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攫った相手の姿が見えなくて、私は困惑する。

「……貴方たちの契約主は何を考えているのかしら」

 思わず私は世話をしてくれている召喚獣たちを見ながら、つぶやいてしまった。

 召喚獣たちが契約をしている相手が私を攫ったのだろうという事は分かるのだけれど、一切に私の前に現れる事がない。

 何を求めて私を攫ったのかも分からない。

 誘拐犯の求める事はなんだろうか。一番に考える事は、私が王族だから利用価値があるということ。身代金を求めているということ。二番目に考える事は、私という存在を求めて攫ったということ。

 正直、前者の方が正しいのではないかと思うが……でも、召喚獣をこれだけ持っている存在ならば私の事を攫うなんていう真似をしなくてもこの国をどうにでも出来るだろう。それなのに、わざわざ私を攫った意味が分からない。あと、とてもよくしていただいている意味も分からない。

 基本的に契約している存在以外をどうでもいいと思っているのが、召喚獣と呼ばれる存在だと聞いている。なのに、何故この召喚獣たちは私の事を大切に扱っているのだろうか。

 そのことも含めて分からないことだらけだ。

 向こうからアクションがなければ、どうなっているのか分からない。

『何をってなー』

『うん、凄く単純な思考だからねー』

『まぁ、ナティ様はしばらくおとなしくしてて!』

 召喚獣たちは呆れたような表情を見せて、そんなことを言うだけだ。凄く単純な思考とか、その呆れた感情とかはもしかして私を攫った相手に対して抱いている感情なのかしら。

 召喚獣たちはちゃんと答えてはくれないので、ひとまず、私はこの場所について考察する。

 窓はある。けれど、外は見えない。何かしらの魔法が使われているのだろうか。開けようとしても開けられない。これも魔法? 扉も鍵はかかってないけど、あかない。

 トイレもお風呂も全て完備されている。……平民の家だとお風呂がない事が多いらしいと聞くのだけど、そうなるとこれは貴族の家なのかしら? いえ、でも貴族の家にしては質素だからおそらく違う。平民の出でそういう設備があるってどういうことなのだろうか。

『お風呂は主が、ナティ様攫うからって作った』

「作った?」

 お風呂って、作れるものなの? と思ってしまった私は悪くないと思う。私の疑問に答えてくれたのは、私を攫った張本人である真っ赤な羽毛を持つ鳥である。

 ベッドや家具なども、私好みのものが多いのだけど、これも私の好みを考慮した上でなのかしら。

 と、思ってベッドとかを見ていればまた答えてくれた。

『主がナティ様の好みを考慮してささっと作ったもの』

 私を攫った相手は……、私の好みをそれだけ把握しているということ? でも考えてみれば当然だろう。目の前にいる生物たち……召喚獣たちは私の周りに以前から存在していた。彼らから私の情報を集めていたと考えれば私の事を知っているのは不自然でもなんでもない。

 でも以前から守られているのは感じていたけれど……その相手がこういう形で私に接触してくるなんて思ってもなかった。そもそも召喚獣たちは……王宮内に悠々と忍び込んでいるぐらいなのだからいつでも私の事を攫う事ぐらい出来たのではないかと思う。――なら、何故このタイミングで私は攫われてしまったのだろうか。

 私を攫うに至ったきっかけがさっぱり分からない。

 そもそも何を目的に私の事を守ろうと動いていたのかも不明なのだ。

 でも、相手が私の事を知っているというのに、私は相手の事を何も知らないというのは何だか悔しい気持ちになる。

 私の事を勝手に知られているというのも何とも言えない気持ちになる。というか、私の事をそれだけ知っているというのならば、貴方の事も教えなさないという気持ちになってしまっている。

 そもそも攫っておいて放置ってどういうことなの?

 何かしらの目的があって私の事を恐らく攫ったはずなのに、一切、私の前に姿を現す気配がない。暇つぶしになりそうなものが沢山あるけれど—―おそらく私の好みを知っているからこそ置かれている本とか——でも、攫われた状況で呑気に本なんか読めもしないわ。

 ひとまず、考えても考えても、相手がどういう存在なのか見当さえもつかなくてベッドの上へと横になる。

 ……なんで用意されている寝間着までもサイズぴったりなのかしら、などと突っ込む気持ちもわいてくる。

 これも召喚獣たちが把握してしまっているということ? 攫った相手が異性だったらとても恥ずかしいのだけど。

 良く考えてみれば、出されている食事も私の好みのものばかりだった。

 私は王族としての教育の元、好き嫌いがあったとしても顔に出さないようにしているのに。些細な好みまで知られてしまっているわ。

 召喚獣たちに甲斐甲斐しく世話をされていて、攫われた先と思えないぐらい快適な日々を送っている。

 ――そのことを踏まえても、本当に姿を一切現さない相手が分からない。




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