯車がゆっくりと回転していた。

「思い出して」

 エモニの指先が、エレーナの額に触れる。瞬間、鮮烈なイメージがエレーナの中に送り込まれてきた。

 赤い砂で覆われた荒野を歩いている映像だった。遠くには、作りかけのシェルターが見える。まだようやくドームを張り終えたばかりで、内側はがらんどうだった。そこに向かって歩くうちに視点が下がり、やがて砂に倒れ込む。視界に映った手から、橙色の石が転げ落ちた。

 ああ、とエレーナは思い出す。光が差すと内側に虹色ができて、落としても砂でこすっても傷一つつかない。そんな石を、確かに自分は持っていた。シェルターを作る際中に派遣された先遣隊が、ガラクタとともに船内に運び込んでいた。妙に目を引く美しさで、エレーナはそれを、父にねだって受け取った。それから三日も後には両親とも、牢に入れられて服まで剥ぎ取られていたので、エレーナはそんな石のことなどすっかり忘れていた。

 エモニに抱えられたまま、エレーナは外に出る。辺境の星にも夜は来る。既に夜中を過ぎた空は暗く、シェルターの天蓋に点在するランプ以外は光がない。

「呼んだわ」

 ぽつりと、そんな空を見上げてエレーナはつぶやいた。

「拾い物なんて忘れていたけど、呼んでいた。……『誰か』って」

『お嬢ちゃん、お前だけは殺さないであげるさ。まだ未成年だもんなあ』

 そう言った男の下卑た笑いを、よく覚えている。

 周りがすべて敵となった。頭を砂だらけの地面に擦りつけて、働かせてくれと懇願させられた。最下層に叩き落され、いつの間にか隣にいたこの青年のことすら、知ろうとしなかった。起きて、したくもない労働をして、食事をして、寝る。自分の命はこうして食い潰されるのだと、悟っていた。

「だから俺は来た」

 にっと笑うエモニの顔を見て、エレーナは唇を噛んだ。

 二人がゲートに向かうと、センサーライトがぱっとあたりを照らした。

「ここからしか出られないんだよなあ」

「……外に出るの?」

「うん? うん。俺は、開拓団じゃないからね。デルタポリスに帰るのさ」

 エモニはエレーナを抱えたまま、足のつま先を内門に当てた。

「硬いな」

「け、蹴り開けるの? そんなことをしたら、シェルターが」

「知ったことじゃないね」

 シェルターの内外では、空気圧も酸素濃度も異なる。そこに大穴を開ければどうなるかなど想像に難くない。

「それに、あなたが何者かは知らないけど、私は外じゃ……防護服がないと」

「大丈夫だよ」

 エモニは数歩下がり、ざりっ、と足先で地面をなぞった。その足の下で、転がされた小石が砂粒になる。

「俺達はそんなにヤワじゃない」

 エモニが助走をつけて内門を蹴った。エモニの足を通して、衝撃がエレーナにまで伝わる。派手な破砕音がして、内門の合わせ目に風穴が開いた。

 エモニはエレーナを片腕で抱えると、風穴に足と手を突っ込んで内門をこじ開ける。外門に向かう頃には、甲高い警報音と赤いランプが、異常事態を告げていた。

 エモニはそれも意に介さずに外門に近付く。と、ぱっと白色灯がつき、外門の淵に明かりが走った。静かな起動音がして、生ぬるい風がエモニの足首をなぞる。

「ようお二人さん。こんな夜中にデートかい? 妬けるね」

 ひょいと暗がりから顔を出したのは、先刻、門番をしていた男だった。エモニは俯き加減になり、視線を鋭くする。男は空の両手を上げ、武器を持っていないと主張した。

「その内門お前の仕業?」

「……だったら?」

「そうかいそうかい……帰るんだな」

 男は壁に近付き、外門横の小さな蓋を開ける。その奥のボタンをいくつか操作し、指先でぱちんとスイッチを上げた。途端、外門がゆっくりと開き始める。

「どうぞ、お姫様と騎士様」

「……えっ?」

 エレーナが驚いて顔を上げると、男は口の前に人差し指を立て、片目をつぶって見せた。

「どういうつもり? 開拓団から抜け出す手助けなんて……次のリーダーはきっと許さないわ」

「ああ、あいつは苛烈だからな。なぁに、うまくごまかすさ」

 半分ほど外門が開いたところで、エモニが外へ出る。すれ違う一瞬、男はエレーナに視線を落とした。

「さようなら、エレーナ」

 シェルターから出た瞬間、ざあっ、と、闇の中から風が吹いてきた。エレーナはエモニの腕から身を乗り出して、エモニの肩越しに振り返る。

「――あの! あなたの名前は」

 そう言った瞬間、強烈な違和感にエレーナは口を閉ざした。男は目を細め、二人に背中を向けて手を振る。その背を知っているだろうと、エレーナの中で誰かが主張した。

「名もなき門番Aさ。お幸せになぁ」

 外門が閉まり、外側のシャッターも即座に降りる。間もなく、シェルター内の警報が止まった。エモニはほとんど同時に、エレーナを抱え直して走り出す。

 舞い上がった赤砂が、夜風で砂煙となる。エレーナは目を閉じ、服で鼻と口を覆った。エモニが一歩進むごとに、風はますます強くなり、びしびしと皮膚に砂が当たる。エレーナはエモニの胸もとをつかみ、体を丸める。それでも、服の隙間から容赦なく、砂が入り込んできた。

 息が詰まりそうな砂の中を、どれほど走っただろう。

「嵐を抜けるよ、ララ!」

 風の音に紛れて、エモニがそう言った。瞬間、砂浜に飛び込んだかのように一瞬、全身に砂が当たる。だがそれを抜けると、嘘のように風の音が消えた。

「……ララ? ラーラ、ほら目を開けてよ。きれいだよ」

「んん……」

 エレーナはエモニの肩を叩く。エモニはそっとエレーナを地面に下ろした。掌に砂ではない地面の感触があって、エレーナは驚いて目を開く。

 俯いた視界は、青白く照らされた草に満たされた。エレーナが触れたことのある植物といえば、観葉植物が野菜、ハーブがせいぜいだ。だがそのどれとも違う、絹のように柔らかな感触がした。それでいて、独特の青臭さがむっと立ち上ってくる。細長い葉の一端を引っ張ると、緩く編まれた布のように伸びた。

「ほら、ここは嵐に護られているから。立って。ヴォラルに会いに行こう」

 エモニはぐいぐいとエレーナの腕を引くが、エレーナは俯いたまま、震える息を吐いた。

 嵐を抜けたといった。そして、月明かりに照らされた草。エモニは森に帰ると言っていた。間違えようもない。『ケモノ』と呼ばれる未知の存在が住む森に、自分は来たのだ。

 頭を振り、服を叩いて砂を落とす。鉄錆色の砂は、立ち上がったエレーナの足元で小山になった。服のポケットをひっくり返せば、ざばぁ、と砂が落ちる。本当に砂に潜り込んだようだと、エレーナは苦々しい顔になった。背中や下着の中までも、じゃりじゃりと砂の感触がある。

 柔らかい草の上に立ち、エレーナはゆっくり、視線を持ち上げた。

 足元の砂山と、震えている足。それから、柔らかい草が折り重なった地面。更に向こうに、草を球体にしたような茂みがあり、そこからにょっきりと、背の高い木が生えている。

 ヤシの木のような木々は、見上げるほどに高く、いくつにも枝分かれをしていた。枝と枝が絡み合って屋根となり、その下は月明かりの届かない暗闇だ。そして見上げた先に、白銀の満月が浮かんでいた。地球の月よりもはるかに大きく、星屑の輪がある。いくつものクレーターが見えるのは、地球の月と同じだった。

 立ち上がったエレーナの背に、エモニが手を当てる。エレーナが顔を上げると、エモニはエレーナの髪をなでた。

「デルタポリスへようこそ」

 汗で張り付いた砂が、エモニの指先で落とされる。エレーナはきゅっと唇を引き結んだ。

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