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59 番外編 心が読める



 昔々のお話。

 とある村で、強欲な村長が言った。


「私の村で暮らし、村人を助けてください。」


 言った相手は、願いを叶えると噂の妖だった。



 行き倒れ、困っている旅人だと思った者が、そんなことを言うのだから驚いた妖だったが、その願いを叶えることにした。


 願いを叶える妖は、村人たちに受け入れられた。

 ただ、一人の少年を除いて。




「きもちわるい。」

 それは、突き飛ばされて、地面に転がる少年に投げられた言葉だ。


 それは、その少年に昔から投げかけられた言葉。


「こんな力がなければ・・・」

 少年は、突き飛ばしてきた男を見る。


 あいつ、また俺の心を覗いていやがった。人の心を盗み見るなんて、気持ちの悪い奴だ。本当は、人間ではなく妖なんじゃないか?


「・・・覗きたくて覗いてるわけじゃない・・・それに、手を貸そうとしただけじゃないか。」


 痛い。昨日挫いた足が痛い・・・だが、こんなことで痛がるなんて情けない。我慢するしかないな。


 男は、何でもないように重い荷物を持って、去っていった。



 少年は、ふらふらと村の中を歩いていた。

 今は自由時間だ。普通なら同年代の子供と遊んだりするが、少年は普通ではなかったので、子供たちの輪に入れずいつも一人だった。



「あら、叶様だわ。」

 一人の村娘が発した言葉に、少年は顔をしかめる。


 叶様と呼ばれた青年が、多くの者に囲まれているのを、少年は憎々しげに見つめた。

「なんで、あいつばかり。あいつだって、同じように変な力を持っているのに。なんで、俺は気持ち悪がられて、あいつは好かれる?・・・おかしい。こんなの絶対おかしい。」


 叶様と言われる青年には不思議な力があった。青年は、その力を使って、村人たちの願いを叶えるという。村に来てまだ半年と経っていないよそ者が受け入れられたのは、村人たちに益があったからと、村長の後ろ盾があったからだ。


 少年にも不思議な力がある。人の心を読むというもの。少年は正直すぎたため、その力のことを話してしまった。人には誰だって隠したいことがある。しかし、それが少年に筒抜けになってしまうとわかれば、遠ざけられるのは当たり前だろう。

 それが、この村で生まれ育ったはずなのに、少年が村人に冷たくされるわけだった。


 少年が憎々しげに見つめていると、その視線に気づいたのか青年が少年の方を見て、優しく笑った。侮られたと思い、怒る少年だが、何もできないということはわかっているので、逃げるようにしてその場を後にした。




 それから数日後。

 一人、木陰で休む少年のもとに、青年が現れ、話すことになった。


「実は、ずっと君のことが気になっていたんだ。」

 さらさらの青い髪、その髪と同じ深い海のように飲み込まれそうな青い瞳が少年の目に入る。まさか、これほど近い場所で青年を見ることになるとは思っていなかった少年は、憎い相手ながら緊張をしていた。


「な、なんで・・・もしかして、心が読めるから?」

 自分に対して興味を持てるところなんて、心が読める力しか思いつかなかった。少年はそれ以外は普通で、頭もよくないし、力もたいしてない子供だったから。


「うん。心が読めるっていうのは、どんな感じなの?」

「・・・どんな感じって言っても、普通。」

「普通・・・ま、そうか。君にとってはそれが普通だろうね。」

 優しげに笑った青年。その心の声が聞こえる。他の人より聞き取りにくかったが、確かに聞こえた。


 いいな。

 

 それは、少年が何度も聞いた心の声。そして、そのたびに少年の頭には血が上った。この力のせいで、村人から冷たくされるというのに・・・

 こんな力より、青年みたいな力が欲しかった。それなら、こんなに寂しい思いをしなくてもよかったのに。


 願いを叶える力だったなら・・・2人の力が逆だったなら。


ふと思い浮かんだのは、青年がこの力を手に入れたらどうなるのだろうか、という疑問だった。少年と同じように、村人に冷たくされるのだろうか?

 少年は、それはいいと思った。そして、それはもしかしたら実現できるかもしれないと。


「あの、叶えて欲しいことがあるんだけど。」

 そう、青年は、人の願いを叶える力を持っている。それならば・・・


「・・・それは、どんなこと?僕は何でも叶えられるわけではないから、言ってもらわないと、叶えられるかどうかはわからないな。」

「・・・この力をもらって欲しい。できる?」

「え?」

 見開かれた青い瞳と目を合わせる。


 少年は3分くらい目を合わせていた気がするが、おそらくそれは5秒程度だったと思う。

「いいの?」

 青年は少し嬉しそうに聞いてきたので、少年は笑って頷いた。


「この力が嫌なんだ。だから、ずっとなくなって欲しかった。本当は叶様みたいな力が欲しかった・・・みんなに好かれるような。」

「・・・その力は嫌われるの?」

 その言葉に少年は「しまった」と思った。嫌われる力とわかったら、青年はこの力をもらってくれないかもしれない。自分はこういう正直すぎるところで、いつも損をしている。


「実際、嫌われているよ。」

「ふーん。ま、僕は別に好かれたいわけではないからね。いいよ、その願いを叶えてあげる。ま、僕がその力を欲しいと思っているから、偉そうには言えないけど。」

 再び笑った青年に、今度は少年が目を見開いた。


「嫌われてもいいのか?」

「うん。さっそくもらっていい?その力。」

 その言葉に少年は頷き、それを確認した青年は、少年からその力をもらった。


 これで、すべての人間の願いを知ることができる。


 最後に少年が聞いた心の声は、そんな青年の声だった。




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