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穏やかにすぎる監禁生活(王女困惑中)

「美味しい」

 監禁生活が継続している。

 食事が美味しくてびっくりする。王宮育ちの私でも美味しいと思える料理がこんな場所で出てくるのも正直意味が分からない。

 召喚獣たち曰く「主が作った」らしい。

 料理まで出来るのか。それとも料理人なのか。いや、料理人が召喚獣を従えることなんて出来ないはずだし、というか、未だに一度も姿を現さない。

『美味しいならよかった』

 召喚獣たちはそういいながら穏やかな目でこちらを見ている。

 意味は分からないけれど、食事は美味しいし、快適すぎて困惑する。

 監禁生活というものは、その言葉だけ聞くととても暴力的なもので、危ない雰囲気を感じる。実際に監禁というものは物騒な事件にまつわることが多いだろう。だというのに、攫われて監禁されているにも関わらず私の生活は、驚くほどに穏やかだ。

 監禁生活に似つかわしくない言葉だというのは分かるのだけれども、穏やかとしか言いようがない。

 もう数日も経過しているのに姿を現さないのは本当に意味が分からない。此処での生活は、王族としてのわずらわしい教育などがない分、王宮より快適と言えるかもしれない。本当に、どういうことなのかしら。意味が分からない。

「私を攫った人ってどういう人なの?」

『変わった主人』

『面白い奴』

『魔力が美味しいよ』

 一先ず、どういう人間なのか聞いてくると”変わった人間”で、”面白い人”で、”魔力が美味しい”らしい。

 確か召喚獣との契約は、呼び出した召喚獣に気に入られれば結べるものだ。その召喚獣の召喚というのは、とても危険なものだ。場合によっては召喚した者が死んでしまうものだっているぐらいの危険な契約。

 契約を結べることになれば魔力を与え、その代わりにいう事を聞いてもらうといった形になる。

 その魔力が召喚獣たちにとっておいしいらしい。そもそも魔力に美味しいも美味しくないもあるのだろうかと疑問に思えてしまう。

 というか、本当にこれだけ召喚獣と契約をしておきながら王女の私が噂一つ聞いたこともない存在がいるなんて信じられない。

 ……この国の英雄でさえ三匹なのに。本当に訳が分からない。

「……ねぇ、目的はなんなの?」

『本人が言うと思うぞ』

「でも私の前に現れないから、困るのだけど」

『そのうち出てくる』

 そもそもなんで誘拐しておいて、そのまま放置なのかしら。そんな風にされると、私は少なくとも困ってしまう。……私を困らせたい? 何が目的なのか分からない。

 ただ、相手は私の事を知り尽くしている。私の事を一方的に知られているというのは正直面白くない。

「……私を困らせたいのかしら」

『いや? そんなわけはない』

「……まぁ、いいわ。そのうち出てくるのよね?」

『多分』

 私に一番話しかけてくる鳥の召喚獣は、そんな風に答える。

 多分、って。私の前に現れない可能性もあるのか。それとも、私の前に現れるとしても時間がかかるという事だろうか。

 私はこのままおとなしくしているべきなのか。

 ……いえ、でも此処で私が出来る事はそもそもあるのだろうか。ない気がする。

 ならば、相手がどう動くのを待たなければならない。相手が姿を現してからが私の勝負。そこから、私が有利な方向に相手を持っていけるか。こんな力を持っている相手を前にして私が何か出来る事があるのかもわからないし、不安はある。正直困惑の気持ちはなくならない。

 でも——。

「ならば、ゆっくりここで休ませてもらうわ」

 それ以外に私にやれることなんてない。

 それを実感しているからこそ、私は思いっきり寛ぐことにした。

 王族としての義務も、勉強も——何もかもこの閉じられた世界では関係がない。きっと王宮では騒ぎになっているだろう。私の安否をお兄様やお父様たちは心配してくれているだろう。私は無事で、元気だとは伝えたい気はするけれど、この場所が何処なのかも分からないから一先ず私はゆっくりする。

 ――でもゆっくりと過ごした後、私を攫った本人が姿を現したのならば何が何でもこの状況をどうにかするための行動を起こす。

 穏やかな監禁生活過ぎて、監禁されている実感が中々起こらない。もしかしたら此処でずっと過ごした方が快適でわずらわしいものがない生活になるのかもしれない。だけど、このまま此処で過ごし続けるつもりはない。

 ――だから困惑するけど一先ず、のんびりと過ごす。

『ナティ様、こういう状況で休めるなんて流石』

 なんか褒められているのかけなされているのか分からない発言をされたけど、私はその発言を無視してベッドに横になるのだった。




 ――誘拐犯はまだ、出てこない。



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