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私から言ってほしいといったけれど、恥ずかしすぎる。

「俺はナティ様の事、六年前から見てました」

「六年前?」

「はい。城下町にナティ様が下りてきた時に見て、一目惚れしました」

 一目惚れした、などと言われて私は驚いた。そして六年前の、八歳の時に確かに城下町に顔を出した事を思い出した。……ほとんど王宮から出ない私が、珍しく城下町に王女として姿を現した時。目立ってしまって、側妃様達があの後、少し面倒だったっけ。

「それで、ナティ様を守ろうと思いました。ナティ様は……、王宮内でも微妙な立場だってわかったから」

 ヴァインは私を真っ直ぐに見つめて言う。

 私に一目惚れして、私を守りたいと思ったのだと。どこまでも愚直な思いが、そこにはあった。

「それで、ナティ様を守るために何か出来ないかと図書館に行きました。文字が分からなかったけど、その場にいた司書さんに習って、少しは読めるようになりました。それで、魔法と召喚獣の本を読みました」

 ……思考がとても飛躍している気がする。私を守りたい、そのために何が出来るか……で、図書館に行って学ぼうとしたまでは百歩譲って分かるとして、平民の身で魔法や召喚獣の本を読もうと何故思ったのか。

「魔法や召喚獣っていうのを出来るようになれば、ナティ様を守れるだろうと思って、やってみたら出来ました」

 おかしい。明らかに冗談だろう、という事を言っているのだけれど本当の事なのだろう。でも、図書館で学んだからって、やってみたら出来たで出来るようなものではない。それでも出来てしまうのは、それだけの才能をヴァインが持ち合わせているという事なのか。

 ……というか、魔法や召喚獣を学んだのは私のためなんだ。そう思うと心の奥底がざわつく。

「それで王宮で生活しているナティ様を見に行ったり、召喚獣を忍び込ませたりしました」

 ……王宮の警備は万全のはず。どこよりも警備の厚い王宮にさらっと忍び込んで、召喚獣を忍び込ませているなんて、ばれたら処罰される事である。

 ヴァインが私の事を熟知していたのは、私の事を、私が知らない内にずっと見ていたからなのね。

 気持ち悪いと思うべき事なのかもしれないけれど、そういう負の感情は湧いてこない。

「それでナティ様が危険な時は、助けてました」

 私の事を守ってくれていた。私が時折見ていた不思議な生物はヴァインの召喚獣だった。ヴァインは、ずっと……私が知らない所で、私の事をずっと見ていて、私の事をずっと守ってくれていた。

「俺は、ナティ様が好きだから……ナティ様に笑っててほしいと思った。ナティ様に幸せになってほしいと思った。だから、陰ながらナティ様が笑って過ごせるようにしようって、思った」

 私に笑っていてほしい。私に幸せになってほしい。

 そう、ヴァインは言う。ただそれだけの思いで、その力を私のためだけに手に入れて、私のためだけに使っていた。……なんて勿体ない使い方だろうか。でも、私は何故だかそれが嬉しい。

「ずっと、ずっと……陰から動いていて。俺はナティ様が幸せになってほしいって。俺は平民だから、王族のナティ様と一緒にいるの無理だからって。だから……俺は自分が出来る事だけやろうって思ってた」

 ……どうして本当に、ものすごい力を持ち合わせておきながら感覚が普通のままなのかしら。ヴァインって、本当に色々な意味でずれていると思う。

「……それで、私の婚約話が進んで、攫ったのか……」

「……割り切っていたはずなんですけれど、嫌だったんです。ナティ様が誰かと結婚して、誰かの隣で笑ってるのが」

 自分が平民だから、私とは付き合えない。そんな風に割り切っていたヴァイン。でも、私の婚約話が出たら、嫌だったと悲痛そうな顔で言う。

 私はそんな言葉を向けられて、心臓が爆発しそうなぐらい、ドキドキしている。

「それで……気づいたら、ナティ様の事を攫っちゃってて」

 私の誘拐、そんな衝動的な感情で決行されたの? と驚いてしまう。普通なら王族の誘拐を、そんな衝動的な感情で行えるのはおかしい。でもそれを行えるだけの力がヴァインにはあった。

 ……私の事で、余裕がなくなって、衝動的に私を攫った。ヴァインは私の事が、大好きなんだなと思うと、やっぱり心臓が痛い。

「それで、攫って……そのまま放置していたのは?」

「……ナティ様の事、その……衝動的に攫っちゃったけど、その先の事、考えてなくて……。それに俺、ナティ様の前に出るの、何か、緊張して……」

 攫ってしまったけれど、その先の事を一切考えてなかったようだ。深読みしていた自分が恥ずかしい。でもこんな単純な話だと思いもしなかった。

「だから、顔を出しても、近づかなかったの?」

「……うん。だって、緊張するから」

「……ヴァインは、私の事、大好きなのね」

「……うん。ナティ様、大好き」

 恥ずかしがってか、緊張からか、少し砕けた口調になっている。私の事が大好きと言い切って、赤い顔のまま、顔をそらすヴァイン。

 ……可愛い。年上の男の子にこんな表現おかしいのかもしれないけれど、可愛い! と、その気持ちばかりが私の心の内を支配していた。

 心臓が、驚くほどに鼓動している。私の顔も、ヴァインと同じぐらい真っ赤だと思う。

 ――自分からヴァインの気持ちを聞いたのに、恥ずかしすぎて仕方がない。






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