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これからどうするか、提案してみる。

3/27 二話目

 私とヴァインはしばらく顔を赤くして、二人で見つめあって固まってしまった。

 召喚獣に「固まりすぎだろ」という突っ込みを受けて、はっとなる。

「ヴァ、ヴァイン。貴方が私の事を好きなのはわかったわ。それで……貴方はどうしたいの?」

「どうしたいっていうのは……」

「私を攫った、その先よ。……私はね、このまま閉じ込められたままというのは嫌だと思うの」

「……はい」

「私が、お城に帰りたいって言ったら、返してくれる?」

「……でも、帰ったら、ナティ様、結婚……」

 ヴァインが泣き出しそうな顔をしている。よっぽど、私に結婚の話が来ている事がショックで仕方がないらしい。

 ……私の婚約が嫌で攫っておきながら、私を自分の物にするという思考がないのは何でなのかしら? なんでこんな力を持っていておきながら、平民としての感覚を持ち合わせていたりと、チグハグなのだろうかと疑問に思ってならない。

「ねぇ、ヴァイン。貴方は私の事が好きなんでしょう? なら、その……私と結婚したいとは思わない?」

 ……何だかこんな事を聞かなければならないなんて、とても恥ずかしい。恥ずかしいのだけど、ヴァインは私から言わないときっといわない。それが分かっているから、私は口を開く。

「……でも、俺平民ですよ?」

「……どうして、ヴァインはすごいのにそんなに自己評価が低いのかしら? あのね、ヴァイン。貴方は、すごいわ」

 私はヴァインの手を握って、ヴァインが逃げないようにしてから続ける。

「ヴァインは魔法が使えるでしょう。それも転移魔法を出来るぐらいに魔法が得意。それにこれだけの召喚獣を従えている。それって、誰にでも出来ない事なの。ヴァインにしか、出来ない事だわ」

「え、でも、この位なら――」

「できませんからね? もう、ヴァインの常識はどうなっているのかしら。誰もがヴァインぐらい魔法を使う事が出来て、召喚獣を従える事が出来たら大変な事になるわよ? いい? ヴァインは凄いの。それとも、私の言う事、信じられないかしら?」

 私がそう問いかければ、ヴァインは顔を赤くしたまま首を横に振る。

「だからね、ヴァイン。私がお城に帰る時、一緒に行きましょう」

「え」

「お城に一緒に行くの。大丈夫よ。ヴァインが捕まるようにはしないから」

 そもそも、これだけの強大な力を持っている少年がいるとしれば、私を誘拐したとしても国に留めておきたいとお父様なら考えるだろう。私を誘拐した事実よりも、その大きな力の方が重要視されるだろう。そもそも本気でヴァインが逃げたら、わが国では捕まえられないだろうから。

「……俺、ナティ様を攫ったし」

「大丈夫よ。ヴァインは私に任せてくれればいいの」

「ナティ様が……誰かと結婚するの嫌だし」

「大丈夫よ。それもなんとか出来るわ」

 ヴァインの力を説明して、ヴァインが私の事を好きな事を言えば、お父様は私の婚約話を進めようとはしないだろう。私よりも、ヴァインの価値の方がずっとずっと高いのだ。ヴァインは……全然理解していないみたいだけどね。

「ねぇ、ヴァイン。だから、私の事を信じて。私と一緒にお城に帰りましょう」

「……本当に、ナティ様、結婚しない?」

「ええ。結婚はそのするかもだけど」

「え」

「ヴァイン以外とはしないわよ……」

「……え??」

 信じられない事に、私はこの誘拐犯の少年に絆されている。誘拐されたのに、私の意志を無視して閉じ込めていた犯人なのに。それでも私は……この目の前の少年と一緒にいるのが嫌じゃない。寧ろ可愛いと思ってしまっている。……結婚しても、嫌じゃないなって思うぐらいには惹かれてしまっている事実がある。

 だってヴァインは私が他の人と結婚するのが嫌だって言っているんだもの。なら、ヴァインが私と結婚してしまえばいいじゃないってそんな風に思って、それが全然、嫌じゃないんだもの。

「えっと……ナティ様、それって」

「ヴァイン、私はね。貴方の事、嫌いじゃないの。ヴァインの事、むしろ結婚してもいいってぐらいには好きだと、思うわ……。だからね、ヴァイン。貴方が、私を信じてついてきてくれて、そして頑張ってくれたら……ヴァインは私と、結婚出来るのよ」

 恥ずかしくて、途中でヴァインの方を見れなかった。言い切ってからヴァインを見れば、立ったまま気絶していた。

「え? ちょ、ヴァイン、大丈夫!?」

 後から聞いた話によると、私に好きと言われて衝撃過ぎて頭がパンクしてしまったらしい。



 ……もう、本当にびっくりしたわ。






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