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監禁した犯人を見かけたけど、拍子抜けする。

 誘拐犯の姿は見えない。

 誘拐されてからどのくらいの時間が経ったのかも感覚が少し麻痺している。

 しかし、此処での生活は相変わらずに穏やかである。

 私の大好きな料理や飲み物が出てくる。アプアという赤い実の果実を絞ったジュースや、様々な山菜を炒めた良い香りのするサラダなど、私の好みで、王女である私が満足できるだけのものが出てくる。

 本当に、私を攫った相手は何を考えているのだろうか。どんな人物なのだろうか。それが全く持ってぴんと来ない。

 想像する事だけは出来る。

 というより、どういう人物なのだろうかと想像する事しか出来ない。

 その誘拐犯は私の前に姿を現す事を一切せずに、召喚獣達も多くは語らないのだから。

 どういう人なのだろうか。

 召喚獣をこれだけ従えて、料理も出来て。

 でも私はそういう存在を聞いた事がない。そもそもこれだけの召喚獣を従える存在なんて知らない。父である王に知られることもなく、それだけの力をつける存在が居るなんて恐ろしいとしか言いようがない。それに王女である私を簡単に攫えたという事は王宮に詳しい位置にいるということかしら?

 王宮に仕えている者達の中の誰か、と考えるのが一番自然な気がするわ。

 私の事をどういう目的で攫ったのかだけど、やはり私が王女で利用価値があるからというのが一番しっくりくる目的だけど。

 そもそも私が今いる場所はインダーン王国内なのだろうか。そんな疑問さえもわく。お父様たちに迷惑をかけているかもしれない、と思うと、色々と考えてしまう。

 本当にどういう事なのか、意味が分からない状況だ。

 私に出来る事とはなんだろうか。どんなふうにしたらいいのだろうか。――そう思いながらも此処でのんびりと寛ぐ事しか出来ない。

『こんな状況で寛いでるとか、流石というか』

『んー、結構肝が据わっているのねぇ』

 召喚獣達のそんな声が聞こえてくるが、怯えていたり不安になっていても仕方がないと私は思っている。それにここにはとても私が落ち着く環境が整っている。そこで、寛がない道はないと思っているの。

 こうやって寛ぐのも珍しくのんびりできていいなとは思うけれども、それでも私は此処でずっと過ごすつもりはないのだから、どうにかして会いたいのだけど。

 どうやったら会えるのかしら。

 うーん、どういう人物なのかしら。

 男? 女? 年上? 年下? でも年下はありえないでしょう。だってこれだけ召喚獣達を従えている人が若いわけはないと思うのだけれども……となるとずっと年上のおじいさんかおばあさんかしら。

 もし、王宮勤めの人とかではないとしたら、本当にずっと隠居生活をしていたような年配の聡明な方? いや、でもそういうような隠居生活を行っていて、人里と関わらないようにしていた人物だとしていたら突然、私を誘おうとするなんて色々おかしいし。

 本当にどういう方なのだろうか。

 会って目的を聞いて見たいものなのだけど。

 本当に、インダーン王国と敵対しようと思っているのならば召喚獣をけしかければいい話だし。何かもっと別の政略的な事が関わっているのかしら。

 考えれば考えるほど、不思議な状況よね。

 ジュースを飲みながらそんなことを考える。召喚獣達が周りにいるのも大分慣れてきた。この召喚獣達は私の事を害す気はないのだから、別に気にならなくなった。それにしてもそのうち出てくると言っていたのだけど、本当に出てくるのかしら。

 ……いつまで放置されるのだろうか。そろそろ出てきて欲しいのだけど。

 

 そんな風に思っていた時、ようやくその姿が見えた。


 その日、私はベッドで昼寝をしていた。王女として王宮で過ごしている間はお昼寝なんてのんきなものは出来なかったけれど、今は出来るから出来るうちにしている。まぁ、とはいえ、締め切った部屋だから昼とか夜とかわかりにくいのだけど。

 それで眠っていた時に、髪に何かが触れていたの。

 召喚獣達かと思ったのだけれども、何だか人の手のように思えた。

 私はそこで目を開けた。

 そしたら、一人の人間が居た。茶髪と茶色の目という何処にでもいる見た目をした少年。私よりも少しだけ年上ほどの人物だろうか。私と目が遭ったその人は、無言で逃げた。

 私が引き留める間もなく逃げた。気づいたら目の前から消えていた。魔法だろうか。というか、それよりも———。

「あんなに、若い少年が……私を攫った?」

 その事実に、私は拍子抜けしてしまった。

 何処にでもいるような、何処にでもまぎれられそうな少年。そんな少年が私を攫った事実に唖然とした。



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