60 番外編 何かに
心が読めるようになった青年は、いっそう人の願いを叶え、好かれることになった。彼の周りにはいつも人がいて、みんなが笑顔だ。
何の力も持たない少年は、独りぼっちだった。
そう、いまさら能力なんて関係なかったのだ。すべてがいまさらだった。
人気のない森に入って、木々の隙間から空を見上げる少年。
自由に空を飛ぶ鳥を見て、青年のことを思った。
天と地の差。空を飛ぶ鳥と、地面から離れられない自分。
「なんで、あいつばかりが。」
すべては、願いを叶えるという力のおかげ。少年にもその力があったのなら、その人生は変わったのだろうと少年は思った。
もう嫌だ。自分ではない何かになりたい。そうすれば、やり直せるのに。
こんな何もできない体はいらない。役に立たない記憶もいらない。そう、生まれ変わりたい。あの青年のような、何でもできる力が欲しい。
「それが、君の願い?」
突然かけられた声に驚き、少年は振り返った。
目の前には、微笑みを浮かべる青年がいる。
「ど、どうして、ここに?」
「君に会いたかったから。・・・君には感謝しているし、その願い、叶えてあげるよ。」
そう青年に言われたところで、少年の意識は深い闇の中へと落ちた。
満月が綺麗な夜。
そこから何かの生が始まった。
何かは、何もわからなかった。
自分は何者なのか?名前は?何の生き物?性別は?どんなことができる?
何もわからないまま、ただずっと空を眺めていた。
自分と同じ独りぼっちの月は、いつしか姿を消し、強い光を放つ太陽が現れ、辺りが徐々に騒がしくなる。
ちゅんちゅん。
鳴き声が聞こえ、見れば木の枝に鳥がとまっていた。
今から餌を取りに行くのか、鳥は羽ばたき空へと舞いあがった。
それを見て、初めて感情というものが動き、体が熱くなった。
それを止めたい。
地面へと落としたい。
でないと、この憎悪は収まらない。
気づけば、鳥は地面に横たわり息絶えていた。
そうか、こうすればよかったのか。
なんとなくそう思い、首をかしげる。首はないが。なぜこんなことを思ったのか理解できなかった。
何かは鳥を見つめる。空を飛んでいた鳥。これを吸収すれば、いつか飛べるようになるかもしれない。
鳥は、何かに吸収された。
その行為は何度も行われ、何かは理解する。
自分は、飛ぶものを落とす力がある。そして、それを食べることによって、自分は強くなる。
夕暮れ時。
カァー
鳴いたカラスが、地面の上で息絶えた。
あれから、どれほどの時が経ったのか。大きな獲物も難なく落とすことができる。
獲物はどんどん大きくなっていき、その異常な光景は人間たちの目にも届くようになった。
気味の悪い場所。人間たちはそう思った。
「叶様、あの森の現象をどうにかしてください。怖いのです。」
数名の村人に囲まれ、そう願われた青年。彼は笑って頷いた。
何かの前に、それは唐突に現れた。
鳥たちとは違う姿。大きさも何倍も大きい。
「ひさしぶり。といっても、君にはわからないか。」
夜と昼の空を混ぜたような色を持つ者。
なぜか、憎しみがわく存在。
「ごめんね。悪いけど、別の場所に移動させてもらうよ。」
そう言って、大きな何かに持ち上げられ、何もできないまま別の場所へと連れていかれた。
といっても、同じような森で、生活が変わるようなことはなかった。
ただ一つ、いつかあの大きな何かを、どうにかしてやりたいと思う気持ちが芽生えた。
長い間、その場所にとどまり、飛ぶものを食べ続ける。
その間に周りの景色は変化し、木々が減り、いつしか周りに木が一本もなくなった。そのせいで、鳥が来なくなって、鳥を落とすことができなくなってしまった。
徐々に失われていく力。
でも、何もできない。
何もできないまま日々を過ごすうちに、人間たちの言葉を聞き、ここが学校で、彼らが人間だということを知る。
ただ、それだけだが。
何かは、よくわからないまま、長い時を過ごした。
それは、トウコという名の少女と出会うまで続き・・・終わった。
場所も姿も変わり、小さな小屋の中で、アヤカシの姿をしたクロは、トウコを見つめていた。眠っているトウコは、何の反応も返してくれないが、見ているだけで幸せだ。
「クロ。」
トウコの近くに座っていたアヤカシが、クロを見つめていた。
「そういえば、お前はなぜ学校にいたんだ?」
「・・・さぁ?」
よくわからないと返したクロは、一つ思いついて、笑った。
「そうだね、トウコと出会うためにいたのかも。」
今のところ、次で更新を終わらせようかと思っています。
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